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新人教師のための漢文指導 入門講座 高校2・3年生編 の商品レビュー

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2024/08/17

良書。前作に引き続き、今までよく分かっていなかった漢文読解についての基礎基本がよくわかる。さらに、今回は、長尺の具体的な教材例を出して、授業の進め方を解説してくれているので、授業のイメージが湧きやすく、ものすごく刺激を受ける本だった。 指導書が便利になって、付属のワークシートを配...

良書。前作に引き続き、今までよく分かっていなかった漢文読解についての基礎基本がよくわかる。さらに、今回は、長尺の具体的な教材例を出して、授業の進め方を解説してくれているので、授業のイメージが湧きやすく、ものすごく刺激を受ける本だった。 指導書が便利になって、付属のワークシートを配ってその通りにしておけば授業自体は成り立つ。最近に至っては、定期考査の問題例まで付いてきたりする。そういった中で、注釈書や原文にあたり、資料を集め、教材自体を自分自身の専門性でもって解釈する。そうした専門家としての意識をもった教材研究の大切さを、改めて感じさせてくれる本だった。 とにもかくにも、自分にいかに文学的な専門性が足りていないかを突きつけられるような感じで、背筋が伸びる思いで読んだ。 一つ難点を当てるとしたら、中国古典文学を教えることの意味に関する教育哲学の部分だろうか。漢文教材自体の価値を信じすぎているんじゃないかと感じることが多々あった。 『史記』や『論語』、『長恨歌』といったテクストに対して、「勇気と知謀」「師弟の関係」「愛の巨大な力」といったテーマ性を見出して、教材の価値とすることには、すごく賛成する。なぜ、それを読むのかということについて教師自身が何かしらの意味を持っていることは大切だと思う。自分自身、中国古典が持っているそれぞれの魅力は、同じように感じる。 ただ、そうした大きなテーマをもって「いつかその作品の意味が分かるときがくる」とするのは、価値を説明することから逃げているようにも思う。国語の授業、教育の役割を「種を蒔く」と言えば聞こえはいいかもしれないが、現実の大人を見ていると、蒔かれた種が芽吹いている印象はまったく受けない。だからこそ、多くの大人が、実利を求めるようになり、文学教材は不要と言われるようになったのではないかと思うと、やはり、もっと手に届く距離感の価値や意味を、テクストに見出さなければいけないように思う。 それがいったい何なのかは現状わからないが、少なくとも、それは確かな学問的な専門性に対する真摯さの上に成り立つものでありたいと思う。そういう風に思わせてくれる本だった。

Posted byブクログ