資本とイデオロギー の商品レビュー
「資本とイデオロギー」という題名だが、内容は、格差というものは何か、それが悪化している現在はどんな世界なのか、それを克服出来るのか、を歴史と膨大な統計を使って分析する壮大なもの。 著者の主張ポイント(最も危機感を持つ未来予測)は、バラモン左翼と商業右翼の権力(ブルジョアブロック)...
「資本とイデオロギー」という題名だが、内容は、格差というものは何か、それが悪化している現在はどんな世界なのか、それを克服出来るのか、を歴史と膨大な統計を使って分析する壮大なもの。 著者の主張ポイント(最も危機感を持つ未来予測)は、バラモン左翼と商業右翼の権力(ブルジョアブロック)の思い上がり(高所得者有利の政策・高教育インテリ富裕層の過度な称賛)が、社会の混乱に憤激する大衆の暴走、つまり暴動を伴う移民排斥や自国中心主義の台頭を許すのではないか、というもの。 今日の民主主義の混乱は、市民的、政治的な領域において、経済学が他の社会学から独り歩きしすぎたのが原因。経済学者は、「持ち合わせてもいない技能や分析能力の独占」をたびたび主張したがる930 2013年にフランス社会党政権は同性婚を合法化した。これには実践カトリック(月に一回以上教会に通うカトリック)とイスラム教徒投票者双方が非難した。しかしそれでもイスラム教徒投票者の9割以上は左派政党に投票した。これは、同性婚の問題など些末で、危機的なのは自分たちを国外追放することを堂々と政策に掲げる右派(国民戦線ら)の台頭だから。左派政党は右派のこの政策に真っ向から反対する718 フランスの社会党・共産党は戦前から前後にかけて資産・所得課税による国営事業や福祉などに力を入れた。そして賃金労働者を最も重要な支持者としたため、彼らには様々な控除を用意した(そのため彼らは実質、無増税であった)。しかし低所得の自営業者(農民・商人・職人)には「彼らは所得を過小申告する不正」をするので、控除を認めないか、複雑な確定申告を要請した。これが農民・商人・職人の左派不審になった708 2000年くらいまでは教育水準の低い者が左派に投票して、高い者が右派に投票していた。これが21世紀になると教育水準の低い者は右派に投票し、高い者は左派に投票するようになる。この傾向は年々大きくなっていく。それはイギリス、フランス、アメリカどこも同じ傾向。左派政党は労働者の党から高学歴の人々の党へと変身した。左派を支持する高学歴を「バラモン左翼」と呼ぶ695 ロシア帝国は末期に多くの債権を発行した。ロシアフランス同盟や、ロシアの賄賂の影響で「ロシア債権は安全で堅実」キャンペーンがマスコミで展開された。これにフランスをはじめ欧米諸国の富裕層が反応して大量の債権を買った。しかしロシア革命が起こるとソヴィエト政府は債権の全面的償還拒否をした。米英仏はソヴィエトに兵を送ったが無駄に終わった。420 日本の王政復古による急速な社会ー経済的近代化の実現は、前代未聞376 「アファーマティブアクション」はアメリカで生まれたのではなく、独立後のインドで始まった345 ヨーロッパがインドを「発見」したのは、ポルトガル王国がイスラム教国を挟み撃ちにできる国、はるか遠方にある未知のキリスト教国「プレスタージョンの王国」を探すことから始まった。そこでバスコ・ダ・ガマが探険にのりだし、喜望峰を発見してアフリカ東海岸沿いを訪ねたが、どこにもキリスト教国は無かった。そこで更に船を進めインドに到着して、ケララ州のヒンドゥー寺院を発見し、これを「キリスト教の神殿」と誤解して、リスボンに帰り「ありました!」と報告したから323 インドのカーストでは道徳と規律が重要視される。菜食主義やアルコール禁止など。そのなかで特に性欲・愛欲には厳しい。そのため未亡人の再婚がタブーであり、思春期前の少女の結婚が重要視される313 植民されたアメリカ大陸が20世紀を迎えると、南北で違いが起きた。南(ラテンアメリカ)では人口の大半がネイティブ・奴隷・白人の混血となった。対する北は、人口増加したがほとんど混血が進まなかった253 ハイチは1805年に歴史上初の黒人奴隷反乱と、独立宣言を行った。やがて、1824年独立は承認されるが、その条件に、フランスのハイチ奴隷主に「奴隷を手放した損失補てん」が含まれていた。ハイチ政府はこれを完済するのに130年かかった。218 歴史を決定論的に読むよりも、過去の出来事を思想の十字路や分岐の可能性として見るほうが興味深い122
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