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LDは治癒可能 の商品レビュー

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2023/12/18
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本書は、最近では発達障害と言われたり、学習障害や限局性学習症などと言われたり、ディスレクシアであると言われたり、あるいは自閉症と言われたり、その他記憶が苦手だったり、多動であったり、考えるのが苦手だったり、計画性がなかったり、時間が守れなかったり、整理整頓できなかったり、という経験や自覚のある方や、そういう家族や知人が身の回りにいる方、それらによって生きづらさを感じている方々にとって、朗報を告げる画期的な書であると思う。 上記のような症状が、治癒不可ではなく治癒可能であるとことを科学的にも証明されてきており、過去の現象としての改善事例も検証をすれば、その科学的根拠に符合するということが述べられた書である。 著者自身もこれまで、LDは「治癒不可」という認識のもと、であるならばと最適な対処方法に焦点をあてて研究を重ねて来られたが、昨今の脳科学分野の進展と発見により、これまでの認識(常識)をまったく覆す認識、すなわちLDは「治癒可能」という認識に至り、まったく180℃方向転換し、未来への期待をも込めて、本書を改めて表された。 まず、本書で驚くのは、紹介されているいくつかの実証例である。 まず、教育学修士号をもつ教育者であり、神経心理学者ルリヤと認知心理学者ローゼンツウェイグの理論を「認知訓練プログラム」の基盤として採用し、スクールを創設運営し、同様の悩みを持つ人々の機能改善に尽力されてきたバーバラ・アロースミスさんの体験。 彼女自身が想像を絶する様々な機能不全に悩み、苦しみとともに生きていた。しかし彼女には克服するという強い意志があり、自ら考えた訓練法で自身の様々な機能不全の症状を克服した。その経験を活かして、このスクール創設に至るのであるが、その以前の彼女自身の姿をみれば、おそらく失望に覆われ、将来の改善期待など考える余地さえなかったのではないかと思われる。奇跡的な改善であり、それはヘレンケラーに値するとさえ述べられてれている。 また、ポール・マドールさんはディスレクシアであるとの診断をうけ、学業に落ちこぼれ、ついには退学に追い込まれ、生きる意欲をなくし、就労もできず、社会から孤立した青春時代であったが、アルフレッド・トマティス医師に出会い、サウンド・セラピーにより皮質下に音の刺激を送る療法により、その後ディスレクシアの症状は徐々に解消し、高校の卒業試験に合格し、トマティス・チームの上級メンバーとして活動し、セラピーセンターを運営するまでになった事例が紹介されている。 本書の中では、LDは「障害」ではく「機能不全/不調」であるとはっきり述べられている。もてる能力がうまく発揮できていないだけであるという考え方だ。従って機能が回復する可能性を示している。 その確たる根拠づけを行う科学的発見が、2000年の・エリック・カンデルのノーベル生理学・医学賞にあると著者は訴える。 「学習すると、シナプスの結合が強化され、ニューロンの構造が変わる」「長期記憶が行われると、ニューロンはその形を変えて、シナプス結合の数を多くする」 上記のバーバラさんやポールさんの、奇跡的な機能不全の改善は、脳への刺激によるシナプス結合により機能が改善した実証であり、ドクター・ノーマン・ドイジの表現によれば「LDは、神経可塑性によって治癒可能」ということになる。ドクター・ドイジの「神経可塑性」の定義は「自己の活動や心理的経験に応じて、脳が自らの構造や機能を変える性質のこと」である。 まさに、本書のタイトルがこのことを示している。 ドクター・ドイジはさらに、こうも述べている。 「光、音、電気、振動、動作、思考等は、全て神経刺激として、神経可塑性につながる(利用できる)」 バーバラ・アロースミスさんがスクールで展開する「外部からの刺激で”神経可塑性”を目指す方法」も、アルフレッド・トマティス医師による「皮質下に音の刺激を送ることにより機能改善を図るサウンド・セラピー」もこれらの実践的療法であると考えられる。 今後、本書に示された可能性に基づき、この神経可塑性につながる手法はますます研究・開発が進んでいくことであろう。 著者は、これらの症状は微小なものから大きく生きづらさをもたらすものまで、グラデーションのように存在するといい、従ってここに述べられていることは、あらゆる人に適用できるものであると理解した。 刺激の活用により、あらゆる人は自己の苦手を克服していける可能性を秘めている。また、これまで諦めていたことは諦める必要はないこととなる。希望あふれる書であると言える。 著者は、将来すべての人は苦手を克服できるのであり、LDという言葉は不要となるのではないかとさえ述べている。

Posted byブクログ