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近代アジアの文学と翻訳 の商品レビュー

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2023/09/22

西欧の文学の翻訳作業が翻訳者、または近代アジアの思想、人格形成などにどのような影響を与えたのかを考察した論文をまとめた論文集。 翻訳することについての苦労話なども。 例えば翻訳するにあたって、広く普及しているその言葉をそのまま使用すると、本来の意味とは逆の意味になってしまうた...

西欧の文学の翻訳作業が翻訳者、または近代アジアの思想、人格形成などにどのような影響を与えたのかを考察した論文をまとめた論文集。 翻訳することについての苦労話なども。 例えば翻訳するにあたって、広く普及しているその言葉をそのまま使用すると、本来の意味とは逆の意味になってしまうため、正しく通じるように新しい言葉を定義してみても結局定着しなかったなど。 翻訳とは関係ない部分なのだが、私が気になったことは、”第2部、民国期の児童雑誌におけるお伽話の翻訳”。中国の児童文学を扱った「児童世界」という本の翻訳についての論文。鄭振鐸(ていしんたく)という作家が、神話や伝説を児童の読み物として取り上げることの合理性について述べた部分で、 > 従来の児童教育は詰め込み式の教育である。死んだ知識と教訓をその頭に注入して、それで満足した。今は誰でもその違いに気づいているし、児童の趣味を啓発する努力もしているが、小学校での教育は児童の趣味にとってなお不十分である、これは受動的な教育であり、自発的なものではない。単調な教科書だけが子供たちの読み物として提供され、児童が自発的に読める書物がほとんどない。 > と述べていること。 氏が活躍していた時期は1900年代初期から中期の頃である。 ここを見て私は日本はこの時期から成長していないのかと思った。もちろん全ての教育機関がそう出ないことは理解しているが、しかし今でも圧倒的多数の教育機関が未だに受動的な教育を続けているだろう。ましてや今は幼稚園保育園、初等にしてもなにかと横並びさせようとするし、教師側にいたっては模範解答以外は認めないなどという輩まで出現してきている始末。むしろ退化しているといってもよいのでは?また、子供たちが自発的に本を読むどころか調べものをすることなど今の世の中あるのだろうか?良くてyoutubeやSNSでお気に入り動画を探すことくらい? 昔の、例えば「月が綺麗ですね」のような、翻訳の粋みたいなものを知ることができるかなと期待して読んでみてアテが外れたのだが、近代アジアにおける翻訳の必要性について知ることができてよかった。

Posted byブクログ