暗闇の後で の商品レビュー
太平洋戦争において、いまなお事実解明が進んでいないと言われるテーマを題材にした読み応えのある小説。 主人公・茨木医師は架空の人物だそうだが、731部隊の研究に深くかかわる中で人生を大きく狂わせていく。不勉強ゆえにこの小説で言及される禍々しい計画について、これが事実なのかフィクシ...
太平洋戦争において、いまなお事実解明が進んでいないと言われるテーマを題材にした読み応えのある小説。 主人公・茨木医師は架空の人物だそうだが、731部隊の研究に深くかかわる中で人生を大きく狂わせていく。不勉強ゆえにこの小説で言及される禍々しい計画について、これが事実なのかフィクションなのかを知らないのだが、今現在においてどこまでの事実が判明しているのか、否が応でも真実を知りたくなる。 ”太平洋戦争におけるオセアニア戦線”に関しても描かれる。オーストラリア西部の収容所に、ドイツやイタリア人とともに収容された日本人の、塀の中の狭い世界。人種を跨いだ、人間感情の表面化した捕囚の世界は、読みごたえがある。 ただし、ここにも感じるのは(まったく不勉強なのだが)オーストラリア西部の日本人捕虜社会というものが存在したのだ、という、未知のもに向き合う感情。少なくとも私は初めて、これらを取り扱う小説を読んだ。 こうした事実を知る意味で価値がある小説でもあり、小説としての深みも十分。
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