人間嫌いが笑うとき の商品レビュー
精神医学会では有名であるらしい、著者のアーロム教授。初めて知りました。 偶然、新刊情報を目にし、その題名に惹かれ手に取りました。どんな内容かもよくわからないまま読み始めましたが、徐々に引き込まれていきました。グループセラピーの様子が詳しく書かれていて、人がどうやって変わってい...
精神医学会では有名であるらしい、著者のアーロム教授。初めて知りました。 偶然、新刊情報を目にし、その題名に惹かれ手に取りました。どんな内容かもよくわからないまま読み始めましたが、徐々に引き込まれていきました。グループセラピーの様子が詳しく書かれていて、人がどうやって変わっていくのか知りたくて、夢中になって読みました。 自分の本当の心の内を話すのは、汚い部分も露見してしまい、とても勇気がいるけれど、グループセラピーというのは、そういう場であるという皆んなの一致した認識と、それぞれの人が自分の問題に立ち向かう姿勢に勇気づけられ、グループのメンバーが徐々に自分をさらけ出していく。 覆っている皮が一枚ずつ剥がされていって、その一枚一枚に自分の考え癖のようなものがあり、剥がれたあと残ったものを、自身も、周りも直視し、それが自分のありたい姿であるか、どう違うか、どう変えたいか考える。 グループであるから、対一人と比べ、言いにくいことも、発しやすく、言われにくいことも受け止めやすい。多角的に問題を見られるうえに、逃げ場もあり、非難もされるが擁護もされる。 日本人は意見をなかなか言わないし、言われ慣れていない。そういう性質が個人的にはとても嫌で、心地が良いだけの当たり障りのない会話ばかりして何になるんだろう?とよく周りを見ていて思う。でも、そうしていないと総スカンを食らってしまう。 日ごろからそう感じている私にとっては、この小説(ノンフィクション?訳者あとがきににそう書いてある)の中の、グループセラピーは、ある種理想的な場だった。グループの中で発言することにより、日ごろからそのような態度をとっていると思われることが自然と発現し、普段の自分の言動を省みることができる。自分の言動に問題があっても、実際の日常の場でそれをすると、人間関係に亀裂が入りがちだが、このグループ内では、問題を指摘してもらい、それを言われた人、または聞いていた人がどんな気持ちだったか、折を見てフィードバックしてもらえ、それはただ責められているのではなく、しっかり認識させてもらえ、軌道修正することができる。そんな場があったら、私ももう少し、怖がらずに人と関わることができるのかもしれないと思った。 この話の中では、最初はセラピストのアーロム先生の病気宣告から始まり、だんだんと過去の患者のフィリップに問題が移っていく。フィリップは長年アーロム先生から性的な問題に対してカウンセリングを受けていたが、そのカウンセリングでは治すことができなかった。その後、自らもがき苦しみ、ショーペンハウアーに出会い、性的な問題はそれで克服することができた。しかし、今度は自分を哲学的思想で武装し、周りと関わりを断つことで、自分だけに都合の良い理想の世界を築き上げていく。そのフィリップが、人との関わりをこのグループセラピーで持ち、人間らしさを帯びるようになる成長の過程を書いている。 内容はとても興味深く面白かったが、だからといって、これを読んで実際に自分を変えられるかと考えると、難しいかもしれない。こういったグループカウンセリングの存在を知って、受けてみたいけれど、(中心部はもしかしたらあるのかもしれないが)地方にはおそらくなく、なかなか現実的にはグループカウンセリングを受けてみるのも難しいようだ。それに、グループを構成する人やセラピストの質もかなり関わってくるだろう。 通して読むだけでも、面白く満足だったが、一回読んだだけでは多くの大切なことを読み落としている気がする。繰り返し読むことで、もう少し何かが分かりそうだ。 欲を言えば、毎回のカウンセリングを終えた後に、グループの人が、それぞれどんなことを思い、どういう気持ちの変化があったのかなどをもう少し詳しく知りたかった。それがあると、もう少し自分が変われるきっかけになったのではと思う。 気になったところを少し… ○人気は、何が真実で何が良いかを定義するものではありません。それは知的レベルを低下させる概念です。自分の価値観や目標を内面に探す方がはるかに良いのです。190 ○あなたは結局、いろんな哲学者の著作から、自分の立場を支持するものを選んでるだけでしょ? 494
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