プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括 の商品レビュー
興行収入100億円超えの「シン・エヴァンゲリオン」を、作品ではなく株式会社カラーのいちプロジェクトとして総括した、発表資料のようなつくりになっている。エヴァは年代的にも触れる機会がなく、テレビシリーズからひとつも観たことがなかったのだが、気になってシンエヴァを劇場で観たところ、あ...
興行収入100億円超えの「シン・エヴァンゲリオン」を、作品ではなく株式会社カラーのいちプロジェクトとして総括した、発表資料のようなつくりになっている。エヴァは年代的にも触れる機会がなく、テレビシリーズからひとつも観たことがなかったのだが、気になってシンエヴァを劇場で観たところ、あまりに面白く、その内面を見たいと読んでみた。なんとも斬新な手法によるアニメーション映画の製作と、綿密なマーケティング、庵野監督・プロデューサーの強い意志が相まって、あのような作品が世に出たかと思うと、中にいた人々は大変だったろうけど、なんとも羨ましいことだなと思うほかなかった。
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借りたもの。 『シン・エヴァンゲリオン』制作、公開に至るまでのヒト・モノ・カネについて言及されたビジネス本。 全てを網羅している訳ではない。絵コンテやCGなどのクリエイティブの内容に関しては省かれ、ヴィジュアル面という表舞台?に現れないものについて、その結果をまとめている。 『エ...
借りたもの。 『シン・エヴァンゲリオン』制作、公開に至るまでのヒト・モノ・カネについて言及されたビジネス本。 全てを網羅している訳ではない。絵コンテやCGなどのクリエイティブの内容に関しては省かれ、ヴィジュアル面という表舞台?に現れないものについて、その結果をまとめている。 『エヴァンゲリオン』という作品の制作に留まらず、ファンといかに結びつけるか、そのビジネスモデルの模索を垣間見る。 1997年に完結した(私にとっては、絶望の内に閉じて、不確定な希望と共に、昇華不良で映画館から放り出された)映画を、2006年に“新シリーズとして完結を目指す”。それがこのプロジェクトの目標。それは(ある意味未完の完の)エヴァ(≒庵野監督)の自己浄化を会社で行う、という凄いプロジェクトの様に思った。 劇場作品の興収だけでなく、会社の制作体制、制作人数、製作費にどの位かかったかといった収支、劇場版エンドロールに出てくる(制作など)会社がどの様に関わっているかといった組織構図まで書いてある! あらゆる項目が興味深かった。 自分の人生では今まで関わった事が無い、アニメ制作の工程やスケジュールなど興味深かった。細かい日程などは無いけれど、納期…と考えると私は胃が痛くなりそう… 宣伝効果の測定を、観客動員数や物販販売状況の推移、そしてSNSの反応で計っていたとの事。 映画公開時、気になった新型コロナウィルスの影響についても言及。 やはり度重なる公開延期や外出自粛、海外でのロックダウンの影響によって〟ファン同士のリアルでの交流”が不可能になったことは残念でならない、と…… リアルタイムでの共感と共有、鮮度のようなものだろうか?1ファンとしても同感。 庵野監督自身のプロジェクト総括の問答集も。 その中で『キューティーハニー』での経験で、「実写の現場は予算、スケジュール、現場のリソースを考慮した撮り方をしないとひどい目に遭う(p.245)」という苦い経験を語っていたが……(シン・仮面ライダー…)
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#読書記録 2023.9 #プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン -実績・省察・評価・総括- 映画やアニメ作品自体だけでなく、多くの作り手が作品を創造する舞台裏が大好きで、「シン・エヴァ」を一つのプロジェクトとして詳細を記録した本書は、まさに待望の一冊。 最初はビジネス書と...
#読書記録 2023.9 #プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン -実績・省察・評価・総括- 映画やアニメ作品自体だけでなく、多くの作り手が作品を創造する舞台裏が大好きで、「シン・エヴァ」を一つのプロジェクトとして詳細を記録した本書は、まさに待望の一冊。 最初はビジネス書として、プロジェクト・マネジメントの参考になるかも、と思ったけどそうではなかった。ビジネス書が目指す普遍性は一切無く、あくまで「シン・エヴァ」という作品がいかにして生み出されたか、の徹底した記録。 高い技術を持ち互いの信頼で結びついた作り手が、一人のカリスマの元に一丸となる様子は、単なるプロジェクトの記録に過ぎないはずなのに、群像ドラマのようでもあり、「シン・エヴァ」というプロジェクトの中に渦巻く熱量を見せてくる。 あえて自分からは答えを示さず、スタッフの極限の能力を引き出し、膨大なトライアンドエラーから最適解を見出すクリエイターとしての庵野さんの凄み。宮﨑駿監督や新海誠監督の作品づくりとはある意味対極にある。 そしてそれが許容される、製作委員会方式でない自社単独出資を実現して、自身が納得できる体制を確立した庵野さんの経営者としての凄み。 繰り返しになるけど、ビジネス書としての普遍性は全く無い、一つの偉大な作品がいかにして完成したかを、技術的要素以外の部分で詳述する本書は、将来の日本のアニメ・映像作品作りにとって大きな意義を持つ、と思う。 いわゆる職人、クリエイターが多いアニメ業界で、JAXAからアニメ制作会社への転職組という異色のキャリアを持つ筆者だからこそ、この革新的な試みが実現したのだろう。 お陰で、これまでNHKスペシャルやドキュメントでも自分には見えてこなかった庵野さんの作品作りのスタンスが、ようやく理解できた気がした。庵野さん始め関係者の皆さんが心血を注いだ「シン・エヴァ」を、背筋を伸ばしてもう一度観ようと思う。 #読書好きな人と繋がりたい #読了 #庵野秀明 #エヴァンゲリオン #株式会社カラー
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※このレビューにはネタバレを含みます
シン・エヴァ好きな人か、プロマネに何かしら関わっている人は必読! まあ、とりあえず損はしないはず。色んな制作物進行に応用できる気がする。 予算とか費用周りはもちろんとして、オフィスでの机の配置(3つフロアがあって庵野の席は全てにある)とか、電話担当は誰とか、差し入れが誰からでどういう内容だったかとか、ネット速度の見直しとかサーバー容量の改善とか、こんなにようデータ残ってたなと思うくらい、ほんとにプロジェクトの隅から隅まで説明があり、自分のプロジェクトのためになるかは別として…というか規模がでかすぎて純粋には絶対に役立たないんだけど、仕事への心がけとかシステム構築とか、コミュニケーションのやり方とかチームの結びつきの強さと互いの思いやりとか仕事の進め方とか、細部は少しずつ役立てられること請け合い。 それ以外にも、あのシン・エヴァはこう作られていたんだ、とわかるだけでも読んでて面白い。 ただ、時折エヴァQがもう10年前ってことを思いださせてダメージを与えてくる。 チーム全員でとにかく庵野という天才に好きなことをさせてあげよう、そのために一番効率の良いやり方を進めていこうというのが後半のスタッフインタビューなどでもすごくよく分かる。 また昔の庵野だと全部一人でやってしまうが、今は使える人は上手く使うようになっていて、スタッフにアンケートを投げたりもして、自分では思いつかない、自分以外の目線からもアイデアをもらってきて、できるだけシン・エヴァという作品を面白くするかだけを追求していく。 そのために、別に庵野監督だけに情報が集約するのではなく、コンテは主要な制作スタッフ全員に共有されるとか、会議のデータも全部保存されていつでもアクセスできるようになってるとか、プロジェクト説明本というだけではなく、ドキュメンタリーとしても成り立っている。 費用のところも細かい内訳まで全部載っていた。11年制作で1172人関わって制作費32億円… あれ、安くない?まじで全員数えて1172人だから、カラー社員だけで言えばもっと少ないし、その社員ですら全員が11年ずっと働いていたわけではないか。そして興行収入102億円だから儲けが70億円。11年のプロジェクトとしては十分大きい儲けのだろうか。一応借金もしてないし年に何度か社員旅行もしてるようだし、そこらの会社よりよっぽど経営状況は良さそうだが。 ただ、最初だけ読むと無収入で11年過ごしていたように見えたが、実際はこれを成し遂げられるようにまず庵野が行ったのが「プロジェクト遂行に適した環境の構築」。エヴァグッズのライセンス事業を別会社に全部お任せして、グッズを作ってもらって売り、活動資金にする、と。 そのグラウンドワークスという会社の代表の振り返りもあり、グッズ会社経営としても良い知識集。 体制として、庵野監督が全てをチェックする、というかどの工程の人でも直接連絡できるという形になっている。でもSlackだとログが流れすぎるので監督への連絡はメールに限り、監督は24hr以内には絶対に返事するとか。システムがしっかりしてるとすごいなぁ。 というか、監督が全部を見るということそのものも十分頭がおかしいが、それをできる環境の構築がされているというのが更にすごいよなぁ。 まあ、本にはキレイなことしか書いてないが、実際はもっとギスギスしたりぐちゃぐちゃしたりあって、苦労だらけのプロジェクトだったんだろうけど。 そんなこんながありながらも、11年かけてあんな素晴らしいシン・エヴァを作ってくれたことにとにかく感謝。もう既に内容だいぶ忘れてるけど。また見直したいなぁ。 余談だが、9/1に続きを読み進めていたときに挟まっていたチラシが、8/31必着のカラー求人チラシだったので、別に応募する気もな…くもなかったけどなんか勝手にガッカリしてしまった。 でも改めてリンクにアクセスしてみたらまた制作進行のポジションが残っていて、9月末までになってた。まだ…行ける!
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