ふりさけ見れば(下巻) の商品レビュー
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阿倍仲麻呂と吉備真備を主人公にした歴史小説の下巻。 史実に基づいているので、安禄山の乱と恵美押勝の乱が時期的に近いことも勉強になりました。 何より、安禄山の乱についてしっかり経緯が理解できたことが収穫です。 ただ、阿倍仲麻呂が唐に残った理由がイマイチで、その部分がせっかくの歴史ミステリーなのに残念でした。 他の創作部分、特に仲麻呂や真備の唐での家族関係は上手に作られていると思いました。 藤原北家を中心とした貴族文化が安定していた平安時代のもとになる奈良時代は激動なので視点によって正邪が入れ替わったりするから面白いです。
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歴史小説を読めば必ず、時間の流れの違いを感じます。今のように二三日で中国まで往復するのと、10年以上を費やして遣唐使となるのと、どちらが正しいか判断できません。
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阿倍仲麻呂がこんなにも玄宗皇帝の下で重要な位置にあったとは知らなかったので、勉強になるとともに、帰るに帰れなかった事情を思うと同情する。だが日本人で科挙に受かって出世していくその才能と運は凄い! この小説はその上仲麻呂スパイ説を取っていて、日本の記載されている歴史書を探すというミッションとその内容もこの本の魅力だ。非常に壮大でまた細部に詳しく読み応えのある物語だった。
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いやあ、下巻はますます面白かった。「ふりさけみれば」しか知らなかった阿倍仲麻呂に名前しか知らなかった吉備真備。すごいじゃない。楊貴妃の最後はこんなんやったんや、それも知らんかった。あと、奈良の西大寺に行って知った孝謙/称徳天皇、怪僧として知られる道教、近江高島に行って知った恵美押...
いやあ、下巻はますます面白かった。「ふりさけみれば」しか知らなかった阿倍仲麻呂に名前しか知らなかった吉備真備。すごいじゃない。楊貴妃の最後はこんなんやったんや、それも知らんかった。あと、奈良の西大寺に行って知った孝謙/称徳天皇、怪僧として知られる道教、近江高島に行って知った恵美押勝に、名前だけだけど後の桓武天皇も出てきてワクワクした。いや、奈良時代、おもろいやん!
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阿倍仲麻呂という人物について、百人一首ぐらいしか知らなかったが、唐にてここまでの地位に登り詰めたからには、凡人にはおよそ想像のつかない苦難を乗り越えてのことだったと思う。 その意味で、本書のようなストーリーは説得力があり、感情移入することが出来た。奈良時代にも興味が湧いてきた。
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阿倍仲麻呂の人生を縦軸に、日中の歴史を横軸に、スケールの大きな歴史小説となっている。また、阿倍仲麻呂の歴史背景として、唐の玄宗皇帝巡る数々の事件が描かれるのではなく、まさに歴史の当事者・主人公の1人として、描かれている。 何故阿倍仲麻呂は日本に帰らなかったのか?日本の起源にかかる...
阿倍仲麻呂の人生を縦軸に、日中の歴史を横軸に、スケールの大きな歴史小説となっている。また、阿倍仲麻呂の歴史背景として、唐の玄宗皇帝巡る数々の事件が描かれるのではなく、まさに歴史の当事者・主人公の1人として、描かれている。 何故阿倍仲麻呂は日本に帰らなかったのか?日本の起源にかかる謎も提議される。歴史ミステリーとしても、楽しめる。 本作品は、間違いなく、著者の代表作の一つになるだろう。
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「ふりさけ見れば(下)」(安部龍太郎)を読んだ。 うわーい! これは久しぶりに胸熱(死語?)ですわ。 阿倍仲麻呂と吉備真備という二大巨星の波乱の生涯と貫かれた信念の物語。 綺麗にまとめましたね。 安部龍太郎、恐るべし。 お勧めです。
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『ふりさけ見れば』 安部 龍太郎 著 阿倍仲麻呂とその生涯の友である吉備真備を軸に、中国側からは、玄宗皇帝・楊貴妃・安禄山・鑑真・王維・李白、日本側からは、天智~称徳天皇・藤原不比等・藤原仲麻呂と、「VIVANT」並みの豪華キャストで展開。 白村江の戦いで日本が唐・新羅軍に敗れ、日本が唐に冊封のため使者を送ったところ、①律令制度を導入し律令国家とすること、②仏教を国の基本理念とすること、③長安にならった条坊制の都を築くこと、④国史で天皇の由緒正しさを示すこと、を唐から申し渡され、①は大宝律令制定、②は各国に寺の造設、③は藤原京の造営、④は『古事記』の編纂計画、と対応。しかし、④の国史については、『古事記』を提出するも「これは国史ではない」と言い切られ、この「国史」に関係して阿倍仲麻呂は帰京せず唐に残ったとあります(詳細はネタバレになるので省略)。阿倍仲麻呂は表向き唐の優秀な官僚ながら、実は「VIVANT」ばりに内部で暗躍。この辺の史実に詳しくないので「そうなんだ~」と思うばかりです。それにしても、③以外は、戦後日本が某国から受けた指示とよく似ていると思うのは自分だけでしょうか。 歴史に詳しい知人に聞いたら、「そんなことはないよ」と軽くいなされたのですが、「歴史」(国史)が、国家間でもこれほど重要な役割を果たすのかと再認識させられた一冊です。
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激動期の大和朝廷(奈良時代)、中国(唐)を遣唐使阿倍仲麻呂、吉備真備視点で描いた歴史小説の下巻。 本当に血生臭い政争だったんだなと思うくらい、唐に残された阿倍仲麻呂パート、日本に帰った吉備真備パート、どちらも息をつく隙もないほど大変で、その苦労も知らない私もしんどくなりまし...
激動期の大和朝廷(奈良時代)、中国(唐)を遣唐使阿倍仲麻呂、吉備真備視点で描いた歴史小説の下巻。 本当に血生臭い政争だったんだなと思うくらい、唐に残された阿倍仲麻呂パート、日本に帰った吉備真備パート、どちらも息をつく隙もないほど大変で、その苦労も知らない私もしんどくなりました。正直、吉備真備が玄昉を「玄ちゃん」と呼ぶその気さくさに癒やされたくらい、下巻の150ページくらいはしんどかったなぁと。 ただ、唐で阿倍仲麻呂と吉備真備が再会する前後くらいの話がその分面白く、邪馬台国と大和朝廷の関係の部分の書物の下りとか、そういう視点もあるんかぁと思って考えだしたら、夜も眠れなくなるくらい楽しい考察ができました。 本作品は上下巻とも、どこまでが考証によるストーリーなのか、史実に基づいてるのかわかりませんが、私の頭の中で教科書でしか知ることのできなかった事件、政策、登場人物に命が吹き込まれた、そんな気分にさせていただいた作品です。この作品に出会えて感謝しかないなと。 史実でも、阿倍仲麻呂は遣唐使として唐に渡って以降、日本の土地を踏むことはなかった人物ですが、唐で亡くなった時にいただいた官位が凄まじく高位ということから、唐でかなり優秀な役人だったということはわかります。 その出世の過程などは謎だからこそ、こうした歴史小説が成り立つのでしょうけど、こういうことも本当にありうるなと思うほどに、この物語は良くできているなと思いました。 本当にこの辺りの歴史に興味がないと、この人誰?この事件何?にならざるをえないかもしれませんが、好きな人にはたまらんでしょう?と思うくらいです。 そして、その上下巻約900ベージに及んだ本作品の壮大な物語で思ったことは、どんな優秀な人でも、何かに溺れてしまうと愚かになるということ。 実は、阿倍仲麻呂が仕えていた唐の玄宗は、凄い皇帝で治世が安定していたとされる名君と呼んでも良い皇帝でした。楊貴妃に溺れるまでは。 その落ちぶれていく姿、アホやなぁと思って鼻で笑うことは簡単なんですが、私は一歩踏み外せば皆そうなんじゃないかと思いました。 現に才能や能力がある人がギャンブルに、あるいは女性(不倫)でダメになった人いると思いますし、そういうものに溺れるのって本当に何かのきっかけやタイミングだなと思います。 そして、その隙をついて食い物にするずる賢い奴が必ずいる。 これはおそらく、1000年以上前とも変わっていないことなのかな?と思いました。 そんなことを思いながらも、阿倍仲麻呂が唐から無事に帰国していたら、日本という国はどうだったのだろうかと思うほどに阿倍仲麻呂の魅力が詰まった本作品。 満月を「ふりさけみれば」、阿倍仲麻呂が見た満月と同じ満月が私にも見えるかもしれない。そんな想いを抱いた作品です。
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