枯木ワンダーランド の商品レビュー
枯死木がつなぐ虫・菌・動物と森林生態系 https://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1653-2.html
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※このレビューにはネタバレを含みます
蘚苔類、菌類、菌根菌、植物そのものの奥深い面白さ。研究結果を提示こそすれ、曖昧な部分にすぐ結論を出さないで保留様に書いてくれるところが信頼できてありがたい。人間のむしろ先駆者である森には学ぶところがとても多く、これを『資源』としか捉えないのは勿体ないというより失礼な気持ちも、私は持った。とはいえ、一読ではこの「ワンダーランド」の、せいぜい通りをさわったかどうか、というところまでしか辿り着けなかったので、森の物語を書くものとしてはぜひ再読したい。
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小学生の頃からコケが好きだったという著者がキノコ、菌糸菌などに興味を広げ、表に出てこない森の生態系の「枯木ワンダーランド」について話題を展開する。 小学生から時間を経て研究者になっていく著者の興味が広がっていく様が面白い。研究とはこういうものか、とわかった気にもなる。予備知識がな...
小学生の頃からコケが好きだったという著者がキノコ、菌糸菌などに興味を広げ、表に出てこない森の生態系の「枯木ワンダーランド」について話題を展開する。 小学生から時間を経て研究者になっていく著者の興味が広がっていく様が面白い。研究とはこういうものか、とわかった気にもなる。予備知識がないと科学的知見の深みにはハマりきれないけど、そこは読み飛ばしても未知の世界が広がっていることはわかるし楽しめる。
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家の裏山が竹林で数分歩けばカブトムシがあつまるクヌギの木が幾本も見つかる環境で子供時代を過ごした私にとって、枯木はそこらにあるごく当たり前のものだったし、今まで注目したり考えたりすることのない存在だった。だがそこにこれほどまで豊かな世界があるとは。正直驚きの連続であった。 ・枯...
家の裏山が竹林で数分歩けばカブトムシがあつまるクヌギの木が幾本も見つかる環境で子供時代を過ごした私にとって、枯木はそこらにあるごく当たり前のものだったし、今まで注目したり考えたりすることのない存在だった。だがそこにこれほどまで豊かな世界があるとは。正直驚きの連続であった。 ・枯木の腐朽に褐色と白色の二種類があること。 ・菌根菌のネットワークとその境界。 ・ウイルスからリスまで枯木に集う生物の多様性。 ・炭素の貯留役としての森と枯木の問題。 ・生食食物網と腐食食物網。 ・枯木撤去の是非。 ・倒木更新。 ポイントはまだまだあると思うが今思いついただけでもこれだけあった。まさにワンダーランドである。片付けて燃やせばいいというわけではないのだ。この本の中でも課題が幾つも挙げられていた。研究が進みますように。
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枯れ木も山の賑わいではなく、「枯れ木こそ山の賑わい」。 枯れ木が分解されていくなかで育まれる、生き物たちの豊かな営みに感心させられた。 生き物たちの写真も満載。
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知らなかったことばかり。菌根菌のネットワークが森の地面の中に張り巡らされていて物質の移動などをしている。地表に生える木はそのネットワークに繋がっている。そのネットワークは森全体を覆うこともあり、それを一つの生命体とみなすならシロナガスクジラよりも巨大なものになる。 森は枯れ木も含...
知らなかったことばかり。菌根菌のネットワークが森の地面の中に張り巡らされていて物質の移動などをしている。地表に生える木はそのネットワークに繋がっている。そのネットワークは森全体を覆うこともあり、それを一つの生命体とみなすならシロナガスクジラよりも巨大なものになる。 森は枯れ木も含めて炭素を固定する存在。枯れ木は次の世代の森を作る場所になる。 筆者の菌類、森への研究愛が溢れる一冊。
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コケや菌類が大好きで研究者でもある著者が私達が見落としがちな枯れ木の重要性について述べた本。 つまり枯れ木には生態系の維持と炭素貯留という見逃せない価値があるという。 生態系で循環する食物連鎖には植物の炭素の固定から始まり、その生きた植物の葉を生きた昆虫などが食べることにより始...
コケや菌類が大好きで研究者でもある著者が私達が見落としがちな枯れ木の重要性について述べた本。 つまり枯れ木には生態系の維持と炭素貯留という見逃せない価値があるという。 生態系で循環する食物連鎖には植物の炭素の固定から始まり、その生きた植物の葉を生きた昆虫などが食べることにより始まる生食植物網と枯れ木の落葉などの死んだ植物を分解して食べる菌類などの微生物から始まる腐食植物網があるという。 陸上と異なり水中の食物連鎖では腐りづらいからか食べ残しとしての炭素の貯留分は少ない。植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ動物プランクトンは小魚に食べられる。 一方で陸の植物網では植物や樹木が食べ尽くされることなく枯れて腐食植物網に回る割合ははるかに高い。また、木や葉にはリグニンという非常に分解しづらい成分があり、リグニンまで分解する菌類は少数派だそうだ。そしてそのリグニンがあるが故に腐食植物網では生食植物網に比べ食物連鎖間の次工程への移動のペースが遅くなり、食物連鎖に関わる生物の数も多く食物連鎖の工程数も多くなるのだという。 例えば木にも人の皮膚や腸のように常在菌がおり、葉の場合は落葉による水分低下を感じ取ると真っ先に菌糸を伸ばし胞子を作るという。またリグニンを分解するため寄ってくるのも窒素固定バクテリアやらその窒素を利用しようとする菌糸類、コケ類などかかわる生物も多様になるそうだ。 そしてその枯れ木のような存在による生物の多様性の確保こそが炭素の貯留であったり、天然水などの水であったり、作物の収穫や建材としての木や素材としての天然ゴムの提供、果てはおいしい空気などの提供という「生態系サービス」の恩恵を我々が知らず知らずのうちに受けていることにつながるのだという。 私もこれを読んで人類の数も自然の食物連鎖のエコシステムになじむくらいまで制御しないとこれからの気候変動に対応できないのではないかと少し不安を感じてしまった。
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