日本人のためのイスラム原論 新装版 の商品レビュー
本書は同時多発テロ翌年の2002年に上梓され、2023年に新装版として再刊されたものです。 いつもの小室作品の如く、「イスラム原論」と銘打ちながら、直接イスラム教の説明に割かれているのは約400ページのうち三分の一もないかもしれません。 しかしながら、キリスト教や仏教、はたまた...
本書は同時多発テロ翌年の2002年に上梓され、2023年に新装版として再刊されたものです。 いつもの小室作品の如く、「イスラム原論」と銘打ちながら、直接イスラム教の説明に割かれているのは約400ページのうち三分の一もないかもしれません。 しかしながら、キリスト教や仏教、はたまた(規範のない)日本教にも筆が及ぶ中で、それら宗教との対比がイスラム教を理解するための補助線として絶大に効いているのが小室先生の真骨頂! 特に第二章の、ユダヤ教に始まる「一神教の系譜」などは息もつかせぬ面白さでした。 イスラム教に対して欧米や日本では正確な理解がなされていないようですが、本書を読めば世界史におけるイスラム教の立ち位置や他の宗教との関係、またイスラムの論理がよく理解できます。 本書の最後では、「たとえビンラディン氏を捕縛し、アルカイダやその他のイスラム過激派を壊滅させようとも、イスラムとアメリカ、ひいては欧米社会との対立は終息することはないだろう。」と断言されており、果たして本書刊行から20年以上経過した今も状況は? 資本主義登場以前は、世界最先端の文明を誇っていたイスラム社会。イスラム教の本質を知ることは、相互理解の大いなる手助けとなるはずです。
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