ホガースの時代 の商品レビュー
高利貸しだった父の莫大な遺産を引き継ぎ、それを湯水のように散財したあげく、破産宣告され、最終的に発狂して精神病院に送られる愚かな男。 売春婦の女が梅毒にかかり、瀕死の状態になっているそばで、二人のやぶ医者がいんちき薬を売りつけている。「私の薬の方が効く」。 コヴェント・ガーデ...
高利貸しだった父の莫大な遺産を引き継ぎ、それを湯水のように散財したあげく、破産宣告され、最終的に発狂して精神病院に送られる愚かな男。 売春婦の女が梅毒にかかり、瀕死の状態になっているそばで、二人のやぶ医者がいんちき薬を売りつけている。「私の薬の方が効く」。 コヴェント・ガーデン。冬の朝。売春宿からやってきた男女。酒に酔って喧嘩している男たち。卑俗な空間のすぐそばに、セント・ポール大聖堂という聖なる空間がある。 田舎から出てきたばかりの無垢な若い女をたぶらかし、娼婦として働かそうする売春宿の女将。後ろには若い女をいやらしい目で見る男。女将は元娼婦で、その顔には梅毒のアザが残る。 ロンドンの街角。床屋兼外科医の男の店には、瀉血した血を入れる皿が置かれている。二階の窓からつぼに入った小便と大便を道路に捨てている人がいる。 若い愛人が、中年の男の尻をムチで打っている。倒錯プレイ。 貧しい子どもたちが博打に興じている。賭けに負けて、服を奪い取られ、怒りに満ちた鬼の形相の子ども。すでに理性を失っている。 アル中はびこるロンドンの街角。ジン横丁(Gin Lane)。手っ取り早く眠らせるために赤ん坊にジンを飲ませる女。左手にジンのボトルを握りしめながら横たわる骸骨のような男。 ***** ※中流階級の子が通うグラマースクールでは、体罰は日常茶飯事だった。先生の質問にたいして答えを間違えるとムチで打たれる。ジョン・ロックの自由主義的な教育論がきっかけで、18世紀に体罰にたいする考え方が変わった。p.81 ※貴族や地主階級が愛好した狐狩り。狐狩り専用に品種改良された猟犬が、鋭敏な嗅覚で狐を見つけ出し、狐を森から草原に追い出す。逃げる狐をどこまでも追いかけ、狐が精も魂も尽き果てて動けなくなったところを、猟犬が噛み殺す。狐を殺すことだけが目的の「動物いじめ」だった。p.130 ****** ウィリアム・ホガース(1697-1764)。銅版画家。皮肉・冷笑・諷刺・卑俗・卑猥・滑稽を描く。ロンドンの醜い暗部を白日のもとに晒すという点で、チャールズ・ディケンズと似ている。
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