戦争と文化的トラウマ の商品レビュー
PTSD概念は元々は戦争神経症の概念から始まり、米国のベトナム帰還兵の心の問題から一般化し研究が進んだ。現在では戦争や災害だけでなく虐待から生じる複雑性PTSDもICD11では診断に加えられた。わが国では阪神大震災より知られるようになり、災害時に心の問題を考える契機になり、DPA...
PTSD概念は元々は戦争神経症の概念から始まり、米国のベトナム帰還兵の心の問題から一般化し研究が進んだ。現在では戦争や災害だけでなく虐待から生じる複雑性PTSDもICD11では診断に加えられた。わが国では阪神大震災より知られるようになり、災害時に心の問題を考える契機になり、DPATもその流れで出来た。ただ我が国では第二次世界大戦という大きな戦争に対してのトラウマ研究はほとんど見られない、原爆に対してや沖縄線に対しても同様である。戦後80年にして、この問題についてのシンポジウムをまとめたのが本書であるが、第二次世界大戦という大きなトラウマにいかに向かい合うか、なぜ向き合えなかったか、それが私たち後の世代にどのように影響を与えたか、を考察したものである。本書を契機にさらなる研究や議論が進むことを期待したいものであるが、個人的にも集団的にも、このトラウマからの癒しが本当の意味での平和を求める道に進むと感じる。ウクライナ問題からきな臭い話が飛び交っているが、このトラウマからの癒しがないまま、進んでいくと悲惨な結果しか見ないであろう。
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