乱反射 の商品レビュー
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2004年に角川短歌賞を受賞し、2007年に第一歌集『乱反射』でデビュー。 『乱反射』は現代短歌新人賞、駿河梅花賞を受賞。 本書はその『乱反射』の新装版である。 「中間試験」「音楽室」「下じき」「男子更衣室」「渡り廊下」などの言葉に遠いあの頃の匂いと空気が蘇ってくるよう。 それは自分のあの頃と似ているようで似てなくて、けれどもやっぱり懐かしく感じる。 [講堂で賛美歌うたう友達のピアスの穴を後ろから見る] 高校でいちはやくピアス穴を開けた同級生の顔を思い出す。 佐賀出身の◯本さん、元気かな。 友達自身ではふだん直接見られないピアスの穴を裏から見る。賛美歌を歌うという敬虔な行為 との対比がいい。 [下じきをくにゃりくにゃりと鳴らしつつ前世の記憶よみがえる夜] ああ!あの音!と思われる方も多そう。下の句のような連想が働くのも理解できる。 [船という巨大剛鉄とりまいて原生生物夜光虫浮く] 漢字の物々しさが効いている。下の句は昔の怪獣映画のタイトルみたい。 [階段をのぼると見える地平線一つの線で分けられる青] 学校が海の側なのだろうか。屋上に上がると空と海が見える情景。 開放感あふれる爽やかな一首。 [何ひとつ知りすぎたことのないままにわれは二十歳になってしまいぬ] 先日拝聴したNHKラジオ文芸選評で選者をされていた小島さん。 放送の中でこの一首を引いて「30のときも、40近くなった今でもこの短歌に感じることがある」みたいなことを仰っていた。とても分かる気がする。 その文芸選評で私の投稿した短歌がよまれました。 [カフェ・ラテを満腹になるまで飲んでカフェ・ラテ味のゲップになごむ] 結句の[なごむ]がすごくいいと褒めていただき天にも昇る気持ちでした。 歌の内容がちょっぴり恥ずかしいのですが嬉しいです。 小島なおさん、ありがとうございました!
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10代のフレッシュで繊細な心が表れていてドキドキしました。 今風(?)に言うと「エモい」です。 こういう作風、好きです。
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小島なお第一歌集、17歳から20歳までの3年間に詠んだ歌を収録。小島ゆかりさんのご息女。2007年角川書店刊を新装版として刊行。レミオロメンの絶賛応援文が帯文だったらしい。 著者あとがきには「短歌を作りはじめたばかりの頃の、たのしいのに苦しい、はずかしいのに強気で、さみしいけれど親密な十代の時間」という言葉に共感。こんなにみずみずしく大切なあの瞬間を詠むことができる才能にも羨ましさを感じる。 特に夏を詠ったと思われる歌を取り上げて今年の夏をしのぎたい。 なんとなく早足で過ぐ日差し濃く留れる男子更衣室の前 (異性のことを意識してないポーズをとるかのような思春期特有の自意識過剰な感じでしょうか) 黒髪を後ろで一つに束ねたるうなじのごとし今日の三日月 (黒髪をきれいにまとめた様子がありありと浮かぶ 結句の比喩に驚きと美しさ) ベランダに風呂桶置いてめだか飼い知らないうちにいなくなった夏 (飼う前の気分高揚とその後の急激に興味がなくなるという心変わりの十代) この二冊の共通点は雨ですと西日の強い教室で言う (授業の中での場面の切り取り方がまるで映画のワンシーンのよう) もうあまり会わなくなったきみの傘も濡らしてますか今日の夕立 (雨の日に思い出す人は心残りがある関係性でしょうか) 日記には本当のことは書けなくて海の底までわが影落とす (成長すると人には言えない秘密が増えていくような気がする) 去年とは確かに違う夏がきて赤い浴衣で飲むジンジャエール (ちょっとおめかしして背伸びしている感じでもまだ未成年だからビールではない?!) くるぶしに芝生の闇を漂わせ花火のあとの公園歩く (視点がくるぶしから展開が変わる下の句で宴の後の余韻が続く) 小島なおさんのオンライン短歌教室を受講したことがあり、前半の歌集鑑賞の時の講評の表現の豊かさや語彙力に圧倒され、常連の参加者の皆さんの歌詠みレベルの高さにもついていけずフェイドアウトしてしまったのが心残り。
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