中世ヨーロッパ全史(下) の商品レビュー
13世紀チンギスハーンは恐るべき残虐さでユーラシアを制覇した。彼らは降伏したものには寛容であったが、少しでも抵抗すれば容赦なく虐殺した。文化は押し付けず、学び取り入れた。恐怖に裏付けられた寛容、それがモンゴル統治の真髄である。駅伝システムに基づく東西交流の隆盛はモンゴル帝国の重要...
13世紀チンギスハーンは恐るべき残虐さでユーラシアを制覇した。彼らは降伏したものには寛容であったが、少しでも抵抗すれば容赦なく虐殺した。文化は押し付けず、学び取り入れた。恐怖に裏付けられた寛容、それがモンゴル統治の真髄である。駅伝システムに基づく東西交流の隆盛はモンゴル帝国の重要な遺産である。 商業は1000年頃以降、ゆっくりと回復し、貿易網は広がり、ユダヤ商人イタリア商人が活躍。為替手形、保険契約、共同出資、複式簿記が発明された。14世紀には百年戦争の戦費を王室に調達する商人らが活躍した。 仏王フィリップ4世は陰謀によりテンプル騎士団を壊滅し資産を没収した。これは世俗権力が教会権力を組み伏せた中世史上の転換点である。陰謀にはパリ大学のお墨付きが利用された。 第一千年紀は学問がキリスト教に寡占され、古代の叡智は顧みられなくなっていった。知的門戸が異教に開かれるのは12世紀であった。トレドにはアラビア文献を翻訳する学者が集った。ボローニャに法律家集団の組織が出来、12世紀には神聖ローマ皇帝から自治権を与えられ大学が成立する。この時期の大学者としてトマスアクィナスがいる。 オックスフォードでは教皇の権威に意を唱えるウィクリフが出、後の宗教改革に影響する。 13-14世紀はゴシック様式巨大建築物の黄金期である。ゴシックとは古の蛮族ゴートが由来であり、15世紀のイタリア人が冷笑的に名付けた。 1000年以降西洋社会の人口は増え続けたが14世紀に技術が追いつかなくなり、大飢饉とペストに襲われた。大衆は疲弊し農民反乱が頻発、のちの民主革命の先駆けともいえる。 ルネサンスを支えたのは諸侯の途方もない富であるが、その富はアメリカ大陸の侵略から生み出された。征服者たちが新大陸を目指した背景にはオスマントルコの勃興により東方貿易が困難になったことがある。 グーテンベルクの印刷術は贖宥状の大量販売を可能とし、利益は大聖堂建設に充てられた。 カール5世の帝国軍はルター派を巻き込み1527年ローマ劫略をした。戦費が支払われないことから兵士たちが暴走し破壊と強奪が行われた。これにより中世は終わった。
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タイトルの「全史」はちょっと違うかもしれないけど以下の章立ての視点から、中世の始まりとなるローマ帝国の滅亡頃からその終わりとなる宗教改革頃までを描く。長めの上下巻だけどポピュラー歴史書といった感じで短めのセクション区切りで読みやすい。 第1部 帝国―四一〇年頃‐七五〇年 ロ...
タイトルの「全史」はちょっと違うかもしれないけど以下の章立ての視点から、中世の始まりとなるローマ帝国の滅亡頃からその終わりとなる宗教改革頃までを描く。長めの上下巻だけどポピュラー歴史書といった感じで短めのセクション区切りで読みやすい。 第1部 帝国―四一〇年頃‐七五〇年 ローマ帝国 蛮族 ビザンツ帝国 アラブ帝国 第2部 権力―七五〇年頃‐一二一五年 フランク人 修道士たち 騎士たち 十字軍戦士たち 第3部 再生―一二一五年‐一三四七年 モンゴル 商人たち 学者たち 建設者たち 第4部 革命―一三四八年頃‐一五二七年 生き残りたち 刷新者たち 航海者たち 反抗者たち 全体的な視点として暗黒時代と呼ばれたりしてよくわからない野蛮な時代と誤解されることもある中世が実際は現代の社会基盤の成立にも繋がっているということが何度も繰り返される。 歴史の流れはもちろん世界史の授業で習ったものと大きくは変わらないけど、それぞれの要素の有機的なつながりがこの本を読むことでより強く感じられる。あくまでもつながり重視なので個々の歴史的事件や人物には深く踏み込まない。 イタリアルネサンスの時代には既に大航海時代が始まっていたんだなあと改めて気付く。(ダ・ヴィンチが生きている間にコロンブスはアメリカに到達していて、ミケランジェロが最後の審判を描く前にインカ帝国は滅亡していた) 大航海時代はオスマントルコによるコンスタンティノープル陥落から中東を迂回した貿易を探った結果であること。この本の範囲ではないけど宗教改革をきっかけにイエズス会ができてその布教にかける思いが日本では少し前に読んだ天正遣欧少年使節に繋がっていたりもするのだなあと感心。
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第一回十字軍は奇跡的にうまくいくが、その後は不発。 西はムラービト朝などに征服される、その後のレコンキスタはイスラムの知識を取り入れる契機にもなる。また、十字軍が押し戻され東ローマ帝国がイスラムに押されている間西回り航路が求められるようになり、スペイン・ポルトガルの大航海時代につ...
第一回十字軍は奇跡的にうまくいくが、その後は不発。 西はムラービト朝などに征服される、その後のレコンキスタはイスラムの知識を取り入れる契機にもなる。また、十字軍が押し戻され東ローマ帝国がイスラムに押されている間西回り航路が求められるようになり、スペイン・ポルトガルの大航海時代につながり、インド航路開拓、アメリカ大陸発見都銀の流入が行われる。 北ではモンゴルが中央アジア、東ヨーロッパに押し寄せるも、短期間でその覇権は現地化する。 イスラムからの知識、カトリックへの反腐敗活動からの印刷技術の広まりなどの要因により、ルネッサンス及び宗教改革が起こり近代にいたる道が築かれる。
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ゲルマン民族の侵入・西ローマ帝国崩壊から宗教改革まで。イスラム台頭、十字軍、レコンキスタ、モンゴルとか、バラバラに名前は知ってるけど通して読んだことなかったので気になって。 上下2巻のボリュームでも薔薇戦争とか百年戦争とか影薄く相当分厚いなぁ。個別の話に踏み込んで読むまではなかな...
ゲルマン民族の侵入・西ローマ帝国崩壊から宗教改革まで。イスラム台頭、十字軍、レコンキスタ、モンゴルとか、バラバラに名前は知ってるけど通して読んだことなかったので気になって。 上下2巻のボリュームでも薔薇戦争とか百年戦争とか影薄く相当分厚いなぁ。個別の話に踏み込んで読むまではなかなか時間取れないんだよなぁ… 一つだけ、各章末の注で「現在で言えば〜のようなもの」がちょっと多過ぎてウザく感じたり。
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