サイケデリック・マウンテン の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
榎本憲男『サイケデリック・マウンテン』読了。 カルト教団の元信者による殺人事件の洗脳疑惑の捜査の第一部から二部、三部と様相を変えながら大きな物語が展開される。洗脳、宗教、技術革新、疑獄、テロとそれぞれに粗削りながらも虚構に現実を取り込むことで物語に緊迫感が出ている。 NCSC やグリーンコールといったスケールの大きなアイデアはおもしろいのだけれど、大風呂敷広げながらも結局身の回りであったり男女の関係性に収束していく感であったり洗脳周りのロジックが大味で気になるところ。
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感想 正直な所感は一言。疲れた。 1章は脳科学やら心理学やら難解だが、2章は被害者どのようにして這い上がったかみているようで楽しい。 3章も謎解きだが、普通に2章だけでも面白かった。 あらすじ 日本が軍事研究に力を入れるようになり、井タニは兵士の気持ちを強くする精神の研究...
感想 正直な所感は一言。疲れた。 1章は脳科学やら心理学やら難解だが、2章は被害者どのようにして這い上がったかみているようで楽しい。 3章も謎解きだが、普通に2章だけでも面白かった。 あらすじ 日本が軍事研究に力を入れるようになり、井タニは兵士の気持ちを強くする精神の研究をしていた。 同期の警視庁の弓削が、一真行というオカルト教団の捜査をしており、バーで殺人を行った犯人の三宅が一真行によって洗脳されていたのではないかと疑う。 三宅を心理カウンセラーの山咲に託して、心の中のロックを外す依頼をするが、動機について自白しない。そうするうちに一真行の元信者2人が新たに外資系役員を刺殺する事件が起きる。 こちらの二人についても動機がはっきりしない。やがて加害者が口にしたグリーンコールという言葉から、その証券を鷹栖が売っていたことが分かり、被害者に接点が生まれる。 2章は被害者の鷹栖の人生について。家出して詐欺の片棒を担いで17歳まで生き、その後、詐欺を抜け出すために和歌山の一真行に入信。勉学と経済学、英語などを身につける。 グリーンコールとはケナフ竹を原料として遺伝子組み換え技術を使ったものあり、エネルギー効率の良いバイオマスエネルギーだった。鷹栖は日本をエネルギー大国にすべく、アジア開発銀行に入り、投資でお金を集める。 3章は再び警視庁も捜査で犯人探し。ケナフ竹と鷹栖の狙いに気づいた警察の捜査が進展する。真犯人は意外な人物だった。井タニの同僚の弓削が洗脳にかかっていた。井タニは弓削の洗脳を解くべく尽力する。 弓削が狙うのはグリーンコール債を買っていた首相だった。しかし、そこには意外な結末が待っていた。
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殺人事件の犯人はすぐに捕まったけれど、どうもマインドコントロールされているもよう。 じゃあ、実行犯を洗脳した真犯人は誰?という話でした。 エネルギー問題や環境問題、量子物理学に気功他。色々な事柄が出てきて、難しかったです。 あの事件を彷彿とさせるところがありました。
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新興宗教の元信者でマインドコントロールが疑われる容疑者がアジア開発投資銀行の鷹栖祐二を視察した事件を国家総合安全保障委員会(NCSC)の井澗紗理奈と弓削啓史が調査する中で日本の今後を左右する国家的背景が明らかになっていくという長編サスペンス。 マインド・コントロールやその解除法、...
新興宗教の元信者でマインドコントロールが疑われる容疑者がアジア開発投資銀行の鷹栖祐二を視察した事件を国家総合安全保障委員会(NCSC)の井澗紗理奈と弓削啓史が調査する中で日本の今後を左右する国家的背景が明らかになっていくという長編サスペンス。 マインド・コントロールやその解除法、脳科学、仏教など様々な知識が織り込まれ、勉強にもなり、考えさせられる、読み応えのある小説だった。 ミステリーとしてのオチも思いもよらないものだったが、その具体的方法については本当にそんなことができ得るものなのかとちょっと疑問に思った。 ストーリーのカギを握る国家的プロジェクトについて、本書の主要登場人物たちはおしなべて否定的だったが、そんな技術が可能なら、ゾーニングと管理を適切に行えば、個人的にはそんなに悪くないのではないかと感じた。メガソーラーと大差ないのではないかと。 物語の中ほどに本筋のストーリーとは独立して挿入される「鷹栖祐二の生涯」も1人の人間のライフストーリーとしてとても面白く、鷹栖のいう「あるところからないところにちょっと移す」という発想はなかなか示唆に富む考え方だと共感を覚えた。
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もし仮に、次々に事件が起き翻弄されながらも先が気になって仕方ない物語を派手な物語と例えるなら、この物語は地味な物語と言えるかもしれない。しかし、めちゃくちゃ濃密で刺激的であることは間違いない。内容的には社会的なことや脳科学的なことも盛りだくさんで読み応えがある。でも、なぜ地味(個...
もし仮に、次々に事件が起き翻弄されながらも先が気になって仕方ない物語を派手な物語と例えるなら、この物語は地味な物語と言えるかもしれない。しかし、めちゃくちゃ濃密で刺激的であることは間違いない。内容的には社会的なことや脳科学的なことも盛りだくさんで読み応えがある。でも、なぜ地味(個人的にそう例えるなら)に思えるかというと、事件の原因となる出来事は大規模なのだが、そこに至る理由となる思想が形成される過程が重要になるからである。文章を通してひとりの人物の半生を辿る部分がとても興味深く面白い。事件はなぜ起きたのか?誰が起こしたのか?ここに繋がってくる。後半で明らかになる手法に関してはやや飛躍して不自然に感じるところもあったが、そこもこの物語での人物と考えると受け入れられる。それ以上にこの物語にどっぷりとハマりこめた。 青山のバーで金融マンが刺殺される。容疑者はすぐに逮捕され犯行も認める。しかし、ふたりには面識がなく何度聞いても動機がはっきりしない。容疑者は新興宗教「一真行」の元信者であったため、マインドコントロールされていることを疑われる。その解除を手がかりに事件の真相を暴こうとする。 物語はこのように始まるが、ここから思いもよらない事実にたどり着く。科学的と感覚的、論理的と感情的、このような対比が事件や日常だけでなく人物や思考などにも色々と描かれている。読んでいるこちらはその都度どちらにも誘われてどちらにも正当さを感じるような気がしてくる。いや、どちらも正当だから、どう選ぶのかが重要なのだということか。最後の一行は現実にも当てはまることだと思える。
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某協会、某宗教団体が関わった事案が思い起こされます。特に第3章は一気に読みました。結末がどうなるのか引き込まれました。小難しい部分がありますが、知的好奇心が充たされます。読後感は大満足です。お勧めです。映画化されたのを見たいです。
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榎本氏の作品は全て読んでいるが今作は扱うテーマが大き過ぎて私には難しく感じた。とは言え昨今の日本の不安定さがうまく描かれていて、宗教、経済、国民不在の政治など目の付け所の鋭さが冴えていた。
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榎本憲男作品は全作読んでいる。 どの作品もその次代の社会性を孕んだ作品で、モデルとなる人物、事件を別視点や置き換えたりしている。 今作の『サイケデリック・マウンテン』も勿論、ここ数年の事件や社会問題をモチーフとしている(その一つは明かしてしまうとクライマックスのあるシーンのネタバ...
榎本憲男作品は全作読んでいる。 どの作品もその次代の社会性を孕んだ作品で、モデルとなる人物、事件を別視点や置き換えたりしている。 今作の『サイケデリック・マウンテン』も勿論、ここ数年の事件や社会問題をモチーフとしている(その一つは明かしてしまうとクライマックスのあるシーンのネタバレになってしまいかねない)特に統一教会問題を発端とする宗教問題。 オウムの事件や、その後の後継団体などを彷彿させる団体が登場し、ある殺人事件との関係が浮上する。そこから更にマインドコントロールによる殺人教唆までに発展する。 そしてその洗脳の真実が明らかになったときに実際こんなこと可能なのかな、と疑問に思ったのだが、意外と周りに他者からの影響を語る人を見たこともあり、ありえるのかもしれない、と。 榎本憲男作品、どの作品も一定のクオリティは担保されてる信頼出来る作家なのだが、本作はその中でも指折りの一冊。帯に記されている最高傑作の文字は間違いではなかった。
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東アジア一帯の安全保障が日増しに厳しさをましている中、自衛隊が自衛軍と改められ、防衛のみならず経済、エネルギー、食糧、テロ対策など幅広い分野での安全保障強化のため内閣府に設置された国家総合安全保障委員会(NCSC)。 NCSCの兵器開発セクションで脳科学専門の井澗とテロ対策セクシ...
東アジア一帯の安全保障が日増しに厳しさをましている中、自衛隊が自衛軍と改められ、防衛のみならず経済、エネルギー、食糧、テロ対策など幅広い分野での安全保障強化のため内閣府に設置された国家総合安全保障委員会(NCSC)。 NCSCの兵器開発セクションで脳科学専門の井澗とテロ対策セクションの弓削は、新興宗教のマインドコントロールが疑われるある殺人事件を調査し始める。調査が進むにつれて明らかになる事件の背後に隠されたある恐ろしい謀略とは‥‥。 面白い! 500ページ超えの結構なボリュームですが、一気に読み終わりました。 マインドコントロールと洗脳、宗教の功罪、科学への盲信とその政治利用、経済発展か国土保全かさまざまな問題を提起しながら事件の真相解明が進む。 オウムによるサリン散布や元総理殺害など現実の事件を彷彿とさせる展開。そして何より肝となる謀略が、SDGSの名の下にいつのまにか田舎の山林を埋め尽くすソーラーパネルの光景を思い出させて背筋が寒くなる。 「巡査長真行寺弘道」シリーズ同様、社会派でありながら極上のエンタメになっているその絶妙な匙加減がいい。 そして重くなりがちなテーマを和らげているのが井澗と弓削の関係性。中でも弓削のキャラクターが好き。熱血愛国警察官僚だけど、共感力もありすぐに洗脳されそうになるその緩さ。巨悪が滅びないのを目の当たりにして一転、虚無感に襲われる人間味がなんとも魅力的。 惜しかったのは、作品の山場の井澗の熱弁が論理破綻すぎるのと、あまりにくど過ぎてラストに向かっての加速する高揚感を損ねたところかな〜。 それでも最後にシリーズ化も匂わせる展開は期待大。 是非、弓削にはもう一度会いたいし、2人の恋発展するところも見たいな〜。
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サスペンス?ミステリー? いや、これは恋愛小説? うん、恋愛小説だ。 作者の知識量は半端なく、それを駆使して物語は色々な場所へと。そのリアリティもすごい。 まるで映画をみているよう。 これ、必見です。
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