チョプラ警部の思いがけない相続 の商品レビュー
体調不安を理由に警察を早期退官した、謹厳実直堅物を絵に描いたような漢の中の漢〈チョプラ(元)警部〉と、ある日突然やってきた謎の仔象〈ガネーシャ〉とのバディストーリー。 小僧ではなくて‘仔象’なんですよ。 インド最大の都市・ムンバイの闇に蠢く悪を警部と仔象の正義が暴き出し打ち砕く...
体調不安を理由に警察を早期退官した、謹厳実直堅物を絵に描いたような漢の中の漢〈チョプラ(元)警部〉と、ある日突然やってきた謎の仔象〈ガネーシャ〉とのバディストーリー。 小僧ではなくて‘仔象’なんですよ。 インド最大の都市・ムンバイの闇に蠢く悪を警部と仔象の正義が暴き出し打ち砕く!スッキリ爽快なものがたり。 ムンバイの広さは約603平方キロメートル、日本の都市でいえば富良野市や霧島市と同じくらいだが人口は東京都全体よりも多い1,600万人を擁し、ギュウギュウ。ちなみに東京都の面積は2,194平方キロメートル。こうして考えると途方もない密度だな…。 物語の軸としては三つ。 ①人気のない湿地で見つかった青年の死体の謎 ②チョプラ警部の妻〈ポピー〉が抱える不妊の悩みと、こじれた夫婦関係と、ある企みの行方 ③仔象の素性の謎 このうちどうしても一番気になってしまうのは③なのだが、シリーズものであるからなのかこの作品では明確にはならず。一応《最終章》で匂わせ程度には書かれるのでまぁ多分そういう事なんだろうけど、この辺はいずれちゃんと触れられるのだろうか。 ポピーとガネーシャが交流するシーン(p218〜220)が好き。象にヴェポラップ塗って大丈夫なんだろうか。 神秘さと豪快さを兼ね備えた、風変わりな探偵物語のプロローグにあたる一冊。続きが結構あるみたいなので、翻訳されているならばぜひ追いかけたいところ。 1刷 2024.7.14
Posted by
インド系イギリス人がインドを舞台に描いたサスペンス。現代インドが舞台だけれど、ちょっとファンタジーっぽくもある。ストーリーも文章も普通に面白いけど、なによりインド社会の様子が事細かに描かれているのが興味深い。ベイビー・ガネーシャ探偵事務所シリーズは6冊くらい出ているようなので、ま...
インド系イギリス人がインドを舞台に描いたサスペンス。現代インドが舞台だけれど、ちょっとファンタジーっぽくもある。ストーリーも文章も普通に面白いけど、なによりインド社会の様子が事細かに描かれているのが興味深い。ベイビー・ガネーシャ探偵事務所シリーズは6冊くらい出ているようなので、また機会があったら読みたい。 インドではジャングルで左翼武装勢力(ナクサライト)が戦っているらしい。いまだになぜ? 「チョプラはもともと信心深い人間ではない。もうずっと前に、組織化された宗教こそがこの偉大な祖国インドに様々な争いが生じる最大の理由になっているという結論に達したのだ。チョプラは自分のことを熱心な非宗教主義者だと思っている。すべての宗教に同様の敬意を払うと同時に、個人的にはどの宗教にも同様に全く興味がない。」p.32 「都市とは女性のようなものだ。だから、彼女の良いところだけを愛するわけにはいかない。彼女のすべてを愛するか、それとも、全く愛さないか、どちらかしかない。」p.38 「現代のインドでは、ガンディーなどもう時代遅れだと考える人が多いことは、チョプラも知っている。だが、彼はそんな考えには賛成できない。」p.46 「ムンバイでは乞食があまりに多く、生まれつき人間以下の存在だと思われている。乞食に食べ物を買ってやるなどという無謀な振る舞いは、頭のいかれた観光客しかやらないことだ。」p.60 パールシー ゾロアスター教徒 マラバル・ヒル https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42854080V20C19A3000000/ 拝火教徒の「鳥葬」に変化 インド、ハゲワシ減少で ガンジス川は聖者でも水浴をあきらめるレベル https://ngojwg.org/ganga.html シャー・ジャハーンとムムターズ ムガル帝国の第五代皇帝シャー・ジャハーンは、最愛の妃ムムターズの墓所としてタージ・マハルを建造させた。 https://www.y-history.net/appendix/wh0804-019.html 混雑で1日平均12人が死亡、ムンバイの通勤列車 2008年6月27日 https://www.afpbb.com/articles/-/2411105 「チョプラは、父親の静かな、高貴な悲嘆が致死性のあるガスのように小さな家を満たしているのを感じた。」p.122 原理主義者たちは人の言うことに聞く耳を持たない 「義務感というものは、目の色や髪の色のように遺伝で伝わるものではない。それは一人一人の心の中に生まれ、自分の決断によって育っていくものだ。宋、特に人生の最も重要な時にする決断だ。p.283 ガネーシャ 象の頭を持つヒンドゥー教の神 「シヴァ神の妻パールヴァティ―が夫の外出中に産んだ息子で、帰宅したシヴァは自分の息子と気づかず、首を切って殺してしまい、外に出て最初に出会った動物である象の頭を与えて復活させたと伝えられている。ガネーシャは厄除け、財運、学問などをつかさどる神として大変な人気がある。」p.371 https://vaseemkhan.com/ https://filmsaagar.com/
Posted by
少年の水死体が発見されてからインドに蔓延る巨悪を倒そうとする主人公がカッコよかったし、伯父から相続することになった子象のガネーシャが要所要所でいい仕事をしていて「変わってるけど良いコンビだなぁ。」と思った。続編が出るなら読んでみたい。
Posted by
ガネーシャが可愛い! 真面目なインド人なんて知らんな…と思ったけど、 パヴァンを思い出した。元気かな。 全体的に面白かった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
・あらすじ インドの大都市ムンバイが舞台。 心臓疾患のため警察を退職することになったチョプラの退職当日に青年の死体が発見される。 警察では事故死と判断されるがチョプラは死の真相を暴くため独自に捜査を開始する。 そんなチョプラ警部の相棒は叔父さんから贈与された子象のガネーシャ。 不正、賄賂、汚職と貧困が蔓延るインド社会の問題とそんなごちゃまぜで発展途中の都市で騒々しくも逞しく生きる人々、踏みつけられる人々などインド社会が垣間見える作品。 ・感想 インドではショッピングモールに象が侵入しても追い出されない…のか?!とか日本人的にこれ有りなの?と倫理観や捜査方法、生活習慣などなど疑問と驚きが多々あったけど、それもまたインドの魅力! チョプラ警部はインドでは貴重な謹厳実直で正直な人間なんだけど、ムンバイの人をちょいちょいdisってるの笑ったw インドが舞台の作品は何作か読んだし、インド映画やインドの雑踏でチーズとバターの鬼盛り料理をつくる露天紹介YouTubeとかもよく見たりする。 Xでネタにされる「被害者の会」タグとかもw そういう偏った情報しか知らないけど広大な土地、爆発的に増加する人口、追いつかない社会制度、宗教問題、貧富の差、カースト制、言語の問題などなどなど… (西側諸国の価値観が優れてて先進的なので全世界の人々がそれに倣うべきかどうかってのは一考の余地ありだけども)様々な問題と多様な文化がここまで混在している国は今後どうなっていくのかな、と興味が尽きない国だなとおもう。 まぁ私は行くことはないけど…! どんな国にもどんな場所にも其々問題や困難はあり、魅力的な所もあれば嫌いなところもある。 楽園なんて無いんだから、そこで生きてる人々が自分の問題として捉え、他人任せにせず他人のせいにせず、己の事として想像力と論理的思考を持って過ごしていきたい! と小説の感想から少し飛躍した感想も書きつつ。
Posted by
読むボリウッド映画!RRRを皮切りに昨年は10本程度のボリウッド作品を見ましたが、そんな経験を元にこの小説を読むと脳内でボリウッド映画として再生されました。前半の象がアパートにやってきたシーンでダンスが入ってタイトルコールなんかがいいんじゃないかと妄想できました。内容で好きなとこ...
読むボリウッド映画!RRRを皮切りに昨年は10本程度のボリウッド作品を見ましたが、そんな経験を元にこの小説を読むと脳内でボリウッド映画として再生されました。前半の象がアパートにやってきたシーンでダンスが入ってタイトルコールなんかがいいんじゃないかと妄想できました。内容で好きなところは、主人公は早期退職したおじさん(髭が万歳の形をした紳士)で、日常ミステリかと思わせておいてインド全土を巻き込んでいくギャングや政治家の賄賂が絡む社会派に発展していくという壮大なところ。間に挟まる奥さんサイドのストーリーはラブコメで、これも面白い。シリーズもののようなので、次回作以降も日本語で読めるといいなぁ。
Posted by
軽くてすぐ読めるミステリ。ムンバイの混沌とした街の様子もリアルで、賄賂で動く警察官や政治家の悪事を正義感の塊のようなチョプラ元警部の活躍で曝け出すと言うのが爽快。ガネーシャと名付けられた子象も可愛くて楽しかった。
Posted by
続きが読みたい! インド小説は初めてだがムンバイの雑多なカオスが目に浮かぶようだ。チョプラのキャラクターが良くて、先を知りたくなる。
Posted by
象を飼いたいと思ったことがある。 うちのどこで飼う! 庭がむちゃくちゃになる! 餌がすごい量だ! 出すものもすごい量だ! そもそも大きい! 家族の猛反対にあって、実現はしなかったのだが、今回、願いが叶った。 ガネーシャは子象だ。正確に言えば赤ちゃん象だ。 大きくない! 小さ...
象を飼いたいと思ったことがある。 うちのどこで飼う! 庭がむちゃくちゃになる! 餌がすごい量だ! 出すものもすごい量だ! そもそも大きい! 家族の猛反対にあって、実現はしなかったのだが、今回、願いが叶った。 ガネーシャは子象だ。正確に言えば赤ちゃん象だ。 大きくない! 小さい象だ。(二百キロあるが。) 食べない。 よって排泄物も少ない。 いや、それ、具合が悪いんじゃないの? うん、まあ・・・・・・。 そもそも、そういう象を、どうやって手に入れたの? ええと、遺産相続で・・・・・・。 アシュウィン・チョプラは警部だ。 理由あって早期退職するまさにその日、子象を相続した。 そして同じ日に、さる少年の水死体の知らせを受ける。 チョプラ警部は、少年の事件解決に奔走する。 子象とともに! もう警部ではないのに! チョプラ(元)警部は真面目だ。 『彼は高潔な人間であることを誇りとしている。』(51頁) 仕事は実直に誠実に勤め・・・・・・退職したら、何をしていいかわからない。 本を読もうにも、警察関係のマニュアル本は、もう読む必要がないし、大好きなクリケットの試合番組も、なぜか気が散って見ていられない。 そんな彼のもとに現れたのが、子象ガネーシャだ。 食べない、素人目にも弱っている子象に、彼は取り組む。 取り組むのだが、読者の目にはもっと取り組んでくれとも思う。 だって、子象が、ガネーシャが・・・・・・! とハラハラしてしまうのだ。 そこに、キョプラの愛妻ポピーが一役買う。 『「ポピーという人間をわかっていないようね」』(219頁) 元気のないガネーシャをにらみつけ、夫たるチョプラも初めて見るほどの神々しい姿を見せながら。 チョプラはムンバイを愛している。インドを愛している。 『スラム、公害、深刻な貧困、犯罪の多さなど』(37頁)を承知の上でだ。 ムンバイの町のあちこちを駆け巡る間に描かれる、 においさえ立ち登ってきそうなムンバイの様子も見どころだ。 (元)警部と子象ガネーシャの物語は、当然ながら人気らしく、長編4作、中編2作にもなるシリーズとなっている。 それらもぜひ読みたい。 ガネーシャは元気になっていくだろうか? 大きくなっていくだろうか? 町に、建物に、家に、入るだろうか? 食べ物は足りているだろうか? 気がかりがたくさんあるのだが、つづきを楽しみにしている。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
やってることはなかなか物騒だったけど、ガネーシャの雰囲気とまじめなチョプラのキャラクターが上手く緩和しててよかった。 日本でもシリーズ刊行してほしい。
Posted by
- 1