マッカラーズ短篇集 の商品レビュー
短篇集。解説によると「孤独」、「報われない愛」などをテーマとして読めるらしい。また異性愛以外の視点も混じる作品が多いよう。なんとなく解説を事前に流し読みしてから読み始めたので、混乱せず読めた。とはいえ、読後の孤独ややりきれなさ、みたいなものは好み。
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表紙に惹かれて読む。絶対的な意味での一人きりではなく、むしろ相対的に、世界を疎外することで陥っている(もしくは獲得している)孤独というのが全体的なムードとしてある。と書いてみるとまるでトーベ・ヤンソンであるしシャンタル・アケルマンを読み観た時の感慨に似ていることを自らの中にあら...
表紙に惹かれて読む。絶対的な意味での一人きりではなく、むしろ相対的に、世界を疎外することで陥っている(もしくは獲得している)孤独というのが全体的なムードとしてある。と書いてみるとまるでトーベ・ヤンソンであるしシャンタル・アケルマンを読み観た時の感慨に似ていることを自らの中にあらためて見つけるけれど、三者の中ではマッカラーズがもっともストーリーのことを意識しているように思う。それは言い換えれば自らを作品から切り離し、想いはこめつつキャラクターならびに物語世界をあくまでフィクションとして距離をとりつつ書いているということでもある。しかしそれは裏を返せば、作品にすら疎外を適用させているということか。
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「悲しき酒場の唄」が中編で、他に短編が7編。短編は「木、石、雲」と「渡り者」が好き。 全体的に、愛と孤独がテーマなのかな。愛するがゆえに感じる孤独というか、愛と孤独をこじらせたような人がよく登場する。独特な雰囲気があって好きな作家だ。
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元夫婦のふたりが殴り合いで決着をつけるというのが面白過ぎた(表題作)。良い人(報われるべき人)が出てこなくて、ひどいことが淡々と描かれ、それによって得られる教訓もない。できごとが人々の体をただ通り抜けていくという感じ。 一番印象に残ったのは「木、石、雲」。短いけど胸をつかまれる...
元夫婦のふたりが殴り合いで決着をつけるというのが面白過ぎた(表題作)。良い人(報われるべき人)が出てこなくて、ひどいことが淡々と描かれ、それによって得られる教訓もない。できごとが人々の体をただ通り抜けていくという感じ。 一番印象に残ったのは「木、石、雲」。短いけど胸をつかまれる。小さい「大丈夫」のかけらを懸命にかき集める日々。
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初のマッカラーズ作品。 想像以上に良かった。 とくに『悲しき酒場の唄』。 あの終わり方。しびれた。 そのあとの短篇も良かった。
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アメリカ、ジョージア州出身の作家カーソン・マッカラーズの 中短編小説集。 旧・白水uブックス『悲しき酒場の唄』収録作& 新訳4編の全8編。 昔、ある先生がエッセイでいくつかの作品に触れていて、 ずっと興味を持っていたのだが、 絶版ばかりで入手難易度が高かったのを覚えている。 その...
アメリカ、ジョージア州出身の作家カーソン・マッカラーズの 中短編小説集。 旧・白水uブックス『悲しき酒場の唄』収録作& 新訳4編の全8編。 昔、ある先生がエッセイでいくつかの作品に触れていて、 ずっと興味を持っていたのだが、 絶版ばかりで入手難易度が高かったのを覚えている。 その作風紹介では アメリカ南部の風土を反映した独特のけだるさのような事柄が 強調されていた(と記憶する)けれども、 読んでみたら、なるほど当時若かった女性が書いたのだな、 と感じさせる瑞々しさ。 状況の悲惨さや絶望的な環境にばかり焦点が当たっているのかと 思い込んでいたが、 むしろユーモアとペーソスに満ちた、 悲しくて、ちょっぴりおかしな物語群だった。 ■悲しき酒場の唄(The Ballad of the Sad Cafe) 寂れた田舎町の中心にある いびつなあばら家の窓から時折外を見下ろす灰色の眼。 遠目には性別も定かでないその人は、 かつてそこで町唯一の酒場を経営していた アメリア・エヴァンズという女性だった。 彼女の店はどんな風だったのか、また、 何故廃業してしまったのか――。 * 物悲しくもどこかおかしい、 乾いた笑いを引き起こす奇妙な物語。 ■騎手(The Jockey) 負傷によってキャリアをフイにした仲間を想い、 彼への侮辱を許さない騎手ビッツィー・バーロウは、 調教師シルベスターとノミ屋シモンズと 馬主である金満家に食ってかかった――。 ■家庭の事情(A Domestic Dilemma) マーティン・メドウズの妻エミリーは アラバマからニューヨークへ引っ越して以来、 環境に馴染めずアルコール依存に陥っていた。 マーティンは幼い子供たちの世話も疎かにする妻に 怒りを覚えつつ……。 ■木、石、雲(A Tree,a Rock,a Cloud) 雨の降る早朝、新聞配達の少年が 終夜営業の酒場にコーヒーを飲みにやって来た。 常連の他に見慣れぬ客がいて、少年を呼び止め、 唐突に「愛」について語り始めた……。 ■天才少女(Wunderkind) 15歳のフランセスはビルダーバッハ先生に ピアノを習っていた。 将来を有望視され、熱心に練習して来た彼女だったが、 その冬の日は様子がおかしかった……。 ■マダム・ジレンスキーとフィンランド国王 (Madame Zilensky and the King of Finland) ライダー・カレッジは音楽部長ブルック氏の尽力で 作曲家・教育者として名高いマダム・ジレンスキーを 教員に迎えた。 だが、彼女にはどこか風変わりなところがあり……。 ■渡り者(The Sojourner) 原題は〈短期滞在者〉の意。 方々を飛び回っていたジョン・フェリスは 父の葬儀のため故郷へ戻った後、ニューヨークのホテルへ。 偶然、窓の外を元妻エリザベスが通り過ぎたのを見た彼は 連絡先を手帳に控えてあったので電話して、 彼女が現在の夫ビル・ベイリー氏と子供たちと共に暮らす 住居を訪問し、当たり障りのない会話を楽しんだ。 * それぞれの心の傷が、さほど長くない年月によって 早くも癒されている、といったところ。 前夫を食事に招く妻、その不意の客を温かく迎える現在の夫 ――というのは、一般的な日本人の感覚からすると 信じ難い気がするけれども。 ■そういうことなら(Like That) 13歳の生意気盛りの少女の目に映る姉の姿。 五つ年上の姉マリアンは大学生タックと交際しているが、 近頃様子がおかしい。 口数が減り、無邪気にはしゃぐこともなくなり、 落ち込んだ顔をして……。 * 妹(語り手)は姉の変化が何に由来するのか 訊かずとも敏感に察しながら口には出さず、 心の中で悪態をつく。 大人になるのが“そういうこと”なら真っ平ごめんだ――と。 ※もう少し細かい話を後でブログに書きます。 https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/
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「クィア(Queer)な人たち」の短編集、ということに惹かれて手にした一冊。 彼女の作品は、たしかにQueerな人たちが多く登場するが、ちょっと変わっていることと、とても変わっていることも、変わっていないことの差は何だろうか。 みんな誰しもちょっとずつQueerなのではないだろう...
「クィア(Queer)な人たち」の短編集、ということに惹かれて手にした一冊。 彼女の作品は、たしかにQueerな人たちが多く登場するが、ちょっと変わっていることと、とても変わっていることも、変わっていないことの差は何だろうか。 みんな誰しもちょっとずつQueerなのではないだろうか。 そう気付かせるほど、彼女は一般的に言われるQueerなひとたちのことをとても優しく、柔らかく包み込んで描いている。 それでいい、と言ってもらえているような、そんな温かさがある。 優しい気持ちになりたい方は、ぜひ。
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