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フッサール 志向性の哲学 の商品レビュー

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2023/06/29

フッサールの志向性の概念について、ていねいに説明をおこなっている入門書です。 著者は「序章」で、「これまでの入門書よりも手前から、つまり人口に膾炙した様々な概念が導入されるに至る前に、そもそもフッサールが「志向性」というものをどのように考え、その「意味」と「対象」というものをど...

フッサールの志向性の概念について、ていねいに説明をおこなっている入門書です。 著者は「序章」で、「これまでの入門書よりも手前から、つまり人口に膾炙した様々な概念が導入されるに至る前に、そもそもフッサールが「志向性」というものをどのように考え、その「意味」と「対象」というものをどのような枠組みで、どのような議論の筋道で分析していったのかということを明らかにする」と本書のねらいを説明しています。そして、具体例を法具にあげながら、フッサールが考えた「志向性」という概念について、わかりやすく説明がなされています。 とはいえ、本書はいわゆる「入門書の入門書」ではなく、著者自身のフッサール研究の成果も盛り込まれた、意欲的な内容だと感じました。とくに『論理学研究』におけるフッサールの思想についてくわしい検討をおこない、フレーゲとの比較を通して、フッサールの志向性の概念がもつ意味について考察が展開されています。とりわけ、フッサールの「意味」(フレーゲの「意義」に相当する概念)を、「対象の探索手続き」とみなす解釈が提示されており、フレーゲの議論と問題関心を共有しながら、フレーゲとは異なる考えかたを切り開いたフッサールの思想が解き明かされています。 わたくし自身は、現象学がけっして主観的な意識の内部に立ち現われるものの記述をめざす立場ではないということを理解するのにずいぶん時間がかかってしまい、門脇俊介の著作に出会ったことでようやく正しく理解するためのスタート・ラインにつくことができたように感じていたのですが、わたくしがフッサールについて学びはじめたときに本書があれば、まわり道をしないですんだのにと、思わずにはいられません。 「あとがき」を読んで著者がホロリスだということがわかり、どことなく親近感をいだいてしまいました。

Posted byブクログ