ロックの正体 の商品レビュー
タイトルと本のカバーからはワイルドでヴァイオレンスな印象がするが、その印象とは裏腹に、文化としてのロックを文化人類学的に捉えたもの。 アーティストのバイオグラフィーやらアルバム紹介などは一切なく、ロック史をある程度抑えていないといまひとつ楽しめない本ではあるが、自分のような理屈...
タイトルと本のカバーからはワイルドでヴァイオレンスな印象がするが、その印象とは裏腹に、文化としてのロックを文化人類学的に捉えたもの。 アーティストのバイオグラフィーやらアルバム紹介などは一切なく、ロック史をある程度抑えていないといまひとつ楽しめない本ではあるが、自分のような理屈っぽい人間にはなかなか楽しめるものではあった。 熱いロック解説やアーティスト紹介・アルバム紹介などを期待すると大ハズレでしょう。 第1章から第3章くらいまでは、ロックの特性を「衝動性」と「祝祭性」として、それは元々サルからホモ・サピエンスに進化していく過程で得た人類の特性と大きな関連性があることを論じている。 第4章は、ロックのルーツである黒人音楽と白人が出会ったのは、奴隷貿易下の三角貿易のネットワークの平和利用によるものと言及。そこから、60年代〜70年代に起きたロックの進化や隆盛、サブジャンルへの分岐などに沿って、資本主義やら脳科学やら哲学やらがロックを通じて論じられていくという構成。 ロックを学問的に捉えるという部分では今まで論じられなかった角度からの視点は新しい。 素朴な感想としては、こういう論じられ方がされるほどにロックという文化は成熟したのだなぁということ、言い方を変えればすでに時代と並走して進化を続ける文化ではなくなり、終わってしまった文化なのだなぁ、ということでもある。帯の紹介文も「ロックとはなんだったのか?」と過去形ですからね。 60年代黎明期から70年代半ばまでが文化としてのロックのピークであり、その後は商業的には80年代がピークとなるものの、細分化を繰り返しサブジャンル、サブサブジャンルの発生に連れて衰退していった。
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