横浜怪談 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「『まえがき』は仰々しいが、内容はそこまでのモンでもないな」というのが読み始めから最後まで変わらなかった感想。 「怪談は短い方が良い」というのはいろいろなところで言われ、私も同意するところなのだが、本書は短いというよりも薄い。一つの話が2〜3ページでは前振りもなおざりで盛り上がりに欠け、オチが無いことも多い。 怪談なんだからもう少し膨らませられないのかと思ってしまう。これでは料理されていない生の怪談の材料をばら撒いている状態である。素材の味を生かせるのは素材が良いときだけで、多くの場合は料理して味を引きださないと不味い。今のままでは、使い物にならずに放っておいたタネを、横浜という地域でまとめてセール品にして売っている(粗悪品の塊を摑まされたか)という感想になる。 素材の味がしすぎて「これ、怪談じゃなくて科学的に説明がつきそう」と合理的な説明まで思いついてしまうような話が散見されてしまうのも良くない。 期待した実在の地名もリアリティを持たせて恐怖を煽るよりも、特定の地域を毀損する効果しかないので、もっとぼかした方が想像を刺激して良さそう。本書の内容では、近所の人や土地勘のある人は気味悪がるより内容に対する不快の方が勝ちそう。 人が住む場所の地名は、災害が多発する場合だけでなく、土地が悪そう、陰気だ、というだけでも名前を変えてしまう。音は変えずに漢字を明るいものにする事など常套手段である。忌み名がそのまま残るはずがない。「名前を変えようとしたら祟りがあった」くらい話を捻じ曲げないと地名に過去の痕跡がそのまま残っているとするのは不自然。 他にも設定が練られていないことで突っ込みどころが多数あり、話に入り込めないだけでなく「粗悪品の集まり」という感想を強くしてしまう。 例を挙げれば、 明治の終わりに子供だった80代の女性の話は、「いつ聞いた話だよ。“明治生まれの80代”の人が存在できたのは、20年以上前だぞ」となる。 『元々が寺だった土地なら不思議な事が起こるのも頷ける』、・・そんなわけあるか。 狐憑きは明らかに精神病の症状を呈している。これを現代の怪談としては「著者は中世の医学知識しかないのかよ」となってしまう。 実話調の怪談なのは分かるが、それでも手抜き感を強く感じる。 全体で見れば評価は星2か3か悩むところで、 面白い話もあり「5ページくらいの少ない文字数でよくやるなぁ」と印象にも残ったが、一方で、本書よりもっと良質な怪談集はいくつもあり「この著者の怪談はもう読まなくてもいいな」とも思ったので、星2つにした。
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