山本五十六、最期の15日間 の商品レビュー
丁寧な取材を基に臨場感ある内容に仕上げられている。 熱病に苦しむ登場人物たち、衛生兵の奮闘、飯炊き係の心情なども細かく描かれている。 戦闘を指揮するにふさわしい人が暗殺対象となり失ったときの周囲の暗澹たる想いはどれ程のものか。戦争とは自らの命を国家に捧げる以上は一人一人の死につい...
丁寧な取材を基に臨場感ある内容に仕上げられている。 熱病に苦しむ登場人物たち、衛生兵の奮闘、飯炊き係の心情なども細かく描かれている。 戦闘を指揮するにふさわしい人が暗殺対象となり失ったときの周囲の暗澹たる想いはどれ程のものか。戦争とは自らの命を国家に捧げる以上は一人一人の死について、もはや生きている人の記憶のなかにしかない部分も多く、その世代が失われつつある昨今、このような書籍をいかに残すか、私たちは課題に見舞われている。
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連合艦隊司令長官 山本五十六の「最後のとき」の周辺を改めて掘り返し、光を当てたような感があった。 同じ時間、同じ場所で(直接山本と接した訳ではないが)、山本の遭難に至るまでの空気を感じていた人がいた。 そうした方の生の証言が取れるのは、もう今が最後かもしれない。
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数多ある山本五十六に関する本の中でも、おそらく当時同じ地にいた方による回想は貴重であろう。当事者の多くが戦死、あるいは戦後に物故している現代において、現在も生存し、自身の飛行記録をもとにした話を軸にまとめた良書といえる。ただ、長官機にずっと随行していたわけではなく、偶然長官慰問品...
数多ある山本五十六に関する本の中でも、おそらく当時同じ地にいた方による回想は貴重であろう。当事者の多くが戦死、あるいは戦後に物故している現代において、現在も生存し、自身の飛行記録をもとにした話を軸にまとめた良書といえる。ただ、長官機にずっと随行していたわけではなく、偶然長官慰問品の輸送任務についただけであり、さらに機体性能によりかなり後ろに取り残されていたため、長官遭難については直接見ていたわけではない。とはいえ、当時の長官ラバウル進出時の現地、長官戦死後の下士官兵たちの雰囲気が分かるのは重要である。 本書はヒアリングをした方に触発された著者による、山本五十六長官の最後の約2週間を追ったノンフィクション作品である。既存の資料を丁寧に読み、簡潔にまとめて引用している。目新しい内容はほとんどないとはいえ、一事件を綺麗に纏めているので、最後まで一気に読む事が出来た。個人的には良書だったと思う。
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連合艦隊司令長官山本五十六戦死。戦史としてはかなり有名だが実は未だ知られざる歴史があった。撃墜された2機に続きブインに向かった3番機を、貴重な証言から明かした秘史。 良くぞZ世代の筆者と生き残り搭乗員の出会う場を神は与えてくれたものだと思う。山本五十六の乗った1番機、宇垣纏の乗...
連合艦隊司令長官山本五十六戦死。戦史としてはかなり有名だが実は未だ知られざる歴史があった。撃墜された2機に続きブインに向かった3番機を、貴重な証言から明かした秘史。 良くぞZ世代の筆者と生き残り搭乗員の出会う場を神は与えてくれたものだと思う。山本五十六の乗った1番機、宇垣纏の乗った2番機。撃墜された2機とは別行動のもう1機の存在。 貴重な生き残りの搭乗員への取材から山本五十六の最期の2週間をリアルに再現した一冊。
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副題「幻の3番機」にも驚いたが、一番衝撃を受けたのは筆者の年齢だった。1998年と言えば私に言わせればつい最近、失礼な言い方かも知れないが二十代そこそこの若者が書いたという事に驚いた。良くも悪くも戦後教育は太平洋戦争後に駐留したGHQ・アメリカが作った平和主義一辺倒の日本重罪論に...
副題「幻の3番機」にも驚いたが、一番衝撃を受けたのは筆者の年齢だった。1998年と言えば私に言わせればつい最近、失礼な言い方かも知れないが二十代そこそこの若者が書いたという事に驚いた。良くも悪くも戦後教育は太平洋戦争後に駐留したGHQ・アメリカが作った平和主義一辺倒の日本重罪論に徹底したものだ。何処かその後の日本人の記憶から太平洋戦争を消しにかかるが如く、日本史でもほとんど触れられてこない。よって私が原爆や沖縄戦以外の同戦争を知ったのも高校時代に偶々手にした本のおかげで、それまでは日本も昔は大変だったぐらいにしか考えなかった。筆者は大学生の時点で山本五十六の死について調査を始め、ご存命の搭乗員から話を聞いてるではないか。もしかしたら私の時代の教育とは既に変わっているのか、筆者が凄いのか。はたまた変人か。 とにかく嬉しさも多いに込み上げ、歴史はしっかり繋がれていくという安心感を抱く事もできた。 様々な科学技術の進歩や新たな証跡の発見など、これから見つかる新事実もあるだろうと思うが、確実に当時を生き抜いた人々は残念ながら少なくなっていく。新たなオーラルヒストリーを生み出す可能性も低くならざるを得ない。何もしていない自分にもどかしさを感じるが、筆者のような存在は心強い。 本書は連合艦隊司令長官 山本五十六の乗機がアメリカに暗号解読された上で撃墜される海軍甲事件を題材とする。私もこれまで何度か同テーマの本を読んできたが、山本の搭乗する一番機、宇垣参謀の2番機の2機に加え、護衛の零戦6機という認識でいた。陸攻の輸送機(視察先への山本の心遣いの品を運んだ)がいた事は知らなかった。因みに護衛機のその後を描いた「六機の護衛戦闘機(高城肇)」もかなり昔に読んだものの良い内容だったと記憶してる。陸攻 3番機は旧型で遅れをとったせいで前を行く二機の戦闘には巻き込まれなかった。その機の操縦士がご存命であり、筆者が話を聞くところから始まる。 内容は物語風に描かれているが、タイトルの通り山本長官の最後の15日間における、優しさや人間味溢れる描写が中心となる。また戦時の最上級の人間が危険を冒してまで最前線に出向く事で起こる周囲の混乱状況なども見えてくる。ストーリーの本題からはやや逸れるが、陸軍の方面軍今村均中将と第十七軍の百武晴吉中将のやりとりには涙が溢れた。また山本を囲む連合艦隊参謀長宇垣と先任参謀黒島亀人大佐の参謀の地位を巡る関係性の変化など面白い点をしっかり押さえている。本書の筋からするとさほど重要ではないかもしれないが、太平洋戦争全体の流れの中で何故山本が危険を冒してまで前線を視察し兵を直接鼓舞するに至ったのかという面では、宇垣の提案という表面的な記載しか無いので、対峙するアメリカとの状況描写という点がさらにあっても良かったと思う。前述の通り現地での山本中心の視点、周りの現場視点がメインのため、頁の都合も有ろうかとは思うが。 それにしても、最後の15日間をあたかも自分が一緒に過ごしたかのように、シーンが目の前に鮮やかに広がり、結論が解っていながらも幻の3番機若しくは護衛機上から、P-38の猛攻から何とか逃げ切って欲しいという感覚に陥っている自分がいる。解っていながら早く長官をジャングルから助け出して欲しい!そんな気持ちになってしまう。その様な側にいるかの感覚は、筆者が上手いのか自分の感受性が高すぎるのかはさておき、是非若い人に沢山読んでもらいたい。さらに今村均や百武晴吉、宇垣纏、小沢治三郎、草鹿任一とそれぞれ各人を中心とした何冊もの書籍があり、そこまで興味を広げられると、また違った世界観が身につくのではないだろうか。
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