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アディクションと金融資本主義の精神 の商品レビュー

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2023/07/09

多様なジャンルの見識を駆使した経済論である。特に、結語における自信をもった書きぶりがすばらしい。 筆者の議論は同意したくなる部分が多い。だが、資本側によって始められた階級闘争による新自由主義が全面的に悪いものなのかという問題については、もう少し慎重な議論が必要だと思う。 ところで...

多様なジャンルの見識を駆使した経済論である。特に、結語における自信をもった書きぶりがすばらしい。 筆者の議論は同意したくなる部分が多い。だが、資本側によって始められた階級闘争による新自由主義が全面的に悪いものなのかという問題については、もう少し慎重な議論が必要だと思う。 ところでこの本を読むにあたっては、マル経の入門書ないし資本論の最初の部分の知識が必要です。

Posted byブクログ

2023/04/23

なぜ現代社会においてかくもアディクションが蔓延しているのか。 その謎を近代化(交易、貨幣、科学技術)と資本主義の展開とりわけ金融資本主義(貨幣そのものが投機の対象になるシステム)の出現との関連において解き明かす。 アディクションは、選択の自由、操作的介入、短期的報酬の3つの特性を...

なぜ現代社会においてかくもアディクションが蔓延しているのか。 その謎を近代化(交易、貨幣、科学技術)と資本主義の展開とりわけ金融資本主義(貨幣そのものが投機の対象になるシステム)の出現との関連において解き明かす。 アディクションは、選択の自由、操作的介入、短期的報酬の3つの特性を併せ持つものとして定義され、この3つの特性と資本主義の緊密な関係を論じる形で議論が進められる。 内容は極めて説得的である。 この論考が素晴らしいのは、仮説とその検証のプロセスが見事である他に、私見では3つある。 第一に、視野の広さ。医学、生物学から哲学、社会学、人類学、経済学などなど幅広く知見を渉猟して論を立てる。 第二に、根本に立ち返る思考のあり方。アディクションにしても、近代という時代の特性についても、貨幣についても「そもそも」それは何かという定義と発生から考察する。その哲学的な構えが好ましい。 第三に、読みやすさ。根源に帰りながら思考することは難解さを伴いやすい。著者は議論の深さと緻密さを犠牲にせずに平明に語ることにかなりのエネルギーを注いでいる。このことは選択の自由についてヘーゲルを論じる章において特に明白である。ヘーゲルの言わんとすることを読者にわからせるために仮想の事例まであげて懇切丁寧に解説してくれる。 今から今年の読書のベストスリー入りは間違いないと思わせる読書体験だった。

Posted byブクログ