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ワンルームから宇宙をのぞく の商品レビュー

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16件のお客様レビュー

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2023/06/09

『いろいろな説があったようだけれど、自分たちの住む世界が中心であるということに関しては、世界中誰も疑うことがなかったらしい。たぶん、生まれた時ってそうなんだろう。誰もが、自分こそがこの世界の中心であるということを疑わない。きっと、僕もそうだったんだろう。だからこそ、死は途方もなく...

『いろいろな説があったようだけれど、自分たちの住む世界が中心であるということに関しては、世界中誰も疑うことがなかったらしい。たぶん、生まれた時ってそうなんだろう。誰もが、自分こそがこの世界の中心であるということを疑わない。きっと、僕もそうだったんだろう。だからこそ、死は途方もなくおそろしいことだった。僕は世界の中心ではなくて、僕が死んでもそんなことには関係なく世界は回り続ける。こんなにも僕の命はかけがえがなくて、なのに、世界にとってはほとんど何の価値もない』―『ワンルームから宇宙をのぞく』 最近の男性ヴォーカルの歌うJ-Popsの歌詞に出て来るような言葉が、時として冗長なくらいに並ぶ。巷に溢れるブログに吐き出される言葉の洪水とよく似たそれらの言葉は、やはりJ-Pops同様に時々哲学的な響きを帯びる。移動しながら耳から聴き取るそんな歌詞の言葉が立ち上げる思考と感情の混合体にも似た文章。きっと最近のJ-Popsを好んで聴く人々にとって、ある意味アンビバレントな言葉はもやもやとした感情に対する一時的な鎮静作用があるのだろう。だから敢えて言うけれど、このエッセイもそんな風に読み流してしまうことも出来る。そして、≪何もかも不条理な世の中で、それでも僕らは生きてゆく、誰にも気付かれなくても、僕は僕の立ち位置をきっと見つけられる≫ と、そんな風に読み換えてしまえばそれきり。多分きっと、著者の言いたいことの根っこにある感情は、例えばOfficial髭男dism(誰もヒゲを生やしていないけど)とかが歌にしている筈だから、それを聴いて少しばかりデトックスしたような気分に浸ることだって出来る筈。でも著者の久保勇貴は書かずにはいられない。それは、もやもやに対する鎮静剤が欲しいからじゃなくて、もやもやの向こう側にあるもっと大きな問題に視線がつい向いてしまうからなんだろう。その大きな問題とは、社会であり、世間であり、だけどきっとカントが考えたように最終的には「自分」という存在の問題。答えを求める道筋は、だから当然、哲学的になってゆく。 科学エッセイ、と紹介されている本書だけれど、例えばスティーヴン・ホーキング博士の「ホーキング、宇宙を語る」のような一冊ではないし、カール・セーガン博士の「コスモス」のような映像作品が意図した科学的啓蒙を本書が訴えている訳でもない。著者のエッセイはもっと個人的な世界(何しろ著者にはワンルームが世界の中心なのだ)のからくりを、誰に宛てるともなく(それがブログというものでしょう?)書き連ねたもの。共感できる(いいね、を押したくなる)文章もあるけれど、科学エッセイと言われると、ちょっとね。 コンピュータでシミュレーションをするようなプログラムを書いていると、キーボードから送り出された命令通り、時に思った通り、時に思いもよらなかった風に、コンピュータが実行して結果を返してくる。自分もプログラムと随分付き合ってきたけれど、キーボードから打った文字が何かを動かす時に感じる「全能感」のようなものって確かにある。魔法の呪文を唱えたみたいな感覚。MS-DOSの時代からパーソナル・コンピュータを使っているせいか、プロンプトからコマンドを実行する方がマウスをクリックするより好きなのだけれど、それはその「全能感」が味わえるというのも理由なんだろうと自己分析する。けれど、その感覚は「天動説」的な世界観とも容易に繋がる。それをまた人口に膾炙した「承認欲求」って言葉でラベリングしてしまうのは少し乱暴だけれど、発想のコペルニクス的転換が、やっぱりどこかで必要になるのじゃないかな、と年寄りは思う。 でもこういう文章を書きたい気持ちはとてもよく解る。だから福岡伸一先生や山崎直子さんが何故推薦するのかも理屈じゃなく理解できるような気もする。自分も昔そんな文章を書いてたこともあるし、今だってこんな読書感想文を書き散らしているのだし。でも、しつこいけれど、これは科学エッセイというよりは、科学者がどんなことを考えているかをナイーヴに綴ったというエッセイだろうね。ちょっと比較の対象としては大袈裟だけれども、例えば、ファインマン先生の自伝的エッセイ(「ご冗談でしょう、ファインマンさん」)とか、寺田寅彦の随筆(「柿の種」など)とか、みたいな? どちらかと言えば寅彦寄りか。それともそれはやっぱり言い過ぎか。もし自分がポップを作るなら「世間で言うところのオタクな研究者に特に響く、J-Pops的エッセイ」という感じで書くかも知れない。

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2023/05/28

JAXA研究員のエッセイ 軽く読めるが、気取った感じが文字から伝わる。 宇宙での移動の仕方が面白かった

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2023/05/28

宇宙工学を研究している筆者のエッセイ 理系大学院卒業で宇宙工学という見慣れない学問をワンルームの自宅で研究をしている。 心地よい言葉選びでコロナ禍というだけではなく、現代社会や学問/研究に対して世間からの眼差しをどのように受け止めるべきか、筆者の過去の経験なども含めて一意見とし...

宇宙工学を研究している筆者のエッセイ 理系大学院卒業で宇宙工学という見慣れない学問をワンルームの自宅で研究をしている。 心地よい言葉選びでコロナ禍というだけではなく、現代社会や学問/研究に対して世間からの眼差しをどのように受け止めるべきか、筆者の過去の経験なども含めて一意見として視点を得られる作品 また詩的な表現も多く、自分自身を見つめ直すこともできる

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2023/04/30

宇宙工学を研究している人って、エッセイも堅苦しく難しいんでしょ?と思っていました。でも、それは私の偏見であったと思い知らされました。久保さん、Twitterでフォローさせていただいていて、あれだけツイートを読んでいたのに、ごめんなさい。 久保さんの日常や、過去の体験。その中に、宇...

宇宙工学を研究している人って、エッセイも堅苦しく難しいんでしょ?と思っていました。でも、それは私の偏見であったと思い知らされました。久保さん、Twitterでフォローさせていただいていて、あれだけツイートを読んでいたのに、ごめんなさい。 久保さんの日常や、過去の体験。その中に、宇宙工学のお話が織り混ぜられています。正しくは宇宙工学の中に…なのですが、そんな堅苦しさはありません。でも、一章読み終えると、小さく知識を得られたり、心が動かされたりします。 理系の人は…と書くと、また偏見になりますが、文体はエッセイ。こんなにフラットに、こんなにも久保さんのことを書いてもいいの?と思ってしまいます。でも、その中心は、宇宙。 とても不思議な気分で読み終えて、2巡目の旅に出るところです。 JAXAの人って、お堅いんでしょ?そう思っておられるかた。将来宇宙工学をやってみたいなと思うかた。最近の若い研究者って、どんな生態なんだろう?と思われたかた。広くいろんな人に読んでいただきたいなと思います。

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2023/03/30

科学エッセイらしく一般相対性理論やフィボナッチ数列の美しさについて語りながら、「危険オブジョイトイ」みたいな文字に起こすとシュールなギャグを挟み、過去の彼の記憶の扉が開いていく幾分軽やかな前半。 恋愛絡みのエピソードで、「適当な相槌を打っていた」久保君があまりに目に浮かびすぎて...

科学エッセイらしく一般相対性理論やフィボナッチ数列の美しさについて語りながら、「危険オブジョイトイ」みたいな文字に起こすとシュールなギャグを挟み、過去の彼の記憶の扉が開いていく幾分軽やかな前半。 恋愛絡みのエピソードで、「適当な相槌を打っていた」久保君があまりに目に浮かびすぎて面白い。それか多分ビー玉みたいな目を動かさずにフリーズしていたんだと思う。久保君が書く文章や研究のなんというかキャッチーなイメージに対し、普段の久保君はそんな感じで、今思考止まりましたよね、とかもうここまで酔ったら何も覚えてないでしょう、みたいな瞬間がある(そのことも自覚しているようなエピソードも出てくる)。彼のエッセイは回想を発端にすることが多いのも、そんな感じで、ぐるぐると色々考えて「思ったより喋ってない」久保君の思考を解きほぐしているのだろう。僕はよく「何考えてるかわからない」と言われる人だけど、久保君の「わかりそうでわからない」感じがよく、わかる(僕の場合は大体本当に何も考えてないというか、正直言って感情がわかない場面であることが多い)。 後半はさまざまな社会情勢や「ある思考を持つ人々」に対しての「思い」が中心になり、シリアスになってくる。ここには久保君のクソ真面目な部分が出ていて、何かを茶化して気持ちを落ち着けることもせず、安易に答えを出して反論することをせず、「考えたけどわからなかった」というスタンスを受け入れる強さが見える。 コロナ禍でコミュニケーションが限られた若者の生活が、思考というファクターでものすごく充実してるように見えてくるのも、面白かったです。まだまだ書くぞという意欲が見えるのでこれからも楽しみです。 「13歳のハローワーク」、懐かしかった。

Posted byブクログ

2023/03/24

. 宇宙工学研究者が宇宙への偏愛で綴った科学エッセイ集。偏愛=好きで好きでたまらない、そのパワーはリスペクトを感じるものを生み出すので中身をのぞいてみたい #ワンルームから宇宙をのぞく #久保勇貴 23/3/24出版 #読書好きな人と繋がりたい #読書 #本好き #読みたい本...

. 宇宙工学研究者が宇宙への偏愛で綴った科学エッセイ集。偏愛=好きで好きでたまらない、そのパワーはリスペクトを感じるものを生み出すので中身をのぞいてみたい #ワンルームから宇宙をのぞく #久保勇貴 23/3/24出版 #読書好きな人と繋がりたい #読書 #本好き #読みたい本 https://amzn.to/40avW7N

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