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常人仮面(01) の商品レビュー

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傑作の予感

北海道の高齢化した村がある条件をみたすと姿が変わる世界へ変貌する。 主人公と愛する姉、祖父、仲良くもなかったクラスメートや先生、違う世界から来た人間たちも交えたサバイバル人間ドラマがここに開幕。

いちろう

2023/06/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

絵柄、ストーリーのテンポや展開性、キャラクターの個性や、それに則った言動、アクション描写、それらを混ぜ込んだ総合的なバランス。どれもが、私の琴線にガンガン触れてくる。 これほどまでに、ドンピシャだったのは、それこそ、ともつか治臣先生の『令和のダラさん』だな。作品のジャンルは、若干(?)違うにしろ、質の高さは匹敵している。 仮に、この『常人仮面』が、週刊少年サンデーで連載されていたら、その回のクオリティや、他の作品の展開にも左右されるだろうが、それでも、私は、読者アンケートで、ベスト5、少なくとも、「最近面白くなってきた作品」の欄に、この『常人仮面』のナンバーを書いていただろうな。 主人公・克人は、心臓に爆弾を抱えており、激しい運動をすると、すぐに倒れてしまう虚弱体質なイケメン男子高校生。けれど、彼が患っている病は、心臓を蝕んでいるモノより、ある意味、厄介なモノ。そう、克人は「ど」が付くほどのシスコンだったのである。 いや、別に、双子の姉・克己を性的な目で見ている訳じゃない。それなら、まだマシな方で(マシか?)、克己をクズ男から守るためなら自分の命を捨てようとし、同時に、敵の命を殺す事も厭わないタイプのシスコンだ、彼は。 こう書くと、病弱な弟が姉の為に殺人を犯し、その罪を隠し、また、重ね続けるタイプのストーリーか、と勘違いさせてしまいそうだが、この『常人仮面』はどちらかと言えば、ホラーバイオレンスアクション系だ。 突然、謎の場所へ入り込んでしまい、怪人からの襲撃を受けた克人は、克己を守るために、限界を迎えていた肉体を根性と殺意、そして、克己への純粋な愛で屠った。 本来であれば、心臓が限界を迎えかけていた克人は、そのまま死んでいただろうが、この場所の“ルール”によって、人ならざる者に変貌してしまう。自分の手で殺した相手の外見や特殊能力を取り込む、その“ルール”を理解した克人は、美しい克己を狙う者が現れるかもしれない、と警戒する。 取り込むのは、あくまで外見や特殊能力のみで、克人は克人のまま。闘争衝動は激しくなっているが、本質は同じだ。だからこそ、彼は基本的かつ徹底して、克己を守るためだけに行動する。常識は持っているし、友情は大事だ、と思う感性も持っているが、「克己第一」のスタンスは揺るがず、いざと言う時は、他人を見捨てる気満々。 そんな「ど」シスコンの克人が、どこまで、人の心を持った、ある意味、最悪な怪人に到っていくのか、期待が出来る良い作品だ、この『常人仮面』は。 この台詞を引用に選んだのは、好きだな、そういう物の考え方、問題との向き合い方は、と感じたので。 実際、世の中、トラブルや不幸は、いきなり降りかかってくる。 程度や個性にもよるだろうが、精神的に動けなくなる事態もあるだろう。 しかし、悲嘆に暮れていたって、自分の殻に閉じこもっていたって、トラブルは何一つ解決しない、好転しない、改善できない。 であれば、半ば強引にでも、前向きになって、我武者羅に突っ走り出した方が、いくらか、事態はマシになったりするもんだ。 追い詰められた時に、ニッコリと笑えるからこそ、人間は強く、気高く、そして、美しいのである。 ただ、このレベルの状況になっても、こうやって考えられる克人は、見た目以前に、メンタルがモンスター級だわ、と戦慄もする。同時に、そんな危なっかしいバカな弟の心配をせにゃらなん克己にも同情してしまうな。 「・・・どうして、そんな姿になったのに、冷静なの?」 「うーん・・・・・・冷静っていうか、落ち込んだら、境遇に屈したみたいで腹立つし、笑い飛ばした方が前向きだろ?」(by大橋克己、大橋克人)

Posted byブクログ