魔女のパン の商品レビュー
和田誠。 オー・ヘンリーの「魔女のパン」の訳は新潮文庫やほかのを含めていろいろ見てみたが、けっきょくこれがいちばんだらう。これが納得できるオチにつながってゐる。
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オー・ヘンリーの『魔女のパン』は、ほんの数ページの短い話なのに、ぐっと引き込まれる、ほろ苦くてちょっと皮肉なお話です。パン屋を営む中年女性のミス・マーサは、普段パンを買いに来る貧乏そうな男性に気がある様子。しかし、その男性は、焼き立てのパンに興味はなくようで、古いパンしか買いませ...
オー・ヘンリーの『魔女のパン』は、ほんの数ページの短い話なのに、ぐっと引き込まれる、ほろ苦くてちょっと皮肉なお話です。パン屋を営む中年女性のミス・マーサは、普段パンを買いに来る貧乏そうな男性に気がある様子。しかし、その男性は、焼き立てのパンに興味はなくようで、古いパンしか買いません。 ミス・マーサは、焼き立てのパンをあげたいけど、彼のプライドを傷つけたくないためためらう毎日です。そんなある日、ミス・マーサは、自分の善意が思いもよらない形で裏目に出てしまったことに気づくというお話です。 この本のテーマは、独りよがりの善意とその裏切りです。ミス・マーサは、自分の想像で彼の生活や趣味を勝手に決めて、彼に合わせてパンを変えたり、絹のブラウスを着たり、メイクを工夫してみたり・・・とあれこれ試行を凝らします。しかし、彼はミス・マーサの思い込みとはまったく違う人物で、結局のところミス・マーサの行動は彼にとって迷惑なだけだったんですね。ミス・マーサは、自分の善意が彼の人生に良い影響を与えてると思ってるけど、実は彼の人生に口出ししてるだけだったのです。 この本を読んで、私は、自分の善意が相手にどう伝わるかを考えるようになりました。私もミス・マーサみたいに、自分の想像で相手のことを決めつけたり、自分の都合で相手に何かを押し付けたりしてないだろうか・・・と考えてしまいます。この本は、善意の裏切りによる悲劇を描いてますが、それは、結局のところ自分の思い込みによるものなのかもしれません。相手のことをもっと知ろうとしたり、話を聞いたりしたら、違う結果になったかもしれません。この本は、相手の立場に立って物事を考えることの大切さを教えてくれる本です。 総評として、この本は、オー・ヘンリーの代表作の一つで、彼の得意とする皮肉なオチや、人間の心理を鋭くえぐる描写がしっかり描かれています。手軽に読める作品ですが、読んだ後には、ずっと心に残る内容です。
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