ガーンズバック変換 の商品レビュー
8作品のSF短編集。読みやすい作品と読みにくい(なかなか頭に入ってこない)作品の差が大きいように感じた。私の好みの問題なのかもしれないけれど。 個人的に好きな作品は3つ。スマホゲームでシミュレーションされる物理現象を矛盾なく成立させるためにいろいろ考える「開かれた世界から有限宇宙...
8作品のSF短編集。読みやすい作品と読みにくい(なかなか頭に入ってこない)作品の差が大きいように感じた。私の好みの問題なのかもしれないけれど。 個人的に好きな作品は3つ。スマホゲームでシミュレーションされる物理現象を矛盾なく成立させるためにいろいろ考える「開かれた世界から有限宇宙へ」と、手品のトリックをSF的に暴く「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」、なんとも切ないSFミステリの「色のない緑」。特に「色のない緑」では、SF的ガジェットが巧みに使われていて、それがラストの切なさにつながっている。
Posted by
SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。 少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリック...
SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。 少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。 その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。 そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。 また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。
Posted by
陸秋槎『ガーンズバック変換』読了。 華文ミステリの俊英にして百合好きで知られる作者による初のSF短編集。 ほかの百合SFアンソロ収録の色のない緑や華文SFアンソロ収録のハインリヒ・バナールの肖像の完成度の高さは言わずもがなのことだけれども、本書書き下ろしの「物語の歌い手」は作者が...
陸秋槎『ガーンズバック変換』読了。 華文ミステリの俊英にして百合好きで知られる作者による初のSF短編集。 ほかの百合SFアンソロ収録の色のない緑や華文SFアンソロ収録のハインリヒ・バナールの肖像の完成度の高さは言わずもがなのことだけれども、本書書き下ろしの「物語の歌い手」は作者が表題作にしたかったと言うだけあって淡々とした描写の中に陸秋槎らしいエモさが凝縮されている。
Posted by
- 1
- 2