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今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義 の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2023/03/25

講談社新書の100ページ+αで思想がわかる「今を生きる思想」シリーズのマルクス編。 このシリーズは、最初、そんなページ数じゃあ無理だろうと思ったのだけど、これまで読んだフーコーとアーレントはどちらもなかなか秀逸だった。今、資本主義について考えているので、そんな関心からマルクスを...

講談社新書の100ページ+αで思想がわかる「今を生きる思想」シリーズのマルクス編。 このシリーズは、最初、そんなページ数じゃあ無理だろうと思ったのだけど、これまで読んだフーコーとアーレントはどちらもなかなか秀逸だった。今、資本主義について考えているので、そんな関心からマルクスを読んでみる。 本は126ページあって、帯にあるように「一気に読める」わけではない。が、全体像を概観したうえで、マルクスの「資本論」の1巻を読み解き、そしてその現代的な意味を語るという構成で、わかりやすいと同時にかなり刺激的であった。 マルクスのいわゆる史的唯物論的な歴史観は、ツッコミどころ満載で、自分のなかでは批判の対象となる考え方だった。また、労働価値説も古典的な考えで現時点では有用性はないと思っていた。それでも、マルクスは気になる思想家で、ときどき読んでみたくなる。好き嫌いは別として、自分の考えを明確にするためのディベート相手みたいに思っていた。 共産主義の時代も終わり、マルクスもそのイデオロギー的利用から解放され、緻密な文献研究が進んでいるようで、たとえば斎藤幸平さんとか、最近の柄谷行人さんとか、その成果を踏まえた議論をしていて、新しいマルクス像が浮かび上がりつつある。 かれらのマルクス像は、いろいろな可能性に開かれた刺激的な読解なのだが、一方では、やはりマルクスは19世紀の人であって、いくら本当はこんなことを言っていたんだということがわかっても、それは哲学思想の読解としての面白さで、マルクスが本当はこう言っていたというのを使って現代社会を読み解くというのはちょっと強引なんじゃないかという気がしていた。 が、この本を読んで、なんだか初めて、マルクスを現代の社会のなかで読むこと、その意味がわかった気になった。なんだか自分の頭のなかで、渦巻いていた現代の資本主義への疑問が、明確に言語化された感覚がある。 とくに第3章で「包摂」をキー概念として、マルクス死後の20世紀の歴史、そして、新自由主義を経た現代社会の状況を読み解いていくところはとてもスリリングで、まさにその通り!と久しぶりに思った。 そう、「人的資本」がどうだこうだ、と言っているが、結局のところ、それは資本主義が人間をそのもっとも深い精神性まで含めて、全人的に「包摂」しようという動きなのだ。 人が生き生きと働き、ダイバーシティを活かし、クリエイティビティを発揮できるような組織になればいいという願いはわたしも持っている。しかし、結局のところ、それも資本主義のなかに「包摂」されてしまうものなのだ。つまり、「自主性」が自主的に生み出されるものではなく、資本システムが「人間重視」という立て付けのものに仕組みとして、人間を誘導し、強要するものなのだ。 そう、これが最近、ずっとモヤモヤしていたことであった。 で、そこにどう対抗するのか?という問題が残るが、そこはまだわかっていない。(が、アーレントの「人間の条件」はこの文脈のなかで、再読できるはず)

Posted byブクログ

2023/03/22

めちゃくちゃ分かりやすい。本自体薄いのに内容はとても濃い。 簡単すぎないので、斎藤幸平『ゼロからの『資本論』』や白井聡『武器としての「資本論」』のあとくらいに読むと、良い具合に脳みそが鍛えられそう。 ラストの章は、ザ・白井聡。

Posted byブクログ

2023/02/18

感想 なぜ今マルクスか。小難しい経済理論をこねくり回した訳でない。地球規模での厄災を予見し人類に警告を与えた。それが今実現しようとしている。

Posted byブクログ