デザインのひきだし(48) の商品レビュー
書くことにピッタリの紙、モノクロ本文にピッタリの紙、カラー印刷する本文にピッタリの紙、並製本の表紙にピッタリの紙、パッケージにピッタリの紙、活版印刷にピッタリの紙、キラキラさせたい時にピッタリの紙、透かして見せたいときにピッタリの紙、脱プラ・減プラにピッタリの紙、食品用途にピッ...
書くことにピッタリの紙、モノクロ本文にピッタリの紙、カラー印刷する本文にピッタリの紙、並製本の表紙にピッタリの紙、パッケージにピッタリの紙、活版印刷にピッタリの紙、キラキラさせたい時にピッタリの紙、透かして見せたいときにピッタリの紙、脱プラ・減プラにピッタリの紙、食品用途にピッタリの紙…などなど。使用例と紙の写真、その紙の商品名、規格、問屋をまとめ、さらに実物見本、プライススケール、紙厚比較表まで付録についていて2420円という業界の人にとって、ものすごい有難い本だが、業界の人でなくても見ているだけで楽しい。 特集の読み物にもとてもよい話が書かれていた。「値段の付かなかった古本を混抄紙として再生した「本だったノート」が出来るまで」という特集。 古本買取業者のバリューブックスさんが、値段の付かない本を古本の寄付活動などで活用しているが、それ以外の本については再生紙になるよう、古紙リサイクル業者に引渡してきた。でも「誰かが読んだ本を受け取り、次の読み手に繋いでいく」ことを大切にしているので、値段の付かなかった古本をもっと本に近い形で生まれかわらせたいと思っていた。そこでダッグを組んだのが印刷会社の藤原印刷さんと混抄紙の実績のある製紙会社、山陽製紙さん。 バリューブックスさんの用意した300キロの古本と同じくらいの量の古紙パルプを材料として、山陽製紙さんの工場でオリジナル混抄紙「本だった紙」が完成した。 紙が出来て終わりではない。バリューブックスさんが掲げたコンセプト「新しい古本の循環を作っていく」を実現するために、「本だったノート」の商品化を決め、更に藤原印刷さん、デザイナーの大田真紀さんと共に走り出した。はじめの「本だった紙」の製造の時に気づいたこと。それは原料の文庫本に印刷されていた“文字のかけら“が形を残して紙に抄き込まれてしまっていたということ。しかし、これを無くす方向に向かったのではなく、“文字のかけら“を増やした紙を作るという方向になった。そして古本を砕くバルパーの現場で“粗挽き“にするようにし、材料の割合も古本五割、古紙パルプ五割だったのを古本7割にまで増やし、“文字のかけら“が所々入った、新しい「本だった紙」が出来た。それに藤原印刷さんのほうで「廃棄インキ」を用いて印刷し、商品版「本だったノート」が出来た。このノートは書店などで、一般販売されているそうだ。 古本が砕かれて紙になっていく写真を見ると、ヨシタケシンスケさんの「あるかしら書店」にもこれに近いのが描かれていたような気がする。 内緒だけど、本を“捨てる“という行為がどうしても出来ない私は、ブックオフさんなどに古本を買い取ってもらう時、“絶対に売れる見込みの無い本“も箱の中に混ぜている。そして「値段はつかなくていいです。ただこの本の行末についてはお任せします」と心の中でつぶやいて、見送っている。迷惑かもしれないと承知しながら。でも、こうやってとことん、マイナスのことをプラス転換して、新しい本の生きる道を作ってもらえたらいいな。
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