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窓、その他 の商品レビュー

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2024/04/25

端整で、静かな、静かな、歌集。 以前何かで作者、内山晶太さんの歌を読み、そのうつくしさが忘れられず、ついついサイン本を買ってしまった。 そのときの勘はただしく、一首一首に打ちのめさながら、感嘆しながら読み進めた。 読みながら、心の中が夜のみずうみのように、静かに、静かになっていく...

端整で、静かな、静かな、歌集。 以前何かで作者、内山晶太さんの歌を読み、そのうつくしさが忘れられず、ついついサイン本を買ってしまった。 そのときの勘はただしく、一首一首に打ちのめさながら、感嘆しながら読み進めた。 読みながら、心の中が夜のみずうみのように、静かに、静かになっていく。 ときおり、なにかの生き物が湖面に水紋をつくる。 辺りは意外と明るく、月のひかりが照らしている。 そんなイメージを抱きながら、豊かな気持ちで読了した。 [わが胸に残りていたる幼稚園流れいでたるろうそくの香に] ※サインとともにしたためられていた歌。 [通勤電車の窓のはやさに人格の溶けあうながき窓みゆ] [抜け落ちてゆくかなしみの総量をしらず昼間の部屋にふるえつ] [たんぽぽはまぶたの裏に咲きながら座れり列車の中の日溜まり] [春の日にベンチにすわるわがめぐり首のちからで鳩は歩くを] [ブランコを全力でこぐたのしさは漕げばこぐたびはなひらく] [夜はビルの丁寧なひかり尋ねれば窓になりたい窓もあるべし] [蚊に食われたし皮膚もりあがりたるゆうべ蚊の力量にこころしずけし] [涙目の少女ひとりをおおいなる夕映えのなかに取り落としたり] [四階の窓の向こうに老人の気配の綿毛ひかりつつ浮く] 歌集冒頭のほうから好きな歌を引いた。 どの歌も新たな発見と繊細な詩情あり。 この歌集を読んでいると、内田さんは匂いやひかりにとても敏感なんだな、と感じる。特に匂い。 鈍感な自分としては、違う世界を覗けるようで、新鮮。 とりわけ好きな歌集となった。

Posted byブクログ