迷宮遊覧飛行 の商品レビュー
山尾さんのエッセイ集。 復帰後から始まって、好きなものを手繰るようにデビューされた頃の話へとつながっていく。 色々なところへ寄稿されたものもあるので、内容に重複しているものもある。それが、ああこの話はと同じ一冊であるのになんだか以前読んだ著書を読んだような懐かしさを感じてしまう。...
山尾さんのエッセイ集。 復帰後から始まって、好きなものを手繰るようにデビューされた頃の話へとつながっていく。 色々なところへ寄稿されたものもあるので、内容に重複しているものもある。それが、ああこの話はと同じ一冊であるのになんだか以前読んだ著書を読んだような懐かしさを感じてしまう。 好きなものを好きなように書く、正にオタクなのだと思いつつ、読み手がいる事をわかって届きやすいように書かれている。これが小説家なのだと感じた。
Posted by
20代のころから近年までのエッセイや書評、編者として関わった本の解題など、小説以外の文章をまとめた散文集。 山尾先生と本の趣味が合いすぎる。ミルハウザーのモルフェウスのやつ訳してほしいですよね。漫画の話はしてないけど山田章博ぜったい好きだと思う。解題でも自作解説でも、〈批評な...
20代のころから近年までのエッセイや書評、編者として関わった本の解題など、小説以外の文章をまとめた散文集。 山尾先生と本の趣味が合いすぎる。ミルハウザーのモルフェウスのやつ訳してほしいですよね。漫画の話はしてないけど山田章博ぜったい好きだと思う。解題でも自作解説でも、〈批評なんていくらでもできるけど好き嫌いの話だけをしていたい〉という声が聞こえてくるような可愛らしく開き直ったスタンス。 小説以外と言いながら真ん中のあたりにちょっと小洒落た大人の童話みたいな文章がまとめられていて、倉橋由美子と金井美恵子の影響にどっぷり浸かっていたのが如実にわかる。昔の作品でも『作品集成』に収録されているようなものからは二人の影を感じたことがなかったので結構驚いた。"女性"作家であること、女性視点の一人称で書くことへの葛藤が書かれているのも印象に残る。 「美しい犬」などの散歩や旅を綴った文章は昔のも最近のも力が抜けていてよい。「月蝕」の京都夜行を思いだすような、どこかふわふわした街歩きのようすをずっと読んでいたくなる。それからやはり澁澤龍彦のはなし。編集者・礒崎純一を介して繋がる澁澤へのリスペクトはこの本全体を覆っている。本人が存命のころから澁澤を王子と仰いでる人たちのガチ感には敵わない。
Posted by
山尾悠子氏の本や作家との関わりあってきた人生を垣間見るような一冊。 アーサーラッカムの載った表紙から装丁も素敵です。
Posted by
なんと!まさかの!エッセイ集! 今まで幻の作家というか、生きてるか亡くなってるかも謎だったのがいきなり生身の人間として現れた感。 寡作の理由やら今の居住地やら明かしていいの? 鏡花は少ししか読んでないので中盤の鏡花パートは少しつらいっす。 ニール・ゲイマンは読んでみたい。 澁澤氏...
なんと!まさかの!エッセイ集! 今まで幻の作家というか、生きてるか亡くなってるかも謎だったのがいきなり生身の人間として現れた感。 寡作の理由やら今の居住地やら明かしていいの? 鏡花は少ししか読んでないので中盤の鏡花パートは少しつらいっす。 ニール・ゲイマンは読んでみたい。 澁澤氏大好きなのはよくわかった。
Posted by
小説家のエッセイ集。読書に関する内容が多いが、読んだ本の紹介としては分かりにくいところがある。「当方は小説書きであるので、フラットな態度と専門知識が要求される解説は不向き」と書いている通りである(296頁)。 本書は三部構成である。IIとIIIは小説風の文章になる。こちらの方が...
小説家のエッセイ集。読書に関する内容が多いが、読んだ本の紹介としては分かりにくいところがある。「当方は小説書きであるので、フラットな態度と専門知識が要求される解説は不向き」と書いている通りである(296頁)。 本書は三部構成である。IIとIIIは小説風の文章になる。こちらの方が楽しんで読める。流石は小説家である。「夢と卵」では卵達が孵化の夢を見ているとする(336頁以下)。夢から目覚めた後は逃走して暴動や革命を起こしかねない。 故に「われわれは一刻もはやく一個でも多くの卵を未然に食べてしまわなければならない」と言う(338頁)。卵は人間の比喩の面がある。食べられる側に感情移入すると恐ろしい話である。潜在能力が開花する前に食べられてしまう。その前に逃げる側に感情移入したくなる。 著者は歴史に苦手意識を持っている。これは意外であった。ファンタジー世界やSF世界を構築する小説家は歴史が好きそうだからである。歴史の勉強の苦痛を「飽食」と表現する(406頁)。これは面白い。全く勉強をしない勉強嫌いならば「飽食」とは表現しないだろう。真面目に勉強に向き合っている証拠だろう。 また、飽食の時代を食べ物が沢山そろっている豊かで贅沢な時代と勘違いする人々もいる。しかし、そもそもの意味は「飽きるほど食べる」「食べることに飽きる」である。満腹なのに食べることは苦痛である。「胸やけを押さえながら」の苦痛になる。これを飽食と形容するところに小説家のセンスがある。
Posted by
読解自体困難を伴う小説を書く作家の、自註自解。 ゼロから読む快楽(黒い靄のなか手探り)と、 本書を読んで読み深めていく快楽(松明、耳元で囁いてくれる声、以前通った道のり)と、 両方が成立する世界に、なった。 嬉しい限り。 @ 目次 読書遍歴のこと 序文に代えて 〈Ⅰ〉...
読解自体困難を伴う小説を書く作家の、自註自解。 ゼロから読む快楽(黒い靄のなか手探り)と、 本書を読んで読み深めていく快楽(松明、耳元で囁いてくれる声、以前通った道のり)と、 両方が成立する世界に、なった。 嬉しい限り。 @ 目次 読書遍歴のこと 序文に代えて 〈Ⅰ〉 月光・擦過傷・火傷 綺羅の海峡 赤江瀑 教育実習の頃 東京ステーションホテル、鎌倉山ノ内澁澤龍彦邸 ボルヘスをめぐるアンケート 人形国家の起源 笙野頼子『硝子生命論』 歪み真珠の話 『夢の遠近法』自作解説 架空の土地を裸足で旅する快楽 間宮緑『塔の中の女』 美しい犬 デルヴォーの絵の中の物語 私が選ぶ国書刊行会の三冊 仮面の下にあるものは 長野まゆみ『45』 「第四回ジュンク堂書店文芸担当者が選ぶ「この作家を応援します!!」フェアへのご挨拶 『マルセル・シュオッブ全集』 シュオッブ、コレット、その他 マルセル・シュオッブ全集のこと 荒野より 〈新編日本幻想文学集成〉編者の言葉 変貌する観念的世界 あるいは両性具有者の憂鬱 倉橋由美子 同志社大学クラーク記念館に纏わる個人的覚え書き 高柳誠 同志社クラーク記念館の昔 泉鏡花 倉敷・蟲文庫への通い始め マイリンク『ワルプルギスの夜』 世界の果て、世界の終わり C・S・ルイス『ナルニア国物語』 秘密の庭その他 飛ぶ孔雀、その後 鏡花の初期短篇 ブッツァーティ『現代の地獄への旅』 ジェフリー・フォード『言葉人形』 壊れやすく愛おしいもの ニール・ゲイマン『壊れやすいもの』 地誌とゴム紐 時里二郎 『龍蜂集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅠ〉 『銀燭集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅡ〉 『新柳集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅢ〉 『雨談集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅣ〉 個人的な、ひどく個人的な 文學界書店 綺羅の海峡と青の本 赤江瀑 川野芽生『Lilith』 年譜に付け足す幾つかのこと 幻想絵画六点についてのこと 編者の言葉 『須永朝彦小説選』 去年の薔薇 須永朝彦 偏愛の一首 〈Ⅱ〉 虎のイメージ 夢と卵 チキン嬢の家 人形の棲処 二十五時発、塔の頂上行 無重力エレべーター 宇宙食夜会への招待 都市の狼少年あるいはコレクター少女の秘密 懐かしい送電塔の記憶が凶々しい悪夢として甦る 悪夢のコレクション 月の種族の容貌に関する雄羊座的考察 美女・月を迎えるためのセレモニー 幻獣コレクションⅠ 幻獣コレクションⅡ 幻獣コレクションⅢ 幻獣コレクションⅣ 幻獣コレクションⅤ 幻獣コレクションⅥ 頌春館の話 「薬草取」まで 〈Ⅲ〉 アンドロギュヌスの夢 ル・グィン 円盤上の虫 満開の桜のある光景 〈歴史劇〉のことなど 『流れる女』 小松左京 セピアの記憶 過去のつぶやき 長崎西洋館・異人館物語 「蔵書」のこと 『花曝れ首』 赤江瀑 祖谷渓の月 作るか造るか創るか 処女作「夢の棲む街」について 思い出の一曲 シュオブに関する断片 十年目の薔薇 中井英夫 ピラネージとわれわれの……脳髄 煌けるコトバの城 稲垣足穂 幻想小説としての 澁澤龍彦 ラヴクラフトとその偽作集団 死と真珠 澁澤龍彦 時間の庭 澁澤龍彦 後記
Posted by
- 1