超デジタル世界 の商品レビュー
ITの話だと思って選んだが、哲学の話だった。 事前の期待は裏切られたのだが、とても興味深く読むことができ、嬉しい裏切りとなった。 この本の中ですすめられている基礎情報学とはどんなものなのか、興味を持った。
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西垣さんの本は1988年出版の「AI――人工知能のコンセプト」を最初に読み、それから数冊ではありますが、読んできています。 そのこともあって、シンギュラリティ否定論や、人間はAIに置き換えられるという見解の否定については想定どおりでした。 DXについて、日本の文化的伝統の根源に遡...
西垣さんの本は1988年出版の「AI――人工知能のコンセプト」を最初に読み、それから数冊ではありますが、読んできています。 そのこともあって、シンギュラリティ否定論や、人間はAIに置き換えられるという見解の否定については想定どおりでした。 DXについて、日本の文化的伝統の根源に遡って考えるというのがテーマになっており、「新実在論」などの興味深い見解の紹介もありましたが、正直にいいますとやや議論に付いていけない部分もありました。 「意味とは本来、『主体である誰かにとっての価値』であり、誰かが生きることと切り離せない。たとえば下戸である筆者にとって、ワインの良し悪しなど『意味がない』のである」(第三章から引用)
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大筋としては同著者の「AI原論」で触れたものに近いと思うが AIや哲学といった題材に優劣つけがたく興味がある人ようなであれば おおよそ触れられる話題への関心は尽きないものになっているか。
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デジタル社会の現況と情報学を幅広に捉えた一冊。総花な感じで焦点がぼやけるか? 全5章から成り、1章は新型コロナ以後の日本の官民デジタル社会現況、2章はAIとメタバースの現況、3章は情報学のうち多様な主観性を重視する考え方の概論、4章は分断アメリカ社会、5章がまとめと提言の構成。 ...
デジタル社会の現況と情報学を幅広に捉えた一冊。総花な感じで焦点がぼやけるか? 全5章から成り、1章は新型コロナ以後の日本の官民デジタル社会現況、2章はAIとメタバースの現況、3章は情報学のうち多様な主観性を重視する考え方の概論、4章は分断アメリカ社会、5章がまとめと提言の構成。 1・2・4章に新しい発見や驚きは正直あまりなくて、読むべきは3章と5章か。 とはいえ、3章は情報学素人の私は完全に置いてけぼりをくらった。著者の専門分野で真骨頂発揮の章なのだと思うけど、情報を哲学的に捉える視点・イメージ・理論がさっぱりわからない。これは別の本で学ぶべきことか。 5章は、日本人の気質(保守的でトップダウンのムラ社会)とデジタル社会(変化し続けるオープンな自己責任社会)の相性の悪さは納得。 人もシステムも社会も、ベータ版が許容されない日本の環境と気質のままでは、いつまでたっても国際デジタル社会のフォロワーだろうなと感じた。 巨大IT企業が作り出す金やビジネスに偏重したデジタル社会は、負の側面と格差拡大ばかりが目立っているような気がしてならない。
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西垣氏の本は数冊読んでいたので本書も手に取りました。新書ということであっと言う間に読了できましたが、著者の本を初めて読むという人は、概念の理解等に時間がかかるかもしれません。本書ではDXを、「オープンデータ」「オープンソース」「クラウド」というキーワードで表現します。そして日本人...
西垣氏の本は数冊読んでいたので本書も手に取りました。新書ということであっと言う間に読了できましたが、著者の本を初めて読むという人は、概念の理解等に時間がかかるかもしれません。本書ではDXを、「オープンデータ」「オープンソース」「クラウド」というキーワードで表現します。そして日本人、日本企業がいかに「オープン」を苦手とするかについて論じつつ、オープン化にまい進している米国も、実はオープン化がもたらす弊害(システムの不安定化、もしくは独裁者の登場)に苦しんでいる、と論じます。これは目を開かせてくれる主張だと思います。現在コンサルタントや多くの有識者が「オープン化」=良いことで金科玉条のように述べていますが、本書を読んで改めて「中道」の大事さを感じました。つまり完全にクローズドなデジタル化も良くないが、完全にオープンなデジタル化も実は良くないのでは、ということです。 また著者が以前から主張している基礎情報学のフレームを使った分析も興味深かったです。これはオートポイエーシス理論に階層構造を持ち込んだフレームワークで、人間個人をオートポイエティックで自律系の存在としつつ、その上位にある社会システムからみると人間個人は他律系として機能していることになるというわけです。日本社会はこれまで指導者層だけが外に対してオープンで、欧米の知識を輸入していたが、市民レベルもしくはコミュニティレベルは極めてクローズドを保っていた、しかしそれがインターネットの登場で崩されつつあるわけです。それ以外にも興味深い個所はありましたが、全編通じていろいろと考えさせられる良書でした。
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重鎮の視点とも言うべきだろうか。だいたい、おっしゃるような方向に進むんだろうけれども、感性が古臭くて守りに入っているような匂いが強いんだよね。
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情報について、もっとも新しく述べている本である。政府の提唱するDXとメタバーズについて批判的分析をおこなっている。最後では情報Iで重視されたプログラミング教育について、非常に狭いシャノンの情報概念としてユダヤ=キリスト概念にそったものであることを看破している。 情報メディア論と...
情報について、もっとも新しく述べている本である。政府の提唱するDXとメタバーズについて批判的分析をおこなっている。最後では情報Iで重視されたプログラミング教育について、非常に狭いシャノンの情報概念としてユダヤ=キリスト概念にそったものであることを看破している。 情報メディア論として大学初年度の学生に推薦できる本である。
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私の勤める会社でも最近はDX経営がどうのこうのと言っている。データがきちんと入っていないと、ちゃんとした評価ができないし、今後の経営に活かすことができないという。データ、データとうるさい。ビッグデータがないとAIもうまくはたらかない。AIを教育に取り入れるということもなんかうさん...
私の勤める会社でも最近はDX経営がどうのこうのと言っている。データがきちんと入っていないと、ちゃんとした評価ができないし、今後の経営に活かすことができないという。データ、データとうるさい。ビッグデータがないとAIもうまくはたらかない。AIを教育に取り入れるということもなんかうさん臭さを感じている。エビデンス、エビデンスと言われるのもまたイラッとする。昔から細かい数字を使ってものを言う人を信用していない。1の位まで細かく見ている割に、桁がずれていても気づかない人がいる。典型的な数字に弱い文系人間だ(これは失礼)。まあとにかく、ICT関連では便利に使えるものは使ったらいいと思うし、決してすべてを否定しようとは思わないが、どこかに落とし穴があるような気がしている。何の根拠もないけれど、自分の嗅覚がそう言っている。で、きっと本書には、その根拠が書かれているのではないかと思って読んでみた。まあ、きちんと理解できているわけではないが、次のような一文を読んで、やっぱりと思ったわけだ。「コンピュータ技術の発達とともに、あまりに情報学が後者の視点(コンピューティング・パラダイム)に偏りすぎており、効率向上のために人間が機械化されてデータ至上主義が横行し、このままでは未来社会が崩壊する恐れがあるので、前者の視点(サイバネティック・パラダイム)も回復せよと言いたいだけなのだ。」コスパとか、タイパとか言っている場合じゃない。「物事をやたらに数値評価し、そのデータを機械的に高速変換すればよいのでもないし、AIに丸投げで最適解を計算させればよいのでもない。衆知をあつめるボトムアップの集合知から、長続きする本物の効率向上が達成されるのである。」そう、目指すべきは本物の効率向上。そのためにも、今後高校で行われる「情報」の教育をもっと真剣に考えて行かないといけないのだろう。ところで、あのゾウの形のカーブ、どこかで聞いたことはあったが、それを見せつけられるとなかなかショックではある。そうなんだ、この20年ほどの間、収入なんて全く増えていない、下手をすると減っているのだ。まあ、物価が上がっていないから良いのだけれど。いやいや、授業料はかなり上がっているのだった。我が家の場合は、子育てから少し手が離れたころ、つまり教育費が増大したころ、つれあいがフルで働き出すようになったから何とかなっているようなものだ。そして、子どもたちが一人立ちするころ、僕は定年を迎える。
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2024/03/02 西垣通 「超デジタル世界」 デジタル基本書として類書にない傑作。「技術論+哲学」の構成。 デジタル技術の本は数多あるが、人類古来の社会哲学を踏まえた「デジタル文明論」は初めて。そもそも情報系の学者さんで、著者ほど古今東西の哲学に造詣の深い方は少なくとも日本に...
2024/03/02 西垣通 「超デジタル世界」 デジタル基本書として類書にない傑作。「技術論+哲学」の構成。 デジタル技術の本は数多あるが、人類古来の社会哲学を踏まえた「デジタル文明論」は初めて。そもそも情報系の学者さんで、著者ほど古今東西の哲学に造詣の深い方は少なくとも日本には居ないと思う。 戦前の旧制高校にあった「教養主義・知性主義」は、戦後米国風のプラグマティズム=SKILL重視の拝金主義に駆逐された感じ。 著者は言う、デジタル革命のインパクトの大きさを踏まえると、社会の在り方まで踏み込んだ「本質論の議論」がなければ、日本はデジタル社会への変革は成し遂げられない。多分、枝葉末節の個別システム・サービスで一喜一憂exマイナンバー保険証。 Ⅰ.DXの本質「オープン」 日本は立ち後れ「デジタル敗戦」 ①オープンソース②オープンデータ③クラウドサービス→コスト削減もあるが 「ヒエラルキーの破壊」を日本は受け入れられない Ⅱ.第三次AIブーム 「統計statistic」統計誤差を許容 深層学習 ベイズ推定 レイ・カーツワイル 2045年「シンギュラリティ」 AIの知能>人間の知能 ハラリ「ホモ・デウス」黙示録 人間至上主義→データ至上主義=アルゴリズム Ⅲ.AI倫理 EU 2018年GDPR 2021年AI規制案 ①政府管理(中国) ②民間大手(メタ) ③限定的(透明性) ④最小限(工場)
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デジタル化,あるいはその基礎となる情報学を日本のインフラとして根付かせることは,情報そのものの定義から確立する必要があり,意思決定者は情報学のみならず哲学にまで精通すべきであることがよくわかる.シャノンのみならずハイデガーまで網羅して全容を俯瞰しなければ,SNSに代表される情報社...
デジタル化,あるいはその基礎となる情報学を日本のインフラとして根付かせることは,情報そのものの定義から確立する必要があり,意思決定者は情報学のみならず哲学にまで精通すべきであることがよくわかる.シャノンのみならずハイデガーまで網羅して全容を俯瞰しなければ,SNSに代表される情報社会の分断の本質は理解できず,また,日本における情報化社会の有り様の青写真はとても描けない.逆にいえば,情報学の社会への浸透性は,他の学問より高い状況が既に醸成されたということでもあり,余程気を付けないと気が付いたら朱に交わり,赤くなっていそう.
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