バビロニア創世叙事詩 エヌマ・エリシュ の商品レビュー
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注釈に試訳という語が頻出するので決定版というわけではないようだが、そもそも表題の書に触れるのは初めてのことなので気にならない。マルドゥク神をただひさすら讃える内容であることも知らなかった。 似たようなところで正信偈を思い出す。教えを唱えているわけではなく偉業を讃えさせていると知ったとき、浄土真宗に対する信仰は失せた。もとからもってなかったけど、欠片もなくなった。 本書解説によれば、三世紀の人物が他者の著書から引用したエヌマ・エリシュをして「自然現象の寓喩」だと著している。 三世紀に存在した理性が喪失ないしは表出することを許されなかった期間はやはり暗黒時代というのではなかろうかと思いつつ。 「天上の出来事は地上の出来事の雛形となる」という。 この概念を初めて知ったのは1980年代の頃、『シルマリルの物語』の物語によってだった。創造の音楽の乱れを許した理由は今を持って謎であるが余談はさておき。 名だたる創作者たちはやはりほうぼうの神話にもある程度触れており、参考にしたというにはやや稚気がすぎる引用ないしは流用を行っているようにも見える。 こういうことを知ることは必須ではないが、えもいわれず解像度があがるカンジはする。
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いままで聖書関連の書籍であらすじ程度しか読んだことがなかったけど、邦訳が出るというのでありがたく拝読。解説が丁寧で読みやすい。しかし、毎度逆切れで父神・母神を殺しておいてその死体を裂いて世界を作っていく、人間は神が楽するための奴隷として作っただけなんて恐ろしく殺伐とした神話だなあとあらためて思う。そのあたりは解説では王位を暗殺で奪う実際の歴史の反映という点に触れられているけれど、やはり征服する側である帝国の神話ということなんだろうか。
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