インドとビートルズ の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
ビートルズとインドのかかわりを、インド側からの視点で描いた本。英米の資料だけでなく、インドのニュースや新聞も参照され、著者もインド人なので、ビートルズやラヴィ・シャンカール、マハリシをどのように見ていたのかがうかがえて興味深い。ドキュメンタリー作品『ビートルズとインド』の原作。(原題:The Beatles and India / 2021年、イギリス) ビートルズに影響を受けたインド人ミュージシャン、LSDを通じてジョンとジョージが仲良くなったこと、ラヴィ・シャンカールやマハリシの半生、ビートルズとマハリシの出会いとブライアン・エプスタインの死が重なったことなどが詳細に書かれている。ビートルズがインドに近づいたのにはさまざまな要因が重なっていたのがわかる。そして、本書の山場はやはりビートルズのリシケシュ行だろう。 インド音楽との出会いからインド文化と真剣に向き合っていたジョージ。心の支えとしてLSD、瞑想、ヨーコを求めていたジョン。バケーション感覚でリシケシュ来ていたポール。「なんでもやってやれ」の体当たり精神に満ちたリンゴ。ハリウッド女優のミア・ファロー、シンガーソングライターのドノヴァン、ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴ、そして自称エレクトロニクスの天才マジック・アレックス。ひと癖もふた癖もある人物が多数登場し、マハリシのアシュラム(道場)での物語を盛り上げる。 マハリシは、物質的快楽を放棄する必要はなく、朝晩2回の瞑想をすれば悟りを得ることができると主張するが、出家主義の伝統を持つインドでは受け入れられなかった。しかし大量消費社会が成立したアメリカでは信者の獲得に成功する。(「クスクス笑うグル」というキャラクターもウケたのかもしれない) 本書のマハリシに対する視線は冷静だ。ビートルズ(特にジョージとジョン)がマハリシに熱を上げる一方で、ラヴィ・シャンカールもマハリシとは距離を置いていた。(マハリシの超越瞑想のように手っ取り早く悟りを開くやり方に対して懐疑的だった) 「シタールに無駄な時間をかけないで、聖職者の長衣を着ればよかったと、冗談を言っていました。『ああいった偽のグルになれば、はるかに少ない労力ではるかに多い金を得ることができただろうよ』と彼は私に言いました」(妻スカンヤ・シャンカール) (p.38)
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