1,800円以上の注文で送料無料

世界史の中の満州国 の商品レビュー

3

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/04/20

・岡村青「世界史の中の満州国」(産経NF文庫)を読んだ。帯に「侵略、植民地、傀儡? 中国の嘘をあばく!」とある。いかにも産経らしい。本書は満州国を世界史の中に位置づける試みなのであらう。少なくとも世界史の授業の中では出てこなかつたいくつもの法律等が出てくる。それ以上に中国が列強に...

・岡村青「世界史の中の満州国」(産経NF文庫)を読んだ。帯に「侵略、植民地、傀儡? 中国の嘘をあばく!」とある。いかにも産経らしい。本書は満州国を世界史の中に位置づける試みなのであらう。少なくとも世界史の授業の中では出てこなかつたいくつもの法律等が出てくる。それ以上に中国が列強に侵略されていく様を詳細に述べる。世界史に出てきたこともあれば、出てこなかつたか、既に忘れてしまつたこともある。しかし,このあたりは本書には重要なことで、それが最初の「侵略編」の概要であらう。実際、これだけで本書のほぼ半分を占める。「植民地編」では今少し満州国のことを具体的jに述べる。ここで例の張作霖も出てくる。彼が馬賊の親玉で日本に面従腹背の徒であればこそ爆死する。金日成も匪賊の親玉として出てくる。彼は「みずから英雄伝説を創作する」(164頁)が、実態は「ほとんどは中国共産党の手足になったにすぎず、人民革命軍を率いた本格的な戦闘経験などなかった」(165頁)らしい。これらからも分かるやうに、この部分は日本の侵略の過程とでも言はれさうな部 分である。だから「植民地編」なのであらう。最後の「傀儡編」は満州国が傀儡ではなかつたことを述べてゐる。見方次第では傀儡も傀儡ではなくなるといふことであらうと思ふが、筆者はもつと強い調子で傀儡ではないことを主張してゐる。私には本書は満州国の実態が分かるやうな気がした書であつた。見方の問題は微妙なところがあり、確かにさうも言へるが、しかしといふところもある。難しいところである。 ・本書で作者の主張の最もよく表れてゐるのが最後の「おわりに」であらう。「侵略・植民地、傀儡ーー。」と始まる。 以下、現代中国の実態を述べる。「この三つのキーワード、じつは満州ではなくいまや、蛇蝎のごとく忌み嫌ってやまな い中国共産党政権にブーメランとなって跳ね返っているから皮肉としかいいようがありません。中国共産党政権こそ侵 略、植民地、傀儡のすべてを体現し」(253頁)てゐるのだといふわけである。これは日本では大方の賛同を得ること ができさうに思ふ。私ももちろん賛同する。それにしてもこの3つの語が実に見事に中国共産党に当てはまることに驚 く。チベットもこれで己が領土としたはずである。これは例のスリランカでも同様で、本当に気がついたら港が中国のも のとなつてゐたのである。返せないであらうだけ金を貸しておいて最後は我がものとする。帝国主義者のふるまひ、と言 ふより、そこらの金貸しのふるまひであらう。この金貸し、遅れてきた帝国主義者はアフリカにも食ひ込み、着々と領土 を増やしてゐる、とは言へなくなつているらしい。これも野心を出しすぎたせゐであらう。近いところではアジア、東ア ジアには台湾や尖閣がある。少し南に行くとベトナムやフィリピン、例の九段線に関はる。この九段線、法的にはなんの 意味もないのに、それを中国古来からの領海だと主張してゐる。中国の領土的野心はとどまるところを知らない。かうい ふことを筆者は述べてゐる。さうして最後に香港が来る。もともと中国の領土とは言つても、英国との約束がある。守る べきものである。「そうでありながら二〇二〇年六月、中国共産党は『香港国家安全維持法』を制定し、これらの自由を 奪い取り、民主派といわれる議員たちを議会から締め出し、香港政府はまはや完璧に中国共産党政権に支配された傀儡政 府と化しています。」(256〜257頁)傀儡である。現代中国の方がよほどか傀儡好きだといふことになる。満州が 傀儡なら香港は何だといふことである。筆者が言ひたいのはさういふことであらうと思ふ。

Posted byブクログ