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文学は予言する の商品レビュー

4.3

8件のお客様レビュー

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2024/04/24

「ディストピア」「ウーマンフッド」「他者」。 著者がこれまで執筆した書評や時評から浮かび上がってきた三つの大きな主題。それを章タイトルとして意識しながら、大幅に加筆修正をほどこして新たに編まれたのが本書。紹介される作家や作品はカズオ・イシグロや小川洋子、川上美央子など元々大好きで...

「ディストピア」「ウーマンフッド」「他者」。 著者がこれまで執筆した書評や時評から浮かび上がってきた三つの大きな主題。それを章タイトルとして意識しながら、大幅に加筆修正をほどこして新たに編まれたのが本書。紹介される作家や作品はカズオ・イシグロや小川洋子、川上美央子など元々大好きで既読のものも多くあるが、多和田葉子、奥泉光など評判は聞いていても未読だったもの、古典文学、「100分で名著のフェミニズム特集」で初めて知った『侍女の物語』など‥次から次へこれは読まねば!と思わされるものばかり。読書案内としても手元に置いておきたい。

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2024/03/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いや〜おもしろかった! 課題図書として『侍女の物語』を読んでおいて正解だった。 そもそも第一章の「ディストピア」が読みたくて買った本だったのだが、「翻訳」について書かれた部分が本当に勉強になった。蒙を啓かれるとはこのことかと。今まではなんとなく翻訳で読むというのは原文で読む体験に少しは劣るんだろうなとボンヤリ思っていたんだけど、全然そんなことはなく、それどころか翻訳によって新たな価値を得る作品があったり、翻訳は原作から独立した創作物と見る考え方もあったりして、全く翻訳というものをわかっていなかったのだなと感じた。 また、昨今の

Posted byブクログ

2023/08/17

ディストピア、シスターフッド、他者の視点からまとめられた文学論。 散発的な印象はあるが、それがアクチュアルという意味でもあるのだ。 文学、大事だな。 この本のおかげで読みたい本がまた増えた。

Posted byブクログ

2023/06/05

我々が小説にのめり込むとき、少なからずその物語を「自分ごと」として体験しながら読んでいることがある。これは自分のことかもしれない、この国のことかもしれない…。確かに多和田さんの『献灯使』『地球にちりばめられて』も小川洋子さんの『密やかな結晶』も川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれな...

我々が小説にのめり込むとき、少なからずその物語を「自分ごと」として体験しながら読んでいることがある。これは自分のことかもしれない、この国のことかもしれない…。確かに多和田さんの『献灯使』『地球にちりばめられて』も小川洋子さんの『密やかな結晶』も川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれないよう』も、知らない場所なはずなのに、どこか知っているような気がしながら読んだ。少しゾッとしながら。そうか、これが「ディストピア」小説か。この警鐘にもっと敏感にならねばならんな。SFとの違いもなるほど、わかった。他にも「ウーマンフッド」「他者」のテーマで、本当にたっくさんの文学が紹介されている。リストが欲しい!と思ったら巻末にあった。 また「他者」のところでは、読書を他者や未知との出会いの場とし、作者や主人公が自分と〝近い〟から信頼できる、共感した、だから作品を評価するという均質な感動が溢れているから、学生などには、自分からちょっと遠いなあ、と感じるものを読むことを勧めている、とのこと。納得。

Posted byブクログ

2023/04/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「わたしは古典文学にしろ現代小説にしろ、ただちに実益にならないものを人間が読むのは、「宙づりの時間」を楽しむためだと思っている。」という文に救われながら、「近年、わたしは「外国文学のお勧め」を学生などに尋ねられると、「自分からちょっと遠いなあと感じるものを選ぶといいですよ」と答えることがある。読書を他社や未知との出会いの場ではなく、自らの知識や体験の追認として行う人が、昨今増えているように思うからだ。」という文で反省をしました。この本は私にとって「ちょっと遠い」本でした。読了はしたし、わかったつもりになっているけど、たぶん全然ちゃんと自分の身にはなっていない。できていない。中に出てくる本を読んで、またそこの部分を読み直して、を繰り返したい本。勧めていただいて、触れることができたことに、感謝です。

Posted byブクログ

2023/03/19

『#文学は予言する』 ほぼ日書評 Day646 おそらくは最も有名な"ディストピア小説"である、G.オーウェル著『1984』、第1章では、そうした作品を数え切れぬほど例を上げつつ、現代の世相を斬る。著者が巻末で自ら述べている通り、本職は翻訳者の方だが、文学...

『#文学は予言する』 ほぼ日書評 Day646 おそらくは最も有名な"ディストピア小説"である、G.オーウェル著『1984』、第1章では、そうした作品を数え切れぬほど例を上げつつ、現代の世相を斬る。著者が巻末で自ら述べている通り、本職は翻訳者の方だが、文学作品への造詣が驚くべきものである。 第3章では、万葉集から、現代作品までを、一気に机上に広げ、それぞれにおける新たな文学テクニックの進化を見事にまとめ上げる。 とても本書で紹介される作品を全て網羅することはできないが、特に面白そうなものは、早速図書館で予約してみた。 最後に、ディストピアものでは、身分階級や差別構造のような主題を扱うものが多いのは事実だが、そうしたことを記述する際に、"「女性は、話が長くなるから、発言する時間を制限すべきだ」と言い放つ、オリンピック組織委員会会長がいた"といった事実に反する記述や(ニュアンスの取り方はともかく、この発言は全文を読んだことがあるが、著者の指摘するような箇所は全くない)、菅政権での学術会議メンバー任命に関する言及等は、やめておけば良かったのにと思うところだ。 https://amzn.to/3llTMhL

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2023/02/02

朝日新聞その他でチラチラ読んでいた文章を、まとめて読めて有難い。自分が読んできた作品も、作品の位置が明らかにされ、このようにテーマごとに深めてもらったことで、共感や興味も広がったような気がする。 未訳の、読みたい作品もたくさん。面白かった。

Posted byブクログ

2023/01/29

古今の名著と当時の社会を照らし合わせながら読み解き、その作品がのちに現実のものになった事例も指し示す。 作家の想像力は、世界の行く末をも見通す。 それはひとえに作品を生み出す過程で蓄積された広く深い知識見識の賜物なのだろう。 またそれらを踏まえ、「物語」として後世に語り継がれるも...

古今の名著と当時の社会を照らし合わせながら読み解き、その作品がのちに現実のものになった事例も指し示す。 作家の想像力は、世界の行く末をも見通す。 それはひとえに作品を生み出す過程で蓄積された広く深い知識見識の賜物なのだろう。 またそれらを踏まえ、「物語」として後世に語り継がれるものを編み出す類まれな力も要るのは言をまたない。 読みたい本もたくさん増えた。

Posted byブクログ