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今昔奈良物語集 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2023/03/26

奈良を舞台にしたパロディ短編小説集、と書いても全く魅力が伝わらないのがもどかしい一冊。 たくさんの名作が、今の奈良を舞台に再構築されます。 奈良で生活したことのある人間には、ありありとその風景が浮かぶ。奈良の土地であり、その人間性を非常によく理解した人だからこそ書ける作品集。 ...

奈良を舞台にしたパロディ短編小説集、と書いても全く魅力が伝わらないのがもどかしい一冊。 たくさんの名作が、今の奈良を舞台に再構築されます。 奈良で生活したことのある人間には、ありありとその風景が浮かぶ。奈良の土地であり、その人間性を非常によく理解した人だからこそ書ける作品集。 ただ…この作品の本当のおもしろみはそこではなくて。 原作のよいところを理解した上で、その作品のえぐみのような部分を引き算して、大変優しい作品に仕上げているところ。 それを一番強く感じたのは「大和の桜の満開の下」という短編。この短編集の中では比較的強い表現のある作品ではありますが、これを読んですぐその元となった坂口安吾「桜の森の満開の下」を読んで…そこを残してそうしあげたか…と思わずうなった。 もしこの原作を読んだことがない人は(自分もそうでしたw)、この短編を読む前でも読んだ後でもいいので原作も読むことをおすすめします(青空文庫に公開されてます)。 できれば高田の桜の花を眺めながら、と言いたいところですが、今年の桜の花はもう散ったかな? パロディってなんとなく「足し算」してしまいがちなんですが、元の良さを知っていれば「引き算」になるんだ。 それをなにより感じさせてくれた一冊でした。

Posted byブクログ

2023/01/18

卑屈な奈良県民botのアカウント名で奈良のあれこれをおもしろおかしく語るツイートが人気の著者が古典を奈良ベースの物語に置き換えて盛大にパロった短編集。 古典をその雰囲気はそのままに現代奈良に設定を置き換えているのがすごい。古典文学に苦手意識がある人が読んだら興味が持てていいかも。

Posted byブクログ

2022/12/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルから『今昔物語集』にある話の奈良県アレンジ版だと思っていたら全然違った。 『走れメロス』や『竹取物語』など有名日本文学作品を奈良県の話としてパロディ化した短編集だった。 本当に有名どころが揃っているので、誰でもある程度粗筋を知っている作品が多いのでは。 勿論元ネタを知らなくても読めるが、知っているとアレンジ部分に気付けて楽しい楽しい。 作品ごとに文章の書き方も変えていて、技が細かい! 元ネタに文体も限りなく寄せておきながら、絶妙に奈良かつ現代アレンジが効いていて凄い(現代ばかりではないけれども) 特に『竹取物語』ぶっ飛んでいて最高でした。 最後の「知らんけど」に死ぬほど笑った。 と言いつつ、個人的にはシリアステイストの『大和の桜の満開の下』が一番好きでした。 元ネタ作品からすると、芥川や宮沢賢治推しなので『三文の徳』や『うみなし』も好き。 ナラムボン、耳に残る……元ネタ忘れそうになるほど。 シリアスやしんみりした話もあるが、基本的にはコメディでラストもきちんとオチがあって笑える話。 実際にあった騒動を交えた話もあって、読んでトラウマが蘇った人もいるかも。 色々な楽しみ方、感じ方ができるお話だったと思う。 奈良が好きな方も、元ネタの文学が好きな方も、とにかく笑いたい方も、是非是非。

Posted byブクログ

2022/12/22

文学を愛するすべての人よ。奈良を愛するすべての人よ。踊れ、狂え、抱腹絶倒の文学パロディに。 奈良ネタがふんだんに詰め込まれ、ときには現代風に、ときには奈良に昔から伝わる説話のように語られる。 特にすごいなと感じたのが、元ネタの作品に文体が寄せられている点。単語の選び方や文章の...

文学を愛するすべての人よ。奈良を愛するすべての人よ。踊れ、狂え、抱腹絶倒の文学パロディに。 奈良ネタがふんだんに詰め込まれ、ときには現代風に、ときには奈良に昔から伝わる説話のように語られる。 特にすごいなと感じたのが、元ネタの作品に文体が寄せられている点。単語の選び方や文章の調子など、坂口安吾や中島敦といった豪華な面々が奈良県にやって来て書いたのかと思うほどだった。奈良への愛だけでなく、文学への愛もにじみ出ている。 元ネタの文学作品も読み返したくなったし、奈良への愛も再認識できた。最高の一冊でした。

Posted byブクログ