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小国 の商品レビュー

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2024/07/07

 近代以来の国際関係の歴史の中で、「小国」がどのような存在の仕方をしてきたかについて考えてみようとするのが、本書の課題とされる。世界史や国際政治史の本を読むと、どうしても主たるプレイヤーとしては影響力の大きい大国が中心になってしまい、いわゆる小国とされる国々についてあまりまとまっ...

 近代以来の国際関係の歴史の中で、「小国」がどのような存在の仕方をしてきたかについて考えてみようとするのが、本書の課題とされる。世界史や国際政治史の本を読むと、どうしても主たるプレイヤーとしては影響力の大きい大国が中心になってしまい、いわゆる小国とされる国々についてあまりまとまった知識は持っていなかった。本書を通読して、そうした大国と対峙しあるいは大国の狭間で、小国がどのように考え、どのように動いてきたのか、ある程度垣間見ることができたように思う。  ナポレオン戦争後における永世中立化によるスイスの独立の保障、ベルギーのオランダからの独立と永世中立化が、諸大国間の勢力均衡に乗って行われたこと、北欧諸国における中立化方向への動向も、デンマーク、スウェーデン等それぞれの事情によりだいぶ異なるものであったこと、バルカン諸国においては連合の企てと対立とが繰り返されたことなど、その歴史についていろいろと学ぶことが多かった。  例えば「中立」と言っても、第一次大戦時ドイツによりベルギーが中立を侵犯されてしまったように、第二次大戦時ドイツ及びソ連により多くの小国が占領、支配下に置かれてしまったように、その地政学的位置だったり、時々の国際情勢によって翻弄されるおそれが高いのが小国である。そんな小国が生き抜いていくためにはどうしたら良いのか、いろいろなことを考えさせられた。  文庫版あとがきにもあるように、ロシアによるウクライナ侵攻により、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟という大きな外交転換がなされた。これがどういう方向に進むことになるのか考えていく上でも、本書は大いに参考になると思う。

Posted byブクログ