1,800円以上の注文で送料無料

ルーシー・ボストン の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/02/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書は、児童文学作家として知られるルーシー・ボストンの人としての豊かさを知ることができ、もしボストンの著作を知らなくても、文学だけでなく造園やパッチワークなどにも関心がある方には、イギリスの小さな村で、しかも40代後半から晩年の90代に至るまで様々な作品を生み出したエネルギッシュな芸術家がいたことを知ることができる興味深い一冊だと思う。 グリーンノウシリーズを読んで、作者のルーシーボストンはきっとオールドノウのおばあさんのような人なんだろうなとずっと想像していた。 本書の長沼先生や林望先生の文章で描かれていたボストンとの交流はとても温かくて、愛情深くトリーを館に受け入れてくれるおばあさんの様子を彷彿とさせたが、自伝「メモリー」や、近しい親戚や友人たちが語る思い出の中のボストンは、こだわりが強くて気難しいところがあり、オールドノウのおばあさんとまるっきり同じ印象の人ではなかった。厳格なプロテスタントの母の元で、美しい庭や音楽を楽しむことを禁じられていた「葛藤と反抗だらけ」の娘時代を過ごし、大人になっても離婚を経験したり戦争が起きたりと混沌とした時期を乗り越えなくてはならず、きっと朗らかでいるだけでは生きてこれなかったのだろうと思う。 しかし、「葛藤と反抗」ができる情熱、自然や美しいものを愛する心、だんだんと近代化していく時代に生まれ育った彼女の生い立ち、全ての要素が様々な芸術活動に繋がっていったのだと感じた。 執筆、パッチワーク(針仕事)や絵画、庭造り、どれも「趣味」とは括れないほどの才能を発揮し、「生き残る価値を持つ」ものになったのは、運命的に出会って購入、そして自ら改築までしたヘミングフォードグレイのマナーハウスという「居場所とそこにいる理由」を手に入れることができたからだと思う。どの活動にも、すべての要素が関わっていて、どれかが欠けてもボストンの芸術にはならなかったのだろうと、様々な角度からボストンを語る本書を読んで知ることができた。

Posted byブクログ