神経症的な美しさ の商品レビュー
朝日新聞の書評欄で紹介されたので読んだ。読む前にこういう本を書くのならこれまでに出版されたあの本やあの本は読んで置いてほいしと思った本がほぼ全て読んだ上でこの本を書いている。感心するほどよく勉強している。 アメリカ人による最新の日本人論。菊と刀、甘えの構造、タテ社会の人間関係、...
朝日新聞の書評欄で紹介されたので読んだ。読む前にこういう本を書くのならこれまでに出版されたあの本やあの本は読んで置いてほいしと思った本がほぼ全て読んだ上でこの本を書いている。感心するほどよく勉強している。 アメリカ人による最新の日本人論。菊と刀、甘えの構造、タテ社会の人間関係、敗北を抱きしめて、鎖を解き放たれた日本(未邦訳)などの名著を踏まえつつ、西田幾多郎、田中康夫、オタク文化まで視野に入れて日本人とはどういう民族なのかを論じた驚愕の本。引用文献だけでも、よくこんなに調べるなという熱量。実に面白い。 日本は文明開花以来、西洋の文明の良いところは吸収しつつも、伝統的な良いものは残してきた。その二つは必ずしも容易に共存できるものではなく、様々な軋轢を生んできた。産業による大量生産化、変化の高速化、生活の利便化は、当然アメリカでも、他の国でも地球規模で問題となっている。この課題を乗り越える鍵が日本文化にあると著者は言う。一読に値する本。 驚くのは、著者のバーマンは日本やアジアを専門にしているわけではない。日本にも2回しか来ていないのにこの本を書き上げた事。経験よりも知の力を信じると人はこんな本も書けてしまうのか。 やや日本びいきが行き過ぎのはご愛嬌。
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「神経症的な美しさ」https://keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428568/ 震えるほど良書。われわれ日本人は、明治の急激な近代化と戦後占領により致命的なまでにアイデンティティを崩壊しまだ回復できていないし、それに気づいてすらもいないらしい。ひきこ...
「神経症的な美しさ」https://keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428568/ 震えるほど良書。われわれ日本人は、明治の急激な近代化と戦後占領により致命的なまでにアイデンティティを崩壊しまだ回復できていないし、それに気づいてすらもいないらしい。ひきこもりの対社会の感受性は真っ当であり、それは日本の将来を握るカギ 宗悦、民藝、大拙、幾多郎、道、職人気質、戦後責任、リセッション(実は経済は安定してるとも)、原発、世界一の自殺率、倫理観や内省力の欠如。よくある日本人論から大きく進めて独自の見解を提示している。辛辣でありながらも希望がある。まじで日本人はどこへ行くのか。。。 ーーー ちょっとこの本がものすごい良くてというか怖くてというか読んでて身震いするし、こういう本がベストセラーには絶対ならないし国内からは絶対に出てこないのが日本という国で日本人という民 ーーー 「神経症的な美しさ」まだプロローグなのにもんのすごくおもしろい。またしても内容知らずに読み始めたら日本論日本人論だった
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※このレビューにはネタバレを含みます
ユングがアフリカ旅行をした際、一人歩く原住民を馬車に同乗。5分ほど走ったところで「一息つきたい。あまりに速いので、魂が置いてきぼりになった。追いついてくるまでここで座っていないと」と言われた例を引き合いに、ペリー来航に始まる明治維新、マッカーサーによる戦後体制といった2つの大きな進展が、日本のアイデンティティに影響を与え、「日本は神経症的に引き裂かれた」と分析しています(「その進展がすさまじかったために、最も神経症的である」)。 一方で、日本にある「拠り所となる一貫した伝統」が米国にはなく、アメリカン・ドリーム体現のための精力的活動が崩壊すれば、「口を開けて待っているは真空、深淵」と見ています。 日本では、社会・文化・環境の利益を優先する価値観がすでに社会の一部となっており、(そうした神経症がおさまれば?)「日本は世界初のポスト成長経済のモデルになる」かもしれないと「予言」しています。 著者は米国人ながら、日本の著作を多数読みこなしており、これには驚かされます(日本文化への造詣も深い)。慶應義塾大学出版会からの書籍で、いわゆる「日本礼讃本」ではなく、またさらっと読めるタイプの本でもないのですが、「アウトサイダー」からの視点が面白く描かれている一冊です。
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