韓国学ハンマダン の商品レビュー
日本になじみがありながら(日本人や在日僑胞として)韓国に興味・関心をもち、韓国で励む若手研究者たちが各々の研究分野について概説しているもの。編者の一人・緒方さんの本を以前読んだとき、同世代で特に韓国に興味・関心もなく川崎で育っていた緒方さんが、ふとしたきっかけで友人が在日僑胞であ...
日本になじみがありながら(日本人や在日僑胞として)韓国に興味・関心をもち、韓国で励む若手研究者たちが各々の研究分野について概説しているもの。編者の一人・緒方さんの本を以前読んだとき、同世代で特に韓国に興味・関心もなく川崎で育っていた緒方さんが、ふとしたきっかけで友人が在日僑胞であることを知り、そこから一気に韓国になじんでいったことを知った。自分も同じように(?)まったく何の興味・関心もないところからある日突然韓国にハマり、ハマったからにはと過去の歴史についてもそれなりに知識を得て考えをもってきたつもりだけど、緒方さんやこの本に執筆している人たちにはまったく及ばない。知ったきっかけをここまで昇華できることに素直に感心してしまう。 この本のなかには、15年ほど前に一度だけソウルで会った人も書いていた。日本の大学院を修了して韓国に来たばかりだったはず。それから歳月が流れて自分の研究の道をしっかり歩んでいるんだなあと感慨深かった。(それに引きかえ、韓国語もダラダラ習うばかりでペラペラはほど遠く、エンタメ中心に韓国に触れているだけの自分……。) それぞれの研究テーマに沿っているので体系的ではないんだけど、それぞれに韓国の文化や歴史、風俗などに思いをもちながら研究している熱が伝わってくるような感じがする。そして、執筆者それぞれの韓国とかかわるようになったきっかけを知ると、やはり韓国ってどこかほかの外国とは違うような気がしてくる。 それにしてもだ。従軍「慰安婦」やその支援者たちがその歴史を学ぶための博物館を西大門公園につくろうとした2008年当時、独立運動家の遺族たちからなる光復会が反対したとか(p.44)。また、韓国の歴史の教科書においては「女性まで侵略戦争の犠牲になったりもした」という文章があるとか(p.72)。こういう書き方って主役が男性で女性は脇役みたいだと思う。日韓を問わず、「慰安婦」に代表されるジェンダー的な視点の硬さが気になる。これってもちろん、韓国に限ったことでなくて日本なんか「ジェンダー問題+嫌韓」みたいな始末の悪さがあると思う。そんな、ともすれば意気消沈してしまいそうな分野に注力している若手いるということに、まだ希望が感じられる。
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いま読むべくして、読めた。 韓国に行くにあたって、韓国のいまを知れる本は…といろいろ手にとっていたが、内容がドンピシャだった。 本書の「はじめに」から、執筆者たちの日韓関係に関する誠実な眼差しが伝わってくる。 KーPOPなどをはじめとして、韓国への関心は高まっているけど、その断片...
いま読むべくして、読めた。 韓国に行くにあたって、韓国のいまを知れる本は…といろいろ手にとっていたが、内容がドンピシャだった。 本書の「はじめに」から、執筆者たちの日韓関係に関する誠実な眼差しが伝わってくる。 KーPOPなどをはじめとして、韓国への関心は高まっているけど、その断片的な情報(音楽やドラマ、アイドルから美容、グルメまで)は日本で溢れているけど、その背景にある韓国社会と、その歴史という”土台”を理解せずして、それらの情報をつなぎ合わせることはできない。 一方で、”反日”に対しても、私たちが感情的になるのではなく、なぜなんだろう? と立ち止まって考えるときに、手がかりになる本だと思う。 民主化運動が、韓国の現代社会を語る上で外せないことを知った。 独裁が続いていたことは、今の韓国からは想像ができないが、大統領の独裁と民主化運動に対する弾圧の激しさは知らなかった。 (タクシー運転手という光州事件に関する映画を観ていたから、余計に民主化運動の悲惨さが想像できた。) 日本でいう60、70年代の学生運動みたいなイメージ。 日本では学生たちがシラけていった80年代に韓国の若者は闘っていた。 日本の学生運動世代が、ちょっと左っぽかったり、政治に対しデモをしたりするよな〜、の人たちが、まだ韓国では50、60代だから社会に対しての発言力も大きい。 政治に対しての関心度も熱量も高い背景の一つはそこにもあると感じた。 慰安婦問題に関しては、2015年に日韓外相会談後に合意文が発表され、「最終的かつ不可逆的な解決」が宣言された。これをもって、もうおしまい!と、政府レベル(時の朴大統領、安倍自民政権)では合意したし、国同士の合意だから簡単には反故にはできない。 だけど、韓国の国民レベルでは納得いかないわけで、本書では、その感情的なところや、フェミニズムや人権問題であって簡単に解決する話でもない、という韓国の人々の視点を述べている。 何より執筆陣が30代など、若いことが好感を持てる。 良い本に出会えました。
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日本と韓国を理解するうえで、双方の相手に対する常識がかけ離れてきて、相手を理解しがたいとの意識が日韓の問題に拭い難く存在する。この本は、若手の研究者達の目で、韓国社会を理解するうえで役に立つ目線や知識を与えるものである。
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現代韓国社会の解像度が上がりました。 どんな国の「いま」もそこに至る歴史的文脈と、周辺諸国、国際情勢の文脈を抜きには理解できるわけがない……ということも改めて再確認しました。
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