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水と茶 の商品レビュー

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2023/04/25

この方の目線が好きです。つい余白を想像してしまう…装丁も可愛いのでおすすめです。 十句選 ストーブにあたるからだのうらおもて 雪解や瞼の覆ふ目のかたち 後ろから卒業式の椅子を蹴る 皿よりもピザ大きなる花見かな 冷蔵庫の明りの中でハムを食ふ 瓜刻む窓に火星の低くあり 待合せの出...

この方の目線が好きです。つい余白を想像してしまう…装丁も可愛いのでおすすめです。 十句選 ストーブにあたるからだのうらおもて 雪解や瞼の覆ふ目のかたち 後ろから卒業式の椅子を蹴る 皿よりもピザ大きなる花見かな 冷蔵庫の明りの中でハムを食ふ 瓜刻む窓に火星の低くあり 待合せの出口がちがふ晩夏かな やすめればからだよくなる九月かな 宴とほく月の廊下にすれ違ふ くしやみしてくしやみの音を真似されて

Posted byブクログ

2023/02/06

第8回石田波郷新人賞の俳人、斉藤志歩さんの第一句集です。プロフィールによると30歳そこそこの若手のようですが、芯のしっかり通った安定の読みごたえでした。とはいえ堅苦しさは一切なく、むしろユーモラスでさえあります。お茶のおともにぱらぱらめくって、時々クスッと笑わせてもらえる、そんな...

第8回石田波郷新人賞の俳人、斉藤志歩さんの第一句集です。プロフィールによると30歳そこそこの若手のようですが、芯のしっかり通った安定の読みごたえでした。とはいえ堅苦しさは一切なく、むしろユーモラスでさえあります。お茶のおともにぱらぱらめくって、時々クスッと笑わせてもらえる、そんな親しみやすい句集です。 以下、わたしの好きな句を3つご紹介します。ただ、わたし自身は俳句未経験で句集を読むのも初めて。古文も苦手で、作者の句を正しく読めているかどうか微妙です。だから、ここに書くのは鑑賞文ではなく、ましてや批評ではなく、感想文あるいは二次創作のようなものと思ってください。 ◯秋風やきりんの舌のよく見ゆる この句から思い浮かぶのは、たとえばこんな情景です。ある日、作者は友人たちと動物園に行きました。きりんの前でのやりとりです。 A「うわ、でけぇ」 B「背たかーい」 C「首ながーい」 斉藤「舌が赤い」 ABC「そこ?!」 アウトラインよりディテールが気になるのは作者の特性なのでしょうか。世間一般との感覚のズレがユーモラスな句です。 「いや斉藤さん、きりんだよ?よく見てよ」 「だから、よく見ている」 「いや、そういうことじゃなくてさ…」 という会話の続きまで空想してしまいました。あくまでもからりとした秋晴れの日の出来事です。 ◯好きらしく栗飯の栗先に食ふ ほくほくに炊けた栗ごはん。秋限定のお楽しみですよね。子どもの頃に栗だけほじって食べた経験、誰にでもあるんじゃないでしょうか。 でも、この句で栗だけ先に食べているのは作者ではありません。家族や親友でもなさそうです。よく知る間柄なら嗜好は把握していますから「好きらしい」とはふつう言いません。 栗が好きなのは初めて知った。この句にはそんな発見のニュアンスが含まれています。栗ごはんを食べているのは作者にとって、嗜好は把握しきれてないけれど無関心ではいられない人なんです。箸の上げ下ろしまで、つい詳細に観察してしまうほどに。 栗ごはんの栗だけ先に食べてしまう、子どもっぽいところのある人。作者とどんな関係なんでしょうね? ◯とんかちの音はるかなる日永かな 春のうららかな日、どこかで家でも建てているのでしょうか。とんかちの音が遠くまでひびいてゆく。のどかな日常の風景を詠んだ、すがすがしい句です。 一方で、つい深読みしたくなる句でもあります。芥川龍之介の箴言集『侏儒の言葉』に次のような一節があるからです。 〈打ち下ろすハンマアのリズムを聞け。あのリズムの存する限り、芸術は永遠に滅びないであろう。〉 個々の芸術家は滅びても、芸術は必ず民衆の中に種子を残している。そう芥川は書き遺しています。アーティストとしての強烈な自負を感じさせる一文です。 で、この句は芥川へのオマージュかも、と一瞬思ったのでした。芥川が蒔いた芸術のタネが、斉藤さんに根付いて芽吹いてこの句を詠ませたのだったら面白い。九割方わたしの妄想ですけれど、そんな悠久の営みをも感じさせる、のびのびした句でした。 レビューフルバージョンはこちら↓ https://shiosato.hatenadiary.jp/entry/2023/01/28/211430

Posted byブクログ