アインが見た、碧い空。 の商品レビュー
本来国際貢献が目的だったはずの技能実習生制度が、実際は技術の移転等を伴っておらず、途上国からの出稼ぎの手段として使われている現状を、小説部分と解説部分に分けて説明している。 小説部分は想像通りのストーリー展開で面白みに欠けるところはあるが、技能実習生制度への理解を促す手段として意...
本来国際貢献が目的だったはずの技能実習生制度が、実際は技術の移転等を伴っておらず、途上国からの出稼ぎの手段として使われている現状を、小説部分と解説部分に分けて説明している。 小説部分は想像通りのストーリー展開で面白みに欠けるところはあるが、技能実習生制度への理解を促す手段として意味はある。 現在の日本社会は、技能実習生が行う単純労働のお蔭で成り立っており、この制度を止めるためには、正式に移民を入れるしかないようだ。しかし、それでは日本が日本でなくなる恐れがある。こうなると、技能実習生制度は必要悪。この制度はアジアの若者のキャリアの収奪だとこの本では書いてあるが、解決策は当然のことながら書かれていない。問題提起に留まっている印象であり、著者なりの考えがほしかった。
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技能実習生の問題性について、ありきたりのステレオタイプ化された言説に拠ることなく、社会学者及び行政書士実務家の視点から、「キャリアの搾取」「簿外債務」という独自の概念を打ち出し、それを「小説と解説」という手法で表現した本書は、中高生から実務家まで幅広く読むことができます。 ある行政学者は「行政」を「公共政策のPDCA」と定義します。本書の著者も行政書士を「公共政策の専門家」と位置付ける立場から、情報社会における一つの行政書士のあり方をイミグレーションという分野で体現しています。 単純なる出稼ぎ労働を、技術移転の美名の下で行う技能実習制度は、現実と理念とに乖離があり、若者がキャリアを身につける機会を奪います。その「不徳」を続けて行った先の日本に危機感を抱かざるを得ません。多くの読者が、本書の生き生きとしたキャラクターを通じて、若者のキャリアを大切にする「徳」を共有することを期待します。
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面白く、しかもためになる本である。しかし、単に「面白い」「ためになる」という感想は、著者はあまり好まないだろう。本書は、読者に対していくつかの問いかけと要求をする本であるからだ。 本書は国内外で様々な批判がある日本の外国人技能実習制度について、その本当の問題は何か、日本はその問題...
面白く、しかもためになる本である。しかし、単に「面白い」「ためになる」という感想は、著者はあまり好まないだろう。本書は、読者に対していくつかの問いかけと要求をする本であるからだ。 本書は国内外で様々な批判がある日本の外国人技能実習制度について、その本当の問題は何か、日本はその問題に対し今後どのように向かい合うべきかを、小説パートと解説パートから論じている。 外国人技能実習生は、よく言われるように、セクハラやパワハラが横行する劣悪な労働環境で働くことを強いられている「弱者」である。 しかし本書を読み、彼らは元から「弱者」であったわけではないのだと感じた。技能実習制度という歪みのある制度が彼らから夢や目標を追うことのできる人生を奪い、「弱者」にしているのだ。そんな、居心地の悪い気分になった。
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