ウクライナ・ノート の商品レビュー
ウクライナの大飢饉ホロドモールから生き抜いた人達の話を聞いてグラフィックノーベルにまとめたものである。 正直、かなり悲惨な話としか言えない。 自分も大飢饉があったことは覚えてるがこれほどの悲惨なものだったとは想像できなかった。 絵を見るだけでもその悲惨さが強烈に伝わります。 さら...
ウクライナの大飢饉ホロドモールから生き抜いた人達の話を聞いてグラフィックノーベルにまとめたものである。 正直、かなり悲惨な話としか言えない。 自分も大飢饉があったことは覚えてるがこれほどの悲惨なものだったとは想像できなかった。 絵を見るだけでもその悲惨さが強烈に伝わります。 さらにはこの本で話してくださった方のその後の人生も辛いものが多くて、言葉ででこないです。 最近、負の歴史を歪曲する流れが多いが、歴史は変える事ができないので、ちゃんと事実として向き合う必要はあるのでないかと感じた。
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著者・イゴルトはイタリアを代表する漫画家。日本でも活動歴があり、90年代に雑誌「モーニング」で作品が連載されたこともある。 谷口ジローの熱烈なファンでもあり、谷口との二人展が開催されたこともあるという。 本書は、著者が2008~2009年にウクライナとロシアに滞在したころ、市中...
著者・イゴルトはイタリアを代表する漫画家。日本でも活動歴があり、90年代に雑誌「モーニング」で作品が連載されたこともある。 谷口ジローの熱烈なファンでもあり、谷口との二人展が開催されたこともあるという。 本書は、著者が2008~2009年にウクライナとロシアに滞在したころ、市中で会った人々からの聞き取りが元になっている。原著発刊は2010年。 ウクライナは1922年にソビエト連邦を構成する国となる。その後、第二次世界大戦を経て、1991年にはソ連が崩壊し、独立。だが経済的にはロシアへの依存は大きいままで、ロシア語話者も多く、親ロ派・親欧米派の綱引きが続いた。 著者が滞在したころは、2004年のオレンジ革命で親欧米派のユシチェンコが大統領となった後、2010年に親ロ派のヤヌコーヴィチが大統領となる前となる。ベルリンの壁崩壊からちょうど20年という時期だった。 また、1930年代前半の大飢饉「ホロドモール」を実際に経験している人がそれなりにいた時代でもある。 ウクライナは飢饉を何度か経験しているのではあるが、1930年代のそれは、スターリン政権による人為的かつ大規模なものとして特筆される。農業の集団化(コルホーズ(集団農場)の形成)、クラーク(富農)撲滅運動による反ソ連分子の強制収容、穀物の強制徴発、ノルマを達成しない農民への弾圧や処罰が契機となって飢饉が発生した。ホロドモールとは、飢饉を意味するホロドと、殺害を意味するモルを合わせた言葉で、いわば「飢餓殺人」である。 著者が取り上げる人々の人生は、重苦しいものが多い。 実際に子供のときにそれを経験し、数多くの死体が運ばれるのを目撃した人、あるいは人肉食の噂を聞いた人もいる。 ある女性が生まれた家は、家族が飢えないで済む程度の稼ぎはあったが、多すぎはしなかったために、クラークとして摘発されずに済んだ。この一家は一頭の雌牛に助けられた。牛の乳を売って、ふすま混じりのパンを買い、残った牛乳は子供たちの胃を満たした。 また別の男性。夫に捨てられた母。女手一つで育てられ、自身も子供のころから重労働についた。スターリン時代はコルホーズで働いた。家庭生活には恵まれず、結婚はしても長続きしない。転がり落ちるように不幸になっていく。こちらは、ホロドモールのせいというわけではないのだが、その時代を含め、ナチスの占領といった暗い時代がなければ、もう少しましな人生もあったのではないかと考えさせられる。 とはいえ、「ソ連時代はそれなりの暮らしが送れた。今(2008年・2009年当時)ウクライナが貧窮にあえいでいるのは、ゴルバチョフがソ連を崩壊させたためだ」と考える人もあり、ことは単純ではない。 そしてウクライナはチョルノービリも抱える。 著者は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、2022年10月、本書の続編ともいえる『ウクライナ・ノート2 侵略の日誌』を刊行。邦訳はまだないようだが、いずれ出るのであれば読んでみたい。
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ウクライナの、名もなき人々の個人の体験と私的歴史から見えてくる、ウクライナ-ロシアの関係と民族の歴史。 コミックアートの手法を通して描かれているので、重たい内容の割には読みやすい。 この作家さん、日本をテーマにした作品も出しているようなのだが、訳されていないのが残念。
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新聞の書評欄で知り図書館に予約。待つこと5ヶ月ようやく読めました。ウクライナの戦争の漫画かと思っていたのですが、むしろ1933年のスターリンの政策が原因で起こった大飢饉の話でした。著者がウクライナで知り合ったウクライナ人の人生の話なので基金だけでなく、ソ連の体制下での市井のひとひ...
新聞の書評欄で知り図書館に予約。待つこと5ヶ月ようやく読めました。ウクライナの戦争の漫画かと思っていたのですが、むしろ1933年のスターリンの政策が原因で起こった大飢饉の話でした。著者がウクライナで知り合ったウクライナ人の人生の話なので基金だけでなく、ソ連の体制下での市井のひとひとの生活苦がたんたんと綴られています。この飢饉の悲惨さは以前見た中国の映画無言歌の、世界と重なりました。 またソ連解体後のウクライナ5200万人いた人口のうち700万人が死亡とあります。 知らないことばかりでした。作者はチェーホフを、題材にして漫画を描く資料集めのためにウクライナに滞在したそうですが、その際他に描くべき素材があることに気づき本作となったようです。ロシア・ノート、ウクライナ・ノート2もぜひ読んでみたいものです。
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イタリア人の漫画家であるイゴルト氏が自らウクライナに赴き、ウクライナにおいて1932-34年に起きた大飢饉、「ホロドモール」を経験した人たちにインタビューした内容をグラフィックノベル化したもの。 ホロドモールはソ連の進めるコルホーズ(集団農業)政策に反対するウクライナの富農層を叩...
イタリア人の漫画家であるイゴルト氏が自らウクライナに赴き、ウクライナにおいて1932-34年に起きた大飢饉、「ホロドモール」を経験した人たちにインタビューした内容をグラフィックノベル化したもの。 ホロドモールはソ連の進めるコルホーズ(集団農業)政策に反対するウクライナの富農層を叩くためにソ連の独裁者であったスターリンが仕掛けた、作為的な飢饉を言う。このため、ウクライナでは数百万の人々が餓死し、極限状態の中で人肉食も行われたといい、インタビューの中でもそれを想像させる光景や、襲われないように子どもたちに注意を促す大人たちがいたことなども描かれている。
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