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終わりの始まり の商品レビュー

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2023/01/16

「生きている人々は花が散れば新しい葉を見上げて生きていくしかない」 ー訳者あとがき掲載の作者の言葉より 本書で描かれるのは三人の男女の物語。 物語で三人は三人とも「終わり」を迎えることを余儀なくそれており、それは桜が咲き乱れ世間はやがて来る春に浮き足立つ頃であった。 本書を読ん...

「生きている人々は花が散れば新しい葉を見上げて生きていくしかない」 ー訳者あとがき掲載の作者の言葉より 本書で描かれるのは三人の男女の物語。 物語で三人は三人とも「終わり」を迎えることを余儀なくそれており、それは桜が咲き乱れ世間はやがて来る春に浮き足立つ頃であった。 本書を読んでいると、白に近い薄桃色の桜の花びらが陽の光を浴びていっそう真白くキラキラ光る光景と、その桜の下に暗澹としたぼやけた黒い影が脳裏に浮かぶ。 主な登場人物は、簡易郵便局長のヨンム、元出版社勤務で現美容院のオーナーでヨンムの妻であるヨジン、大学を卒業したもののバイトを転々としヨンムの働く簡易郵便局でバイトをしているソジョン。 三人が受け入れざるを得ない「終わり」は、恋愛関連であったり、大事な人との永遠の別離であったりする。 そしてその「終わり」を迎えるまでに経験した様々な傷も、並行して本書では描かれている。 それらの傷は、この終わりを引き起こす原因であったろうし、逆に終わりを予感・直面することで、再度疼き血を流すことになったものでもある。 訳者あとがきでも触れられていたが、彼らが経験する終わりは、苦しみは、普段から私たちがことあるごとに経験している良くあることで、この物語の登場人物たちはいわゆる「普通」の人なのだ。 普通、というと普通ってなんだ?といつも思う私はちょっと自分で言ってて痒くなってしまうので、割とどこにでもいる人、と言い換えさせてもらう。 …念のため言っておくと、何不自由なく生きている人も、常に人生の困難にある人も、両方とも広い目で見れば割とどこにでもいる人なので、そう書かせていただきたい。 この物語にある出来事は、他ならぬ私にもあり得ることだし、私以外の身近な誰それにもよくあることだろう。 だからだろうか、そんなありふれた彼らの物語の、希望を感じる終わり方に、少し元気づけられる。 冒頭に挙げた作者インタビューの言葉と重なるが、傷が出来て何かと別れて、痛みを伴っても、自然に出来るかさぶたと共に新しい何かに向かって生きていくしかないのだ。 ちょっと残酷な話かもしれないけれど、生きていくことを絶望と捉えるか希望と捉えるかは人それぞれで。 この物語は、生きることは苦しい、それを認めそのような生き方を包み込んだうえで、生きることを希望に変えていこうよと優しく背中を押してくれようとしてるんだなと感じた。 切られた傷の上に貼るバンドエイドのような小説、という評にも納得だ。 「終わりの始まり」。 最後まで読んだから、本当にこの物語にはこの題がぴったりだと感じた。

Posted byブクログ

2022/12/20

ヨンムとヨジンとソジョン、3人それぞれの別れと葛藤。ヨジンは自業自得な気もする。 淡々と話が進んでいき、淡々と終わる。静かな物語。読後感は悪くないけれどあまり心には深く残らなかった。

Posted byブクログ

2022/11/29

ひとりじゃないのにひとりぼっちを強く感じる小説だった。 主な主人公は3人。 簡易郵便局長のヨンム、その妻で元エディターで現在は美容室を経営しているヨジン、ヨンムの下でアルバイトをしているソジョン。 ヨンムの母は死に瀕している末期がん患者だ。 ヨジンから離婚を切り出され、母が亡くな...

ひとりじゃないのにひとりぼっちを強く感じる小説だった。 主な主人公は3人。 簡易郵便局長のヨンム、その妻で元エディターで現在は美容室を経営しているヨジン、ヨンムの下でアルバイトをしているソジョン。 ヨンムの母は死に瀕している末期がん患者だ。 ヨジンから離婚を切り出され、母が亡くなるまで待ってほしいと伝える。 ヨンムは何も期待しないひとりぼっちで生きていくことをずっと受け入れていた人だった。 孔雀のようなヨジンが結婚を迫った相手だからどんな風に見える人なんだろうと思った。 少しも笑わないし、いつでも死について考えているようなひと。 だから、ヨジンは彼に惹かれたのかもしれないと思う。 自由に生きなさいと義母はヨジンに言ったけど、ヨジンにヨンムと幸せになってほしいと本当は思っていたのだろうか。 ヨジンは兵役を終えたばかりの若い男と恋愛をしている気持ちになっていて本当に痛々しい人だった。 でもそれも流産したことと、ヨンムの気持ちが少しもわからないことなんかが重なって堕ちた恋だったのかもしれない。 ソジョンは大学を卒業したあとにずっときちんと就職出来ずにアルバイトを続けている。 恋人は中産階級の両親がいて、ソジョンのようにお金に困っていない。 そんな二人が結婚するとか現実的じゃないなと思っていたら案の定。 しかも春にみんな大きな別れを経験して、桜がいくら美しくても心から美しいと言えないし、桜が散ると喪失を思い出すのではないかと悲しい気持ちになった。 それでも、私はこの小説を読めて良かったと心から思えた。 みんな心になにかを抱えていて、喪わないで生きていくなんてそんなことできっこないんだと思えたし、現実味を味わえる素晴らしい読書だった。 この本は何度も繰り返し読むところに置いて大切にしようと決めた。

Posted byブクログ