アイの歌声を聴かせて(03) の商品レビュー

前田めぐむ(著者),吉浦康裕(原作)

2022/11/04

最終巻。

シオンが何故サトミのことを知っていたかが語られ、
シオン奪還作戦開始。

この巻の内容のためにこの物語はあると言える。
話の流れ自体は王道なんだけど、だからどうした。
質の良い王道は、王道故に本当に面白い。

とにかく巻の最初からトウマがカッコいい。
アヤがパパの ID カードを持ち出す行動力も良いし、そのカードのパスワードがアヤの誕生日なのも良いし、それに対してゴッちゃんの「デートしてやれ」って言葉も良い。
こういう本筋以外の親子関係とかがサラっと、でもホンワカと描かれてるのも実に良い。

・・・そんなんだから主任は出世できないんだよ。
あんな小さい筐体で自律的に反応を返してくるなんて深く考えなくてもヤバい代物だと分かる。
その辺りの感性が劣っている時点でエンジニアとしては役立たず。
ホント、こういう無能が上司にいると会社にとっては損失だよ。

明るみになって困るのは星間の方ってのはその通りなんだよね。
単に実験を無断で実施したことだけじゃない。
その証拠を隠滅するために個人のスマホやパソコン、学校の備品である部活のパソコンを差し押さえしたのが非常にマズい。
やってることが個人情報の強奪なのでプライバシーの侵害どころじゃない。
また、学校に内緒で実験をしていたってことは、学校は星間とは直接な関係がないワケで。
（会長が科技庁に話を通しておくと言っているので政府管轄なのかな？）
つまり無関係の施設に侵入して窃盗を働いたことになる。
企業の権限を超えている。
もう、星間としては最悪な状況。
ぶっちゃけ支社長は左遷か降格・・・では身内に甘いと言われるレベル。
懲戒処分されても仕方がないくらいのことをやっている。
（とはいえ劇中ではそこまで大事にはなっていないので、そういう倫理観の世界なのか、星間の企業倫理が相当アレなのかもしれないけど。）

昔、まだ OS 戦争が活発だった頃に Microsoft も違法インストールの疑いがある企業のパソコンを勝手に差し押さえて、業務内容やデュアルブートしてあった Linux も含めて HDD 内容を全消去した、なんて話もある。
流石に眉唾ではあるけど。

最後、三太夫にシオンの顔写真を貼ってるってことは、サンダーの「付き合てくれ」は意外とシオンが言った「柔道を一緒にやろう」ってことだったのかもしれない。