絵画を読む の商品レビュー
〈まえがき〉において著者は、イメージによる世界の解釈、イメージによる世界の記録、イメージによってのみ表現することのできる思考や感情の表象である”絵画”、それを理解するためには絵画を読む作業が必要であり、その方法論の一つとして「イコノロジー(図像解釈学)」というものがあることを説...
〈まえがき〉において著者は、イメージによる世界の解釈、イメージによる世界の記録、イメージによってのみ表現することのできる思考や感情の表象である”絵画”、それを理解するためには絵画を読む作業が必要であり、その方法論の一つとして「イコノロジー(図像解釈学)」というものがあることを説明する。 そして具体的に、カラヴァジョ『果物籠』、ボッティチェリ『春』、フラ・アンジェリコ『受胎告知』、デューラー『メレンコリアI』など12作品を例に取り上げ、著者なりの読み取り方を説明してくれる。 ある程度解釈が確定している作品から、未だ共通の理解に達しておらず様々な解釈が出されているものまであるが、そうした解釈がなされる理由について丁寧に説明がされるのでありがたい。 特にかつて格の高かった宗教画については、基礎的知識がないとふー〜ん状態になってしまうので、大いに蒙を啓かれた。
Posted by
絵画のもつ意味、それを“解釈”するにはどうしたらよいか―。その基礎的方法論のひとつとして挙げられるのが図像解釈学(イコノロジー)である。本書は、カラヴァッジョ『果物篭』、ボッティチェッリ『春』、ブロンズィーノ『愛のアレゴリー』、ブリューゲル『バベルの塔』等、重要な名画12作品を取...
絵画のもつ意味、それを“解釈”するにはどうしたらよいか―。その基礎的方法論のひとつとして挙げられるのが図像解釈学(イコノロジー)である。本書は、カラヴァッジョ『果物篭』、ボッティチェッリ『春』、ブロンズィーノ『愛のアレゴリー』、ブリューゲル『バベルの塔』等、重要な名画12作品を取り上げ、関連作品と比較しつつ、その背後にある思想や意味世界への接近を試みる。イメージの読み解きによって、美術の深みと無限の感受性への扉を開ける、美術史入門書の決定版。 カラヴァッジョ『果物篭』〜快楽のはかなさ〜 ティツィアーノ『聖なる愛と俗なる愛』〜愛の二面性〜 ボッティチェッリ『春』〜愛の弁証法〜 ニコラ・プサン『われアルカディアにもあり』〜死を記憶せよ〜 ミケランジェロ『ドーニ家の聖家族』〜父と母と子〜 フラ・アンジェリコ『受胎告知』〜神と人の出会い〜 レンブラント『ペテロの否認』〜人間の弱さ〜 ブロンズィーノ『愛のアレゴリー』〜愛の虚妄〜 ジョルジョーネ『テンペスタ(嵐)』〜男性原理と女性原理〜 デューラー『メレンコリア1』〜自然哲学と芸術の結合〜 バルドゥング・グリーン『女の三世代』〜老いについて〜 ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』〜文明への警告〜
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ハウザー『芸術と文学の社会史』 ゴンブリッチ『美術の歩み』 ゴンブリッチ『シンボリック・イメージ』 「プラトン主義に特有でおそらく東洋にその例を見ないのは、この転変常なき非現実の感覚界の背後に、二番目の、恒久不変の真理の世界が存在するという確信」 →理想的世界の目に見える現れであると考える哲学的伝統が根強く影響していた →リアリズムの技巧がすばらしいレベルにまで発達した十六世紀が、一方では、さまざまな象徴表現の入り組んだ図像がもっとも発達した時代であった。 静物画→儚さウァニタスの寓意 90 バロックは絵画の歴史の上で、「無限」の空間観念をはじめて創造したと言われている。 ゼノン memento mori ゼノン派 167 …なんらかの思想やアイディアを、目に見えるものを借りて表現することに画家たちの関心が移ったからである。()その筆頭が実はミケランジェロやレオナルドであるが、かれらは芸術を手のしごとではなく、頭脳のしごとだと考えて、思想家が言葉で考えを表すように、イメージで思想を表現しようと望んだ。 新プラトン主義の学者によるギリシア神話やエジプトのヒエログリフ解釈 フランセス・イエイツ『魔術的ルネサンス』
Posted by
わざわざ美術館に行き、名画と呼ばれるものを見ても「とても上手だなぁ」という感想しか出ない自分の無教養ぶりに嫌気がさして手に取った。 題のとおり、絵画の「読み方」についての入門書である。時代の文化、宗教、政治経済的な背景等を鑑み、その絵が伝えんとすることは何だったのかを探る学問を...
わざわざ美術館に行き、名画と呼ばれるものを見ても「とても上手だなぁ」という感想しか出ない自分の無教養ぶりに嫌気がさして手に取った。 題のとおり、絵画の「読み方」についての入門書である。時代の文化、宗教、政治経済的な背景等を鑑み、その絵が伝えんとすることは何だったのかを探る学問を「イコノロジー(図像解釈学)」という。 イコノロジーについての解説は「まえがき」で少し触れられる程度で、あとはボッティチェリ、ミケランジェロ、ティツィアーノなど絵を実際に「読む」ことでイコノロジーの手法を体験するような趣向である。入門者向けで読みやすいが、もう少し、イコノロジーとは何かという部分やイコノロジー自体の発展の解説を厚くしてくれてもよかったと思う。 本書によれば、「西欧の芸術表現には、感覚世界を、理想的世界の目に見える現れであると考える哲学的伝統が根強く影響していた」ので、写実的な絵すらも、目に見える事物のただの描写のために描かれたわけではなかったという。みずみずしくリアルに描かれた果物の静物画も儚さや快楽の寓意になっていたと指摘されれば、確かにという気がする。 このような歴史的な流れがあって、19世紀のレアリスムに至るわけである。見たままを描く写生が新しい美術表現のうねりになることから見ても、やはりそれまでの絵画は寓意や象徴だったのだろう。 知識ゼロでも面白く読めたし、関係書籍も読んでみようかという気になった。イコノロジーは西欧芸術から発した手法だが、日本の絵画でも使えるのか、現に研究されているのか気になった。
Posted by
- 1