室町社会の騒擾と秩序 増補版 の商品レビュー
2004年に刊行されたものの増補文庫版。室町社会の法慣習と都市文化について多様な論点が整理・提示されている。個々の内容は勿論のこと、近世に向けて変容する過程が提示されている点も興味深かった。
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本書元本は博士論文をもとにしたものであり、一般読者が読み通すには骨が折れるが、中世、特に室町時代の具体相を知りたいと思う読者にとっては、とても読み応えがある。 専門書であるので、歴史学にある程度の知見がないとそもそもの論点が十分には理解できないところもあるが、論文として著者の...
本書元本は博士論文をもとにしたものであり、一般読者が読み通すには骨が折れるが、中世、特に室町時代の具体相を知りたいと思う読者にとっては、とても読み応えがある。 専門書であるので、歴史学にある程度の知見がないとそもそもの論点が十分には理解できないところもあるが、論文として著者の問題意識は明確に提示されるので、そういう点では分かりやすい、といっても良いかもしれない。 本書全体の問題関心は、序章に示されている。ひろい意味での〈文化史〉の試みであると。 文化と言っても普通連想する(狭義の)文化にとどまらず、人々の生活を律した法慣習や些細な日常の民間習俗といった側面をも重視しようとする。 以下、興味を惹かれたところ。 第I部 室町社会の法慣習 第一章は「御所巻」について。一般書でも将軍に対する異議申立ての方法として取り上げられているが、史料に基づき実証的に論じられていることに加え、将軍権力と有力守護層とのパワーバランスに関する問題であることに気付かせてくれる。 第二章以下、復讐の法慣習、没落者の屋形等に対する都市民衆の掠奪の慣習、失脚者の流罪刑と殺害慣行、紛争解決の法慣習が論じられる。
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