三島由紀夫が愛した美女たち の商品レビュー
書店で出くわして入手した一冊だが、大変に興味深く読んだ。 あの「三島由紀夫」という人物を、その周辺から掘り下げるというような内容で、なかなかに興味深かった。 三島由紀夫に関しては、忘れてしまう位に以前に色々な作品に触れていたが、比較的最近にも眼に留めた作品に触れている。が、その人...
書店で出くわして入手した一冊だが、大変に興味深く読んだ。 あの「三島由紀夫」という人物を、その周辺から掘り下げるというような内容で、なかなかに興味深かった。 三島由紀夫に関しては、忘れてしまう位に以前に色々な作品に触れていたが、比較的最近にも眼に留めた作品に触れている。が、その人物像を掘り下げるようなことで参考になるようなモノとして、色々な形で発表されたエッセイを纏めた『戦後日記』、同時代を駆け抜けた、やや年少の人気作家であった石原慎太郎との対談等を纏めた『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』という御本人が関与したモノの他、三島由紀夫が寧ろ「平岡公威」として女性と交際した経過等を綴った、或る種の研究書でもある『直面(ヒタメン)三島由紀夫若き日の恋』というモノも読んでいる。本書はそういうような、これまでに知った内容を集めたモノであり、同時に「更に新しい」というようにも思った。 三島由紀夫は「人気作家」として小説や戯曲を発表し続けたが、手掛けた戯曲の舞台公演に関与し続けた他、自身で幾つもの映画に出演―“作家”ではなく“俳優”と認識していた一般の人達さえ見受けられたらしい…―し、映画の制作に携わるという経過も在ったようだ。多才な人で、多彩な活躍を見せており、交際範囲もそれなりに広い。 そういう中で、交流が深かったとされる女優や歌手等を挙げ、その物語を紹介するのが本書の前半だ。後半に関しては、小説作品の作中人物の描写等にも影響が見受けられると見受けられる、交流が在った女性達の事が紹介されている。 三島由紀夫の人物像に迫ろうとする文章、その様々な挿話を伝える内容に触れる都度、「生き急いだ、過ぎる程に多才で在った、“作家”を演じようとしていた人物」というような感想を抱く。忘れる程に以前に色々な作品に触れた頃には、こういう程度にも纏められなかったのだが。 本書では「共演俳優」として交流が在った若尾文子、自作の戯曲を上演する劇団のホープとして推していた村松英子、親しい友人で歌手だった丸山(美輪)明宏や越路吹雪という人達に関する事柄が前半に挙がっている。各篇が、各々に魅力的で「三島由紀夫と〇〇」という程度に、各々で一冊の一寸した分量の本という程度に話しが膨らみそうで、またそれを原案とした映画やテレビドラマさえ出来てしまいそうでもある。 何か「あの“三島由紀夫”の様々な側面」ということで、「一冊は一冊」ながらも「酷く膨大なボリューム」という程度に感じたのが本書だった。 “三島由紀夫”が在った時代とは少々違う意味での困難や混迷のようなモノが見受けられるような気がする現代であるからこそ、こういうような本は読み応えが増すような気がする。広く御薦めしたい。
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