経済政策で人は死ぬか? の商品レビュー
「ボディ・エコノミック」、すなわち「ある経済政策の下に組織された集団。その政策に影響を受ける集合体としての国民(ないし人々)」を念頭に置いて、この本は書かれている。 その代表例が、2008年のリーマンショックを発端とする世界金融危機で、国家の財政破綻の危機を迎えたアイスランドだ...
「ボディ・エコノミック」、すなわち「ある経済政策の下に組織された集団。その政策に影響を受ける集合体としての国民(ないし人々)」を念頭に置いて、この本は書かれている。 その代表例が、2008年のリーマンショックを発端とする世界金融危機で、国家の財政破綻の危機を迎えたアイスランドだろう。 IMFからは融資(21億ドル)と引替えに、緊縮財政策を条件に出された。これで苦しんだのは、1997年頃のアジア通貨危機で救済を受けたタイ、インドネシア、韓国である。これらの国々では貧困率が急上昇し、医療費もあがったため、死亡率が急増した。さらに、経済回復にいたっては、IMFの条件をのまなかったマレーシアよりも遅かったのだ。逆にマレーシア政府がとった政策は、投機的資本の抑制、社会保護政策であり、積極財政策を講じたのだ。 IMFはソ連崩壊後の連邦諸国に対する策でも、特にロシアに対しては急激な民営化を推進するショック療法を講じたことで、同国の死亡率や自殺率を上げた。死亡率に関しては、ソ連崩壊前の1970年代の数値にまで戻っていない。 このような歴史的背景がある中、アイスランドはIMFからの条件、さらにイギリス・オランダ政府から要求されていた「アイスセーブ(ランドバンキ銀行による高金利ネット預金)返済」の意思決定を、国民投票で決定した。 国民はどちらも拒否した。そこで政府はGDPの58%を財政支出し、福祉予算は削らずに歳出削減し、歳入は富裕層への増税を課すという、ユニークな政策を講じた。 結果、2011年には経済成長率4%を達成し、いち早く経済停滞から抜け出すことに成功したのだ。
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不況時には失業や健康への対策が第一にこなければいけない。 近代の数々の不況への対策でとった政策がどんな結果をもたらしたかがまとめられている。 健康と良い人間関係はやっぱり大事
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縦軸原点を恣意的に設定するのはやめてほしい。公衆衛生のくせに年齢階級別死亡率を出さないというのは故意だろう。
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不況下での経済政策――緊縮財政か公共支出増か、で人々の健康状態や自殺率に大きな差が出る。 同じ苦境で違う政策をとった州や国でどういう違いが出たのかを見ることで検証する。ニューディール政策、アジア通貨危機、リーマンショック後の金融危機などの際、政策の差はどういう結果をもたらしたの...
不況下での経済政策――緊縮財政か公共支出増か、で人々の健康状態や自殺率に大きな差が出る。 同じ苦境で違う政策をとった州や国でどういう違いが出たのかを見ることで検証する。ニューディール政策、アジア通貨危機、リーマンショック後の金融危機などの際、政策の差はどういう結果をもたらしたのか。統計データも用いて論じている。 結論としては、不況下で緊縮財政政策を採ると人々の健康状態や自殺率を悪化させる。 公衆衛生学・医学の研究者である筆者たちからすると、IMF、財務省が人々を死に追いやっていると。「借金」というと問題であるかのように思いがちだが、冷静に判断する必要がありそうだ。
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