危機の地政学 の商品レビュー
米中対立、気候変動など様々な論点から世界のリスクを整理して俯瞰できる。 アメリが最大のリスクであることを再認識した。今年の大統領の前に読んでおくとよいかもしれない。
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安定して知的刺激を与えてくれる良書。斬新さは無いがポイントを押さえており、社会課題の復習にも有効。次の10年では、米中対立、気候変動、人間の生活を変える技術が問題になるだろう。より、深刻化していくという警鐘だ。 アメリカの分断の話。中国に対抗する政策でも、アメリカの左派と右派の...
安定して知的刺激を与えてくれる良書。斬新さは無いがポイントを押さえており、社会課題の復習にも有効。次の10年では、米中対立、気候変動、人間の生活を変える技術が問題になるだろう。より、深刻化していくという警鐘だ。 アメリカの分断の話。中国に対抗する政策でも、アメリカの左派と右派の意見が一致しなくなっている。もはや、富裕国では大卒資格がなく製造業で働く人は、中産階級の生活に手が届かない。不平等は拡大する一方だ。どの国もグローバリゼーションがもたらした歴史的恩恵から排除された人々があまりに多く、結果的に世界各地で一般市民が暴動を起こし、それにつけこんでポピュリズム派の政治家たちが台頭している。 アメリカでは1979年から2016年にかけて、所得分布の上位1%の平均所得が226%上昇する一方で労働者階級と中産階級の所得は横ばい。上位10%がアメリカの富の70%以上、上位1%の資産総額は下位50%の資産総額が上回っている。 製造業やサービス業の仕事が低所得国へアウトソースされたため賃金が低下した。労働組合による団体交渉が機能していない。教育費が高騰し、高等教育に手が届かなくなっている。にもかかわらず高収入には大卒のステータスが必要。生まれた時から、ツンでいる。世界中、そんな感じだ。新たな奴隷の構図。構造的利権は、結局奴隷を生み、その支配者が構図を壊さない。 更に酷い話。2010年の最高裁の判決で企業や外部団体が選挙に無制限に資金を注ぎ込めるようになり、以来10年間で選挙に流れる金額は加速度的に増えている。2020年の大統領選では2016年の政治献金から2倍以上に膨れ上がった。その資金の出所の多くは富裕な個人や企業で、彼らはその見返りを政治家たちに期待。つまり国全体に犠牲を強いてでも、自分たちの利益を優先して欲しいのだ。 金持ちが政策を操作し、自らの子孫を再生産。高等教育を受けられない下々のポジションを固定して、支配者階級で居続ける。 対して中国。アメリカは一隻に80機の戦闘機を搭載できる原子力空母を11隻保有している。今もなお世界各地に通常戦力を投じることができる唯一の国。一方、中国は空母を2隻保有するだけでアメリカに比べれば、はるかに小さい。またアメリカは世界40カ国に軍事基地を構えているが中国のほうはわずか3カ国。人民解放軍の活動範囲は、ほぼ東アジアと東南アジアに限られている。アメリカやロシアに対抗できるほど大規模な核兵器の開発はされていない。 世界金融危機の震源地はアメリカ。アメリカが融資をきちんと規制しなかったために、世界各国の金融機関を巻き込んだ連鎖反応が起こり世界経済に大損害を与えた。新型コロナウィルスでは中国が震源地。 二つの震源地。それらが持つ内部事情、課題。格差問題は日本でも危うい。社会主義は正義か。それは分からぬが、強欲は間違いなく正義ではない。
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日々断続的に情報収集していたこれから起こる、あるいは既に起きている危機について纏めた本。 米中の対立は不可避だが、協調の大切さも説いている。
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ー 第1章で、2つの衝突の道について詳しく説明した。一つは、アメリカ国内の共和党支持勢力と民主党支持勢力との争いで、世界唯一の超大国であるアメリカの政治生命と民主主義の高潔な精神にひどいダメージを与えている。もう一つは、既に大国として君臨しているアメリカと、新たに台頭してきた中国...
ー 第1章で、2つの衝突の道について詳しく説明した。一つは、アメリカ国内の共和党支持勢力と民主党支持勢力との争いで、世界唯一の超大国であるアメリカの政治生命と民主主義の高潔な精神にひどいダメージを与えている。もう一つは、既に大国として君臨しているアメリカと、新たに台頭してきた中国との対立だ。この2つのリスクによって、他の大国の政府や国際機関が、我々を待ち受ける真の課題に取り組まなくなると、それがさらに大きなリスクになってしまう。 我々はみな衝突の道を進んでいる。再び公衆衛生危機が世界を襲うことは必至で、気候変動もあり、破壊的な新技術が猛威を振るって、我々の生活や社会を不安にするかもしれない。これらは世界共通の未来へのリスクなのだ。自国内で、あるいは紛争地域で、あらゆる時間、意見、エネルギー、財源が争いのために無駄に費やされている。このような地球規模の脅威が、私たちの手に負えないほど大きくなったとき、私たちはともに苦しむことになるのだ。 アメリカの毒された政治が民主主義を破壊するとは思わない。 実際にアメリカの政治制度が汚されるかもしれない脅威はあるが、アメリカはこれまでにも大きな衝撃を吸収してきている。 有害なパートナーシップがアメリカ社会にもたらすダメージを過小評価しているわけではないが、民主主義が本当に脅かされたとき、アメリカは民主主義を守ろうとし、議会も文化的偏見より法律を重視すると、私は今も信じている。同様に、米中が台湾などをめぐって戦争を起こすとは思わない。そのような壊滅的衝突を起こせば、両国が失うものはあまりにも大きい。また、アメリカ政府も中国政府も、他の国々の政府が米中のいずれかに追従し、ともに不幸への道を歩むはずだなどと期待すべきではない。 しかし….…私が本書を執筆したのは、アメリカ国内の共和党と民主党や、米中の首脳が、互いの紛争の準備にかまけて、真の「嵐」に備える作業を怠るのではないかと懸念しているからだ。 将来の危機に備えるには協力が必要だ。 何が最重要なのかを勘違いしてしまうと、協力できなくなってしまう。 ー 米国内の動向や米中対立とそれに関連する動向、加えてロシアの動向が重なり、危機的な時代が議論されているが、彼の主張は、それも大きな課題だが「真の課題はそこじゃねぇ!」と言うもの。 まぁ、誰でも知っていることだけれど、感染爆発、気候変動、テクノロジーの脅威、これらの課題を世界規模で一致団結して取り組まないと世界が取り返しのつかない状況に進んでしまうのに、米国内の分断とか米中のデカップリングとかロシアのウクライナの侵略とかでヒヤヒヤしていてはいけませんよね? と言う主張。 危機はチャンスと言うけれども、取り返しがつかなくなる手前で危機に気が付き、大国が対処を行えるのか、それこそが一番重要で課題、今回失敗したら次は来ないよ、と言う警告。 失敗したらジ・エンド。これが最後のチャンスDeath。みたいな事を分かりやすく解説している作品。 まぁ〜、考える頭があればそれは分かる話だし、大国のリーダーは考える頭があるからこそリーダーをやっているはずなのに、それが実現しないのはいったいぜんたい何ででしたっけ?何で本質的に正しいであろうことが、世界のリーダーが実現できないんでしたっけ?それが問題。それが出来ない構造が問題。リーダーはバカじゃない。じゃぁ、なんで正しい事が実現されないのか? それこそが本質的に問う事だと思う。 民主主義、資本主義の限界とか、独裁制、共産主義の限界とか、まぁ、そうなんだけどさ、そうは言ってもやるべき事って決まってるじゃん?イデオロギーはさておき、目の前の危機に対して、何で正しい事が出来ないんでしたっけね?って話よ。
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筆者の深刻なリスク認識が伝わってきて、人類はもう滅びる直前なのではないかと思わせられる。 米ソ冷戦と違って、米中は互いに大きく依存しているため、どちらか一方だけが生き残るという解決策はあり得ない。そのため、共存を前提に共通の深刻課題に対しては、少なくとも協調する姿勢が大事だとい...
筆者の深刻なリスク認識が伝わってきて、人類はもう滅びる直前なのではないかと思わせられる。 米ソ冷戦と違って、米中は互いに大きく依存しているため、どちらか一方だけが生き残るという解決策はあり得ない。そのため、共存を前提に共通の深刻課題に対しては、少なくとも協調する姿勢が大事だという。 また、米国は世界各国に軍事拠点を持ち圧倒的軍事力を誇っているが、今後の戦争の勝敗を決するのは、サイバー攻撃や経済制裁となるため、軍事的な優位性は下がっているという。このサイバー兵器を巡る脅威から、第三次世界大戦が起きる可能性もあり、今は第二次世界大戦前夜の1930年代よりも危険な状態とのこと。 歴史を振り返っても、民主主義国家は最善の政治体制だと思うが、「待ったなし」の課題・リスクへの対応や新たな覇権争いに勝ち抜くには、民主主義は不利なのではないかとも思った。AIをはじめとする破壊的テクノロジーを発展させるには、人権や倫理に配慮しない方が早いだろうし、経済制裁によって生活用品の価格高騰がおきても、民意を気にしない権威主義の方が耐性がありそうだ。
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